ビリーシーンのダブルネック仕様ベースはどうなっているの?
ビリー・シーンが、MR.BIGと並んで精力的に世界中をツアーしているのが、「SONS OF APOLLO」。
ご存じの通り、2017年に結成されたプログレッシブ・メタル界のスーパー・グループです。
このバンドでは、ビリーはダブルネック仕様のベースをメインに使用しています。
見た目からして、すごいインパクトですね。
今回は、このダブルネック仕様のヤマハAttitudeベースについて紹介します。
さらなる低音と弾きやすさの両立
https://www.instagram.com/p/BnkNjNchRC0/
2本のネックは、どちらも4弦仕様ですが、チューニングが異なります。
基本セッティングは、上側のネックがE-A-D-Gで、下側のネックがB-E-A-Dです。
つまり、上側はノーマルな4弦ベース、下側は「5弦ベースの下4本をとってきたベース」だと考えるとわかりやすいと思います。
通常、ビリーが使用しているヤマハAttitude Limitedベースには、4弦にヒップショットDチューナーが付いていて、ワンタッチで4弦をEからDに落とす(つまり、ドロップDチューニングにする)ことができます。
これにより、ベースを交換することなくヘヴィな楽曲にも対応できるんです。
しかし、元Dream Theaterのマイク・ポートノイ、デレク・シェリニアンが作曲する「SONS OF APOLLO」の壮大かつ重厚な楽曲では、さらにヘヴィな低音が必要だったのでしょう。
このダブルネックは、4弦ベースのフィーリングのままで、Low-Bを含む5弦ベースの音域も弾けるということで、ビリーにとっては「とても使いやすい」のだそうです。
ちなみに、ビリーは、5弦ベースはまったく使いません。
愛用のリストバンドにも「四弦達人」とありますが、4弦ベースを使い続けることにも、確固たる理由とこだわりがあるようです。
また別の機会に、ご紹介したいと思います。
意外に古くから使われています
このダブルネックは、Attitudeベースの系譜的には、Limited IIの世代にあたります。
長年ビリーのベースを手掛けているレオ・ナップという有名ビルダーの手によって製作され、1994年頃には完成していました。
カスタム品なので、残念ながら、市販はされていません。
ビリー公式サイトの機材紹介ページによると、古くは、1996年のMR.BIG「Hey Man」ツアー(※来日公演では未使用と思われます)や2001年にスティーヴ・ヴァイのツアーに参加したときにも使用していたとか。
ヤマハAttitudeベースはヘッドが大きいのが特徴ですが、このダブルネックは下側のヘッドが上下逆のリバースヘッドになっています。
この対称性は、ヘッド・バランスを保つのにも一役買っているようです。
また、ビリーが敬愛するジミ・ヘンドリックスのギターも彷彿とさせますね。
指板についてはデータがなく、よくわからないのですが、黒い材質の指板にパールらしきフレットマークが入っています。
タラス時代から現在に至るまで、メイプル指板のベースを使うことが多いビリーですので、この黒い指板は珍しいというか、逆に目を引きます。
出力ジャックは、通常仕様のAttitude Limitedベースと同様で、フロント・ピックアップとリア・ピックアップの2系統です。
トグル・スイッチで、上下どちらのネックから出力するかを切り替えられます。
当然のことながら、その重量は相当なもので、2個のワイヤレス・ユニットをつけると約9kgになるとか。
これを肩からぶら下げて、約2時間の超絶ライブを連日こなすというのは、想像を絶するハードワークだと思います。
還暦を過ぎてなお、こういうフィジカル的に厳しいチャレンジをするとは、ビリー恐るべしです。
きっと、体力を維持するトレーニングとかマッサージをストイックに続けているのでしょう、本当にすごいなあと思います。
ロン・サールとのダブルネック競演
https://www.instagram.com/p/BnjUIclAC4-/?hl=ja&tagged=ronthal
「SONS OF APOLLO」でビリーとタッグを組む「バンブルフット」こと、ロン・サールもダブルネック仕様のギターを駆使する達人です。
ダブルネックのプレイヤーが常にステージ両サイドにいるなんて、それだけで珍しいですよね。
そういう意味では、ビジュアル的にも、他に類を見ない稀有なグループだと言えるでしょう。
ちなみに、このロン・サールのダブルネックは、上側がフレットレス、下側がノーマルとなっています。
これもおもしろい発想ですね。
ポール・ギルバートとのダブルネック競演
2009年、MR.BIGがオリジナルメンバーでの再結成を果たした際の来日ツアーでも、このダブルネックが使用されています。
ポール・ギルバートのダブルネック・ギターを使ったソロ・コーナー途中で、ビリーがダブルネックを持って登場。
2人で壮大なデュエット曲を奏でます。
途中からエリック・マーティンとパット・トーピーも加わり、4人で協力してプレイ。
とても感動的なワンシーンでした。
実は、このときは、また別のおもしろいダブルネックの使い方をしています。
下側ネックが、4本の弦がすべて同じ音にチューニングされているんです!
つまり変則チューニングをするためのダブルネックだったのですね。
ポールはこの同音チューニングのアイディアがお気に入りらしく、最近のMR.BIGツアーでのソロ・コーナーでも、3本だけ弦を張った据え置きミニ・ギターで同様のフレーズを弾いています。
ご参考までに、僕がベース・パートをカバーした動画もご紹介します。
実際にやってみて分かったのですが、簡単に幅広い音域のフレーズを弾けるので、とっても不思議でおもしろいです。
1弦には、6弦ベース用Hi-Cゲージの細い弦を使いました。
こんなダブルネックも
さらに、現行モデルであるAttitude Limited IIIベースを元にしたダブルネックも存在します。
参考:Billy Sheehan 公式Facebookページ
なんと、こちらは「ギターとのダブルネック」になっています!
ただ、ビリー公式サイトに写真があるだけで、実際にステージで使っている姿は、僕はまだ見たことがありません。
MR.BIGライブの定番「パートチェンジ」のコーナーでは、ギターを担当することが多いビリーですから、いつかこのギターとのダブルネックも披露してもらいたいものです。
さて、今回はビリー・シーンが使うダブルネック仕様のベースについて、紹介しました。
お読みくださり、ありがとうございました。
ライタープロフィール
ビリーシーンスタイル・ベーシスト
ぢゃっく
1973年生まれ。
広島県出身。
16歳からベースを始める。
直後にみたビリーシーンのビデオに衝撃を受けて以来、25年以上に渡って、彼のプレイスタイルを研究中。
神戸市西区にあるスタジオメロウのスタッフ、Mellow Music Schoolのベース講師も務める。
「ぢゃっく」は、学生時代、ベースのジャックノイズが酷かったことからついたニックネーム。
テスコムスタジオメロウ|神戸市西区の音楽スタジオ:
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