【楽器の王様】パイプオルガンの構造と魅力
楽器の王様と呼ばれるパイプオルガン。
名前は知っている人も多いと思いますが、その歴史や構造はご存じでしょうか?
今回は、パイプオルガンの魅力に迫ってみたいと思います。
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パイプオルガンの種類と規模
パイプオルガンで、誰もが耳にしたことがある曲といえば、J.S.バッハの「トッカータとフーガ ニ短調」。
一度聴いたら忘れることができないインパクトのある名曲です。
https://www.youtube.com/watch?v=Zd_oIFy1mxM
ご紹介した故カール・リヒターの演奏動画の中では、教会内部に設置されたパイプオルガンの壮麗な姿が映し出されています。
バッハが活躍したバロックの時代は、教会建築と一体不可分だったオルガンも、ゴシック調の凝ったデザインでした。
パイプオルガンは、楽器本体とそれが置かれる場所とが融合しています。
教会のパイプオルガンは、ただの楽器ではなく、神への捧げものとしての音楽を紡ぐ神聖な楽器であり、莫大(ばくだい)な費用をかけて建設されます。
その巨大さ、巨額の建設費などからしても「楽器の王様」と呼ばれるにふさわしいですね。
パイプオルガンは、個々の楽器によって規模が異なり、小さなものから大きなものまで、大きさもデザインもさまざまです。
次にご紹介する動画のオルガンは、ご覧になるとわかりますが、鍵盤が縦に5段も並んでいます。
パイプオルガンの構造
たくさんの鍵盤があるパイプオルガンですが、パイプに空気を送り込むことで音が出るため、発音構造は「管楽器」に属しています。
各鍵盤に割当てられたパイプがあり、1本のパイプは1つの音しか出ないので、56鍵の音を出すためには、56本のパイプが必要です。
3段鍵盤があるオルガンで、それぞれの音に10種類の音が割り当てられていると、それだけで560×3×10となり、16800本ものパイプが並ぶことになります。
パイプの数が多ければ多いほど、出てくる音色も増えていきます。
1段の鍵盤だけでたくさんの音色が出せるばかりでなく、ぞれぞれを重ねて音を組み合わせ、新しい音を創ることもできるのです。
パイプには、リコーダー(笛)の原理で音が出る「フルー管」、クラリネットやサックスと同じ原理で音が鳴る「リード管」、金管楽器と似た原理の「ダイヤホーン」と、大きく分けて3種類あります。
鍵盤の横に並んでいる小さなドアノブのような形をした「ストップ」というボタンを引っ張ることでスイッチが入り、音が出るようになります。
これが「ストップ」です。
ストップの形状は個々のオルガンによって異なります(エレクトーンのようなタブレット式のものもあります)。
「フルート」という名前がついたストップを引くと、フルートのようなかわいらしい音が出ます。
フルートの音色が出る状態で「トランペット」という名前のストップを引くと、フルートとトランペット、2種類の音が重なって、新しい音が生み出されます。
こうして、組み合わせ次第で幾通りもの音を作ることができるため、演奏者のセンスで個性豊かな音色づくりが可能となります。
同じオルガンなのに、まったく別の楽器のような音がした、ということがよくあります。
一流のオルガニスト(オルガン奏者)は、音づくりに関しても一流なのです。
パイプオルガンの歴史
オルガンが歴史に登場したのは古く、紀元前数世紀には原型の楽器がありました。
日本の雅楽で使われる笙(しょう)も、そのひとつだとされます。
紀元前の時代、アレキサンドリアで「水オルガン」という楽器が登場します。
これは水力でパイプに空気を送る構造でした。
紀元後になると、ふいごでパイプに空気を送る形へと進化していきます。
中世になり、始めは宗教とは無関係だったオルガンが、教会にも設置されるようになります。
ルネサンスの時代に入ると、現在のオルガンの形に近い構造が定着してきます。
そしてパイプオルガンの全盛期、バロック時代がやってきて、とくに北ドイツで巨大なオルガンの建造ラッシュが起こります。
伝説の巨匠「アルプ・シュニットガー」や、「ジルバーマン」によるパイプオルガンはこの時代に造られました。
音楽の父バッハも、北ドイツのオルガンの音色に強いインスピレーションを受け、キリスト教音楽と結びついたたくさんの名曲を残したのです。
ロマン派時代になると、さらに巨大で音色の多彩なオルガンが造られるようになります。
「ロマンティック・オルガン」とか、「シンフォニック・オルガン」と呼ばれるこれらのオルガンは、リストやフランクを始めとするロマン派作曲家のオルガン曲を演奏するのに欠かせない音色を持っています。
次にご紹介するリストの「BACH」という曲は、バッハに捧げられたオルガン曲で、BACHが表わす音(シのフラット、ラ、ド、シ)から幕を開ける壮大な曲です。
パイプオルガンの奏法
パイプオルガンの音は、鍵盤を押しているかぎり、いつまでもなり続けるところに大きな特徴があります。
好きなだけ、いくらでも音を延ばすことができるのです。
多くのパイプオルガンでは、手鍵盤が2段以上あります。
