のどが弱い人のためのボイトレ。知っておきたい2つの咽(のど)と喉(のど)
このコラムをご覧になっている方で、きっと「自分はのどが弱い」と思っている方は多いのではないでしょうか。
そして、歌う上で何かしらトラブルを抱えているのではないでしょうか?
かくいう私も以前はまさにのどが弱くて、ライブやカラオケの翌日には必ずのどがとても痛くなり、声はガラガラにしゃがれていました。
その私が、今や何時間歌っても平気なタフなのどになりました。
私がどんな習慣を改め、どんなメソッドを取り入れて現在にいたるのか、皆さんにご紹介します。
のどを知ることから始めましょう
私のボイストレーニングの受講生や、知人のシンガー、カラオケ好きな友人で「自分はのどが弱い」という人はたくさんいます。しかし私からすると、のどが弱いと嘆くわりには、のどのことを知らない人が多いように思えます。
ボーカリストにとって、切っても切れない関係の「のど」。
その「のど」という器官を知ることから始めましょう!
さて、もしのどが痛くなり我慢できなくなったとき、あなたはどんな病院へ行きますか?
私は幼い頃から風邪を引きやすく、そして風邪を引くと必ずのどが痛くなっていました。
痛みが強くて耐えられないときや、風邪がなかなか治らないときは、耳鼻科へ足を運びました。
もしあなたが耳鼻科の診察券をお持ちでしたら、お手元に出してきてよーくご覧ください。
お持ちでない方は、インターネットの検索エンジンで「耳鼻科」と検索してみてください。
そこには、耳鼻科ではなく耳鼻咽喉科と書かれていませんか?
じ・び・いん・こう・か。
訓読みにすると、みみ・はな・のど・のど・か。
そう、咽(のど)と喉(のど)、人間にはのどが二つあるのです。
二つの「のど」の場所
鼻、口、咽と喉はつながっているので、重なる部分がたくさんありますが、だいたいの咽と喉の場所をご説明します。
喉は、医学で喉頭(こうとう)と呼ばれ、声の元となる音波を作る器官「声帯(せいたい)」や、声帯の周りにある筋肉や軟骨などのある辺りを指します。
ちなみに、首のほぼ中央にあり、ボコッと出っ張っている「のど仏」は、声帯を前と側面で取り囲んでいる「甲状軟骨(こうじょうなんこつ)」の突起なので、のど仏から首とあごの付け根くらいまでの辺りが喉頭です。
咽は、医学では咽頭(いんとう)と呼ばれます。
鼻の奥から気管の入口である声帯までの空気の通り道(気道)と、食べ物の通り道(食道)の入口までの総称で、およそ12センチもの長さがあり、上・中・下咽頭の3つに分けられます。
中咽頭は「口蓋垂(こうがいすい)」いわゆるのどちんこや、扁桃腺(へんとうせん)がある辺りで、口をあーんと大きく開けたときに、奥に見えるところですね。
上咽頭は口腔より上の鼻腔に続く部分で、下咽頭は口腔より下の喉や食道につながる部分です。
ちなみに私は以前、声帯=口蓋垂だと思い込んでいました。
お恥ずかしいことに、のどちんこが震えて声が出ると思っていたのです。
二つの「のど」の役割
咽(のど)は、空気中のウイルスやバイキンなどの外敵が体内に侵入するのを防御する役割を担っています。
咽にあるたくさんの扁桃は、菌の活動を抑え込む免疫力を備えているからです。
喉(のど)は前述の通り、声の元を作るところです。
簡単にご説明すると、声帯は左右一対になっていて、前側は1点、後ろ側は2点で、ある軟骨と連結しているのでV字状です。
空気を吸ったり吐いたりするときは左右の声帯が遠ざかります(=声帯の間の隙間は開きます)。
声を出すときは近付きます(=声帯の間の隙間は閉じます)。
しかし、もともと喉は声を作るための器官ではない、ということは覚えておいた方が良いでしょう。
喉(のど)は気管の入口です。
食べ物が気管の下につながっている肺に入っては大変。
食べ物が肺に入っていかないように、食べ物を飲み込むとき体は二つの壁でガードします。
一つ目の壁は、舌の付け根にある軟骨の口頭蓋(こうとうがい)です。
食べ物を飲み込むとき、舌は上に上がり、それと連動して口頭蓋は喉頭に蓋をするように倒れます。
そして、二つ目のガードが声帯なのです。
食べ物を飲み込むとき、左右の声帯が閉じ、気管の入口が塞がれるのです。
さらに声帯にはもう一つ、血液の逆流を防ぐ心臓の弁のように、声帯は空気の逆流を防ぐための弁としての役割があります。
赤ちゃんを出産するとき、便秘で苦しみトイレでふんばっているとき、重い物を持ち上げるとき、この気道の弁は大活躍しています。
試しに「ふんっ!」と踏ん張ってみて下さい。
いかがですか?
息が止まっていませんか?
それと、声帯が堅く閉じられているのをなんとなく感じませんか?
声帯を強く閉じると、空気の流れを遮断します。そうする事で、わたしたちは体内の気圧の調整をしているのです。
変わるアプローチ
私は、「のどが痛い」と訴える人には、「どの辺がどのように痛いですか?」とたずねます。
のど仏の辺りに手を当てて「すり切れるように痛い」と答えた人は「喉」のトラブルを、一方「歌うと口の奥(口蓋垂の後ろの辺り)がすぐカラカラに渇いてしまうんです」という人は「咽」の不調を抱えていると、だいたいの察しがつきます。
一口に「のどが痛い」といっても、「どの辺がどういう不調なのか?」により、対処法も変わってくるわけです。
二つののどを守る救世主
咽と喉、その両方を守ってくれる器官があります。それが、口の中で一番大きな器官「舌」です。
のどにとっての大敵は、乾燥とバイキンやウイルスです。
調子を崩したとき、のどは炎症を起こし、腫れたり痛みを感じます。
舌はそれらの大敵からのどを守ってくれる役割も担っています。
しかし、舌が本来あるべき場所に位置していないと、その役割は発揮されにくいのです。
さて、舌のあるべき場所とはどこでしょうか?
最後に
今まで漠然と使っていた「のど」という言葉。
なんとなく、正体を捉えられそうな気がしませんか?
発声は、声を生成する器官の「喉」なくして成し得ません。
その喉が、もともとどういう役割を担っていて、どこにどのように存在するのかを知ると、より楽に発声するためのヒントを導きやすくなると思ったので、今回のコラムを執筆しました。
さて、次回のコラムは、のどを守ってくれる大切な舌の話をします。
ライタープロフィール
ボイストレーナー
相馬りえ
シンガーソングライター/ボイストレーナー。
ドラマーの娘と夫の3人で結成した家族バンド「かねあいよよか」でギターボーカルを担当。
メンバー全員が作詞作曲、ボーカルを務める。
自宅1階には、レコーディングやバンドリハーサルに対応した15畳のプライベートスタジオを構える。
職業はボイストレーナー他に、新聞や広報紙などの取材記者と、観光情報Webサイトのライター。
食生活アドバイザーの資格を有する、7歳の娘と4歳の息子の母。
■体が目覚めるボイストレーニング Webサイト
■かねあいよよか Webサイト
ウェブサイト:http://kaneai.jimdo.com