バンドマンの音楽における芸術性と大衆性について
私達バンドマンが音楽活動を続ける上で、「音楽における芸術性と大衆性(≒商業性)」という問題は、避けて通れない問題だと思います。
そしてそれはバンドマンにとってのみならず、歴史上でも何度となく議論される、永遠の課題とも言えるでしょう。
ポピュラー音楽
私達バンドマンの多くは、ロックやポップなどの所謂ポピュラー音楽を演奏していると思います。
「ポピュラー」=「人気のある、大衆的な」という意味ですから、その時点ですでに、バンドマンは大衆音楽を演奏しているという前提に立っていることになります。
自分達の作った音楽を、ライブで多くの人に聴いてもらいたい、CDなどの音源を多くの人に聴いてもらいたい。
そう思わないバンドマンはまずいないでしょう。
しかし同時に、多くの人に聴いてもらいたいから音楽をする訳ではないと思います(作曲技法の一つとして、作為的に聴いてもらいやすいようなフレーズやコードを入れることはあるとは思いますが)。
やはり、世界に一つしかない独創性の高い楽曲でもって、リスナーと共感したい、という思いの方が強いのではないでしょうか。
芸術性と大衆性は二律背反
芸術性と大衆性は相容れない二律背反と言われます。
例えばキリスト教の世界では、かつては礼拝で歌われる歌は単純な歌で誰もが歌うことができたそうです。
ところが、礼拝をより神聖化するためその歌が聖歌として複雑なものとして整備され、歌うことができるのは専門的なトレーニングを受けた聖歌隊のみとなりました。
聖歌の芸術性を高めるために、逆に大衆性が失われていってしまったのです。
理解するには、相応のトレーニングや資質を必要とする、高度で複雑なものが芸術性が高いと言えるでしょう。
そういう意味では、そういったトレーニングを必要とせず誰もが楽しめる大衆性とは確かに相反するものだと思います。
したがってここでは、
芸術性 = 理解するのにトレーニングや資質が必要
大衆性 = 誰もが楽しめる
という定義にしたいと思います。
芸術性の高い音楽
それでは音楽において(ここでは民族音楽的なものは除き、西洋音楽のみ対象とします)、芸術性の高い音楽とは何でしょうか?
まずもって浮かぶのは、クラシック音楽ですね。
現代音楽なんかは特に、何の知識もなければ全く楽しめないのでは?とすら思ってしまいます。
余談ですが、全く音を出さない無音という演奏(演奏と言えるのでしょうか?笑)をした現代音楽家集団がいて、そのコピーをした人達がいた、という話を聞いたことがあります(笑)。
軽音楽の中では、ジャズやプログレッシブロックなどが芸術性が高い方でしょうか。
演歌もある意味、芸術性が高いと言えそうですね(笑)。
バンドマンの音楽における芸術性と大衆性
バンドマンの音楽活動として、当然バンドを結成して曲を作り、ライブを行ったりレコーディングしたりします。
いわゆる「売れる」ことを目指して活動される方も多いでしょうし、中には継続することを目的に活動される方もいらっしゃるでしょう。
いずれにせよ、聴いてもらった人に「いい」と思ってもらえ、またそう思ってくれる人が多くないと、活動を継続していくことは困難でしょう。
例えばライブで、自分達以外のバンドを聴きにきた人に「いい」と思ってもらうには、誰もが楽しめる大衆性がないと、なかなかそうは思ってもらえないでしょうか。
特にポピュラー音楽をする上では、やはり大衆性を避けて通ることはできないと言えるでしょう。
一方で、「◯◯に似てる」とは言われたくない、他のバンドと差別化をはかりたい、やはりオリジナリティの高い存在でありたいと願いますよね。
そこに、現代バンドマンのジレンマがあるのではないでしょうか。
基本的には大衆性を高く持ちつつも、可能な限り芸術性も求めたい。
でも芸術性を求め過ぎたら理解されにくい。
「大衆性をベースに、いかに芸術性を低めに高められるか」という絶妙なバランスが求められるということになりますね(笑)。
MILKBARの北小路さん曰く
かつて京都のバンドMILKBARさんにインタビューさせていただいた際、ヴォーカル&ギターの北小路さんが、
「もっと芸能と芸術っていうものがバランスよくミックスされたものも出したい」
とおっしゃられていました。
そのバランス感覚を磨くことも、よりよい音楽活動の一助となるかも知れませんね♪
ライタープロフィール
ライブスポットラグ
平田 浩康
Live Spot RAGの平田浩康です。
15歳の時、音楽特にロックのカッコ良さに痺れギターとバンドを始めました。
生まれ故郷の高知県は、ライブハウスやコンサート会場も少なく生の音楽に触れる機会が少ない、当時は情報源も雑誌やCD、VHSビデオ(!?)という時代でしたが、音楽というとてもキラキラしたものに魅了され、勉強そっちのけでギターと音楽を楽しむ毎日でした。
大学進学から京都に移住し、大学では軽音楽部を卒業(笑)。
それまでは邦楽ロックや洋楽ハードロックを中心に聴いていましたが、先輩や同期から世の中にはもっとたくさんの音楽があることを知らされ、今では「いいな」と思えるものはジャンル隔てなく聴いております。
大学卒業後にRAGに入社、約6年のオフィスや約10年の音楽スタジオを経て、現在は創業39年の老舗Live Spot RAGにて勤務、主にプロモーション業務を担当しております。
日本トップミュージシャン達が奏でる「本物の音楽」に触れ、お客様に届けることで、あらためて音楽の煌めきを実感する日々です。
今でもギター、バンドはゆるく継続しており近年は今更ながら歌も歌ってみたりしています。
もうすっかりおっさんになってはしまいましたが、あの頃「音楽に描いた夢の向こう側」を、今後もみなさんと追っていければと思っています。