それぞれの鍵盤に異なる音色を設定し、腕を上下に移動させながら、縦横無尽に演奏します。
片手だけを使い、1段目の鍵盤に小指を置いたまま、2段目の鍵盤を親指で弾くなどという離れ業もあります。
1曲の中で、音色を何度も変えることができるので、ピアニッシモからフォルテッシモまで、オーケストラのようなスケールで演奏できます。
1段目の手鍵盤でフルート、2段目の手鍵盤でオーボエ、3段目の手鍵盤でコルネット、足鍵盤でファゴット……というように、各鍵盤に異なる音色を割り当てたり、それらすべてを一緒に鳴らして音をぶ厚くできます。
ちなみに「プリンシパル」とか「オクターブ」といった、パイプオルガン特有の音色もあります。
パイプオルガンには「足鍵盤」というものがあります。
その名のとおり、足で鍵盤を弾くのです。
ちなみに足鍵盤と区別するため、手で弾く鍵盤を「手鍵盤」と呼びます。
両足を使ってメロディックなパッセージを弾くことが求められます。
オルガンを始める時の最大の難関が、この「足鍵盤」で、足で自由に弾ける感覚をつかめるようになるまで、ある程度の時間を要します。
足鍵盤の役割は、低音のベースを担当することが主ですが、メロディアスなフレーズを弾くこともあるので、右手、左手、右足、左足が、それぞれ別個に、自由に動かせるようになることが、オルガン奏者に求められる能力です。
パイプオルガンをご紹介する上で絶対に外せない、永遠の名曲、バッハの「小フーガ ト短調」をお聴きください。
この曲は4つの旋律が巧みに絡まり合う難曲で、オルガニストにとって常に課題となっています。
オランダ出身の巨匠トン・コープマンの、天真爛漫(てんしんらんまん)かつ情熱的な演奏が素晴らしいです。
パイプオルガンを聴いてみよう!
生のパイプオルガンを聴くなら、教会のオルガンを強くおすすめします。
石造りで天井の高い建物と融合したパイプオルガンならではの、荘厳な響きを体験できます。
まさに神が降臨するのではないかと思えるほどの、敬虔な気持ちになってしまうかもしれません。
教会によっては、一般公開のコンサートを開催しているところもありますので、ぜひ探してみてください。
コンサートホールにオルガンが設置されているところもあります。
各ホールでそれぞれ音色が異なるので、聴き比べるのも楽しいですね!
パイプオルガン教室は、ネットで検索してみるとあちこちにありますので、興味を持たれた方はぜひ体験レッスンを受けてみてください。
それでは最後に著者(高木リィラ)のオルガン演奏をお聴きください。
私がYouTubeにアップしている演奏動画の中でダントツに再生回数が多い人気曲です。
バッハのオルガン曲「目覚めよ、と呼ぶ声が聴こえ」
ライタープロフィール
音楽教室講師
高木リィラ
東京都出身。
幼少より音楽に親しみ、打楽器、マリンバ、ヴィブラフォン、パイプオルガン、ピアノ、ヴォイスなどを表現媒体として、これまでに約80曲のオリジナル作品を創作・発表する。
トルコ、東南アジア、パラオ、沖縄、小笠原諸島などへの旅体験を経て創られた多様な作品群は、独自の世界観が息づいた「オンリー・ワン」の音楽であるとの高い評価を得ている。
これまでにオリジナル・アルバム、「メドゥーサ」「アルテミス」「木花佐久夜姫」「ニイルピトゥ」「マンドラゴラ」「プラウ・シパダン」「ボニン・ブルー(ハイレゾ音源)」のほか、J.S.バッハのオルガン曲集「たまふりオルガン」をリリース。
「アルテミス」収録曲(太霊道奉讃歌)では、一人で100トラックのコーラスを重ねるなど、大胆なプローチも話題となった。
また、写真家でもある夫・高木一行[たかきかずゆき]とのコラボレーションによるスライドショー作品も多数。
楽器演奏の基盤となる身体づくり、正しい姿勢を養うためのメソッド「ヒーリング・アーツ」を研究しているグループ、<ヒーリング・ネットワーク>で活動を展開中。
東京芸術大学音楽学部打楽器科卒業。
広島で「リィラ音楽教室」を主宰する。
打楽器・マリンバを有賀誠門(東京芸術大学名誉教授)、岡田友之(札幌大谷大学芸術学部客員教授、洗足学園音楽大学名誉教授)、中谷孝哉(武蔵野音楽大学教授)、中谷幸子、各氏に師事。
リィラ音楽教室
http://megami13.wixsite.com/leela
打楽器を始め、さまざまな楽器のレッスンを行なっています。
瞑想やヒーリング・サウンドのクラスもあります。
リィラの音楽時間
http://leelatakaki.hatenablog.com
高木リィラの音楽ブログです。
リィラ・ミュージック(高木リィラ作品サイト)
ヒーリング・ネットワーク。
楽器演奏の基盤となる身体づくり、正しい姿勢を養うための「ヒーリング・アーツ」を研究しているグループです。
高木リィラ 奉納作品ご紹介サイト
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YouTubeやSoundCloudでオリジナル作品をお聴きいただけます。
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