アルトサックスのマウスピースの選び方。ジャズ・ポップス編
ここでは、ジャズ・ポップス系に特化した、メイヤータイプのアルトサックス用マウスピースをご紹介したいと思います。
クラシック・吹奏楽系は以下で以前紹介しております。
もくじ
ジャズ・ポップス系オススメのマウスピース
各社から本当にさまざまなタイプのマウスピースがリリースされていますが、世界中のプロもアマが愛してやまないマウスピースがメイヤーです。
しかし、メイヤーが良かったのはニューヨークメイヤーと言われる、1950〜70年頃に製造されたもの。
世界中のアルトサックスプレイヤーの憧れのマウスピースと言っても過言ではないでしょう。
そのニューヨーク・メイヤーの使い手として名高いのがキャノンボール・アダレイです。
一度は耳にしたことがあるかもしれませんね。
しかし、このニューヨークメイヤーと、現在店頭で販売されている現行品メイヤーは、ブランドは同じですが中身は別物。
材質も違うし、品質もバラツキが大きく、オススメできません!
しかも、ニューヨークメイヤーは今はもうビンテージ化してしまっていて、10万を超える値段がついているうえに、そもそも古いですから、素材の経年劣化や、使用による摩耗などもあって、程度の良いものを見つけるのは至難です。
そこで、各メーカーや工房が、現在の技術を駆使し、ニューヨークメイヤーの復刻版(あるいはニューヨークメイヤーを意識した音作り)と言えるマウスピースをリリースしており、プレイヤーからの評価も上々です。
今回はその中から3本をご紹介したいと思います。
RICO(リコ)|D6M
2014年にリリースされたマウスピース。
このクオリティでこのプライスはすばらしい!
完全機械化だからこそ達成できたプライスだと思います。
まさにジャズ系の最初のマウスピースとしては、最適な1本と言えるでしょう。
ちなみにこんな音色。
いかがですか?
クラシック・吹奏楽系の音とはえらい違いですね!
モデルはD5M、D6M、D7Mとありますが、これはマウスピース先端とリード先端の開き度合い(オープニング)を示しています。
数字が大きいほど広くなり、息がよく入り、コントロールが難しくなる一方、タンギングなどでつけられるニュアンスの幅が広くなります。
オープニングが広いと、リードは薄めになる傾向があります。
吹奏楽からの乗り変えの場合は狭めのオープニングであるD5Mの方が違和感が少ないですが、あえて開きの広いD6Mを選んでみてはいかがでしょうか?
ジャズっぽいニュアンスを覚えるのに最適だと思いますよ!
Wood Stone(ウッドストーン)|スーパーカスタム トラディショナル ジャズモデル
Wood Stone/マウスピース/アルトサックス用/Super Custom Traditional Jazz Model – ISHIMORI ONLINE
こちらもビンテージのメイヤーをイメージして作られたマウスピースですが、材質からこだわり抜いたハンドメイドです。
それゆえ、お値段もそれなりにしてしまいますが、ビンテージマウスピースを、試奏のできないオークションで落とすリスクに比べれば断然おトク!
チェンバーの形状やオープニングにより数種類のラインナップがありますので、試奏してみてください。
ちなみに筆者は現在、同じウッドストーンですが、スタジオデラックスというモデルを使用しています。
Wood Stone/マウスピース/アルトサックス用/Super Custom STUDIO DELUXE – ISHIMORI ONLINE
これは数年前、別のマウスピースを目当てに石森楽器さんへ試奏に出かけたのですが、意中に全然なかったこのマウスピースが気に入ってしまい買ってしまいました。
また「カスタムMSチェンバー オープニング5」というのも手元にありますが、こちらもクオリティ高いです。
奥津サックスマウスピース製作|ヴィンセント・へリング・カスタム・モデル
ヴィンセント・ヘリング・カスタム・モデル|奥津サックスマウスピース製作
これは筆者が今すっごく気になっているマウスピースです。
実は試奏したことはまだありません。
でも、絶賛の声がちらほら聞こえてきており、興味津々です。
こちらもハンドメイド。
筆者も大好きなヴィンセント・へリング氏をして「これ以上のものは見つからない。」と言わしめたのですから気にならずにはいられません。(ちなみにへリング氏はニューヨークメイヤーを愛用していました)
値段が少し高いので、安易には買えないのですが、ぜひ一度試してみたいと思っています。
ここでは紹介しきれませんでしたが、ゴッツ、アイゼンなども質の高いマウスピースをリリースしているので機会があれば一度試奏してみてください。
リフェイスという選択
最後に、最近よく耳にするようになった「リフェイス」について。
本文でマウスピースの個体差、バラツキについて触れていますが、このバラツキを職人さんに適正な状態にしてもらうというのが「リフェイス」です。
参考:マウスピース【Sepia Mouthpiece】のリフェイス、サックス販売のGottsu Reface
参考:マウスピース・リフェイス・ラボ M-TEC-JAPAN
ビンテージ物はもちろん、新品でも吹奏感はガラッと変わります。
リフェイス前のマウスピースと、リフェイス後のマウスピースを吹き比べてみたことがありますが、リフェイス後のクオリティは圧倒的でした。
いわゆる「ハズレ」のマウスピースでも、リフェイスすることにより「アタリ」にできるかもしれません。
というより、リフェイスしてはじめてマウスピース本来のサウンドがするのかもしれませんね。
最後に
優れたマウスピースで演奏することはもちろん大切なことです。
しかし、評価の高いマウスピースを使ったからと言って、それだけではすばらしい音色が出るわけではありません。
憧れのプレイヤーのマウスピース、リード、リガチャー、楽器などのセッティングをチェックすると同時に、アンブシュアや息の使い方なども研究しながら、自分らしいサウンドを探してみましょう。
その過程で、その時にベストだと思えるマウスピースをチョイスするのがいいのでは?
プロ・アマ問わず、誰もがみんなその過程にいるのだと思います。
一緒に頑張りましょう!
ライタープロフィール
サックスのプロ奏者
平井尚之
愛知県一宮市出身、在住。
高校で入部した吹奏楽部でサックスを手にし、その後亀井明良、小串俊寿の各氏に師事し、洗足学園音楽大学に進学。
大学在学中は冨岡和男、大和田雅洋の各氏に師事し、クラシックスタイルの演奏を学ぶ。
大学卒業後、ジャズサックスを、大森明、土岐英史の各氏に師事。
現在はジャズコンボやビッグバンドのほか、吹奏楽やサックス四重奏といった編成などでも演奏活動を展開。
また、わかりやすく、楽しく、をモットーとした大好評のアドリブ講座を各地で開催中。