ベースでライトハンド・タッピング。ビリーシーンの奏法が参考になる
右手で弦を押さえて音を出す「ライトハンド・タッピング」という奏法。
ギターでは、もうすっかりおなじみのテクニックですね。
そのライトハンド・タッピングをベースで駆使するプレイヤーといえば、ビリー・シーンを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
1980年代初頭、TALASのステージでは、すでに現在と変わらない(いや、それ以上!)の超絶タッピング・プレイを披露していましたので、間違いなくパイオニアの一人と言えるでしょう。
最近では、ベースでのタッピング奏法も一般化してきて、さほど珍しくなくなりました。
スチュアート・ハム、ヴィクター・ウッテンに代表されるように、右手あるいは両手によるタッピングを駆使した超絶プレイを得意とするベース・プレイヤーも数多く登場しています。
しかし、指板上を縦横無尽に駆け巡り、すさまじいスピードで滑らかに音を紡いでいくビリーのタッピング・プレイは、他のプレイヤーとは一線を画すスタイルだと思っています。
ライブのステージ上でも、アグレッシブに動きながら、超高速タッピング・フレーズを難なく弾いてしまうわけですが、そこには、ビリーならではの「工夫」があります。
今回は、僕が特に重要だと考えている2つのポイントについて紹介します。
こんなフォームで弾いていませんか?
YouTube動画などを見ていると、こういうフォームでタッピングしている人を良く見かけます。
残念ながら、これでは、ビリーのようなフレーズを弾くのは難しいと思います。
それでは、チェックポイントを見ていきましょう。
チェックポイント1:右手親指の置き場所
意外と多いのが、右手を宙に浮かせたままでタッピングしているというケースです。
これは一番いただけません。
空間における右手の「位置」と「角度」を安定させることができないからです。
右手が不安定な状態では、狙ったところを速く正確にタッピングするのは至難の業ですよね。
また、支えるものがないので、指先に力を込めることができません。
ギターのように軽く押さえるだけで音が出るのであればよいですが、ベースは弦が太いため、かなりしっかりタッピングしないと、ちゃんと音が鳴りません。
特に、タッピングした後に力強くプリングできなければ、ビリーのような「音量差のない滑らかなフレーズ」になりません。
チェックポイント2:右手人差し指の角度
もう一度、先ほどの写真を見てみましょう。
右手の人差し指が「ネックに対して平行」に近くなっています。
このフォームの方もかなり多いのですが、これはミスを誘引するリスクが非常に高いです。
右手首の角度がほんのわずかにズレただけでも、先端にある指先は、数ミリ~1センチくらいは簡単にズレてしまいますよね。
ベースの弦は太いといっても、通常のゲージで直径は1~3ミリほど。
指先が数ミリずれてしまえば、弦にきちんと当たらないミスタッチ(狙った音が出ない)や、別の弦やフレットを叩いてしまうミストーンの恐れも十分にあります。
また、タッピングする場面になると、急に指板をのぞき込んでしまう方もいます。
タッピングするフレットを良く見たいという気持ちはわかります。
しかし、一人で座って弾いているならともかく、ステージ上でプレイしている状況では、あまりカッコ良いアクションとは言えません。
ビリーの右手フォームに秘められた工夫
では、ビリーの右手はどうなっているのか、見ていきましょう。
まず、チェックポイント1の右手親指の場所ですが、必ず「ネックの上端」に置きます。
しかも、親指が曲がるくらいに力をかけて、しっかりと置きます。これにより、土台となる右手がしっかりと固定されて、タップする指先を安定させることができます。
タッピングするフレットが変わると、親指をネックに滑らせるようにして、右手ごと平行移動させます。
右手親指と人差し指の位置関係がほとんど変わっていないですよね?
これがとても重要です。
1フレットくらいの移動であれば、親指そのままの場合もありますが、基本的には、右手ごと一緒に動かしましょう。
つまり、ネックがガイドレールのような役割をしており、どのポジションでも、指板上の指先の位置感覚(親指~人差し指の先までの距離)が同じになるということなんですね。
これにより、激しくポジション移動したとしても、ベースを縦にしたとしても、床に寝ころんだとしても、右手は「常に同じ感覚」で安定してタッピングすることができるのです。
では、チェックポイント2の右手人差し指の角度についてはどうでしょう。
ネックではなく、「フレットに対して平行」に近くなっています。
こうすると、ネックを上から見たときに、フレットマーク、フレットラインと右手指の場所が一致するのでタッピングするフレットが「狙いやすい」のです。
目線も自然な姿勢のままでよいので、わざわざ指板をのぞき込む必要はないということですね。
また、もし仮に指先が少々ずれたとしても、指全体が同じフレット内にありますので、「どこかが弦をタップできれば狙った音が出せる」という保険的なメリットもあります。
仮にミスしかけても観客にそれを感じさせないのもプロの技術だと思います。
そう考えると、このメリットは大きいのではないでしょうか。
解説動画
最後に、僕が解説した動画をご紹介します。テーマはタッピング・ハーモニクスですが、同じポイントについて実際に弾きながら説明したものです。
さて今回は、ライトハンド・タッピングで注意するべき右手フォームの2つのポイントについてお伝えしました。
これらは、ミスを減らしつつ、より縦横無尽にプレイするために編み出された、ビリー流の「リスクヘッジ」ともいえるアイディアです。ぜひ貴方のプレイに取り入れてみてくださいね。
どちらもやっていることは難しくありませんので、鏡に映しながら練習するなどして右手のフォームを常にチェックしてみてください。
もしかすると、今まで、どうしてもできなかったフレーズが弾けるようになるかもしれませんよ。
参考になれば嬉しいです。
お読みくださり、ありがとうございました。
ライタープロフィール
ビリーシーンスタイル・ベーシスト
ぢゃっく
1973年生まれ。
広島県出身。
16歳からベースを始める。
直後にみたビリーシーンのビデオに衝撃を受けて以来、25年以上に渡って、彼のプレイスタイルを研究中。
神戸市西区にあるスタジオメロウのスタッフ、Mellow Music Schoolのベース講師も務める。
「ぢゃっく」は、学生時代、ベースのジャックノイズが酷かったことからついたニックネーム。
テスコムスタジオメロウ|神戸市西区の音楽スタジオ:
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