時代の潮目に問う、CD販売 vs ダウンロード販売
シンガーソングライター:スガシカオさんがメジャーへの完全復帰を果たした「アストライド / LIFE」。
その販売をめぐり、スガシカオさんのツイッターでの発言が話題になったことは記憶に新しく、目にされた方も多いのではないかと思います。
もくじ
5/24 スガシカオさんのツイート
DLでももちろん嬉しいのですが、ぶっちゃけDLだとほとんど利益がないんだ。おれらみたいにスタジオで徹底的に音楽を追い込むタイプは、制作費が全部赤字になっちゃう。CD買ってもらうと、かなり制作費が補えるので、次の作品が作れるメドが立つんだよね。
CD売れない音楽業界の負の連鎖だ— スガシカオ@ゆるフォロバ (@shikaosuga) May 24, 2014
J CAST ニュース:「DLだと制作費全部赤字。CD買ってほしい」 スガシカオが明かすミュージシャンの厳しい現状
http://www.j-cast.com/2014/05/25205685.html?p=all
CDがどんどん売れなくなっているのは周知の事実かも知れませんが、第一線で活躍するメジャーアーティストの発言として切実なものを感じます。
アーティストの収入として一説では、
・CD販売
1,000円のシングルとして、100万枚売れて約5,500万円以上の印税収入
・DL販売
1曲200円くらいとして、1〜2円程度の収入と作詞・作曲で2〜4円程。100万ダウンロードで約400万円程
との話もあります。
これはアーティストの収入であり、スガシカオさんのおっしゃる「制作費」はレコード会社側の予算でしょうし単純比較はできませんが、レコード会社としてはその作品で数字を上げないと次作の制作にかける予算が確保されない、またダウンロードよりCDで売れた方がその予算は確保しやすい、ということは事実なのでしょう。
特に、一度インディーズの活動に戻り再びメジャー復帰したばかりのスガシカオさんにとって、その先を占う勝負の作品なのだと思います。
スガシカオさんやアーティスト活動に理解を示し、賛同するリスナーの声も多々ありますが、一方でこのような声もあります。
未だにCDを買ってと嘆く音楽業界の末期症状
kasakoblogさんの5/28のエントリーです
未だにCDを買ってと嘆く音楽業界の末期症状
http://kasakoblog.exblog.jp/22057487/
CDが売れない時代に「CDを買ってくれ」と訴えるのではなく、「音楽販売ビジネス」の新しいビジネスモデルを構築するべきである。
まとめると、そういう内容だと思いますが、これも一理ある意見だと思います。
すごく雑な形で括るとするならば、
CD販売:アーティスト、レコード会社視点からは予算が確保しやすいので優先
DL販売:リスナー側視点からは、安くかつ利便性が高いので優先
つまり「CD販売 vs DL販売」は「制作者 vs エンドユーザ」の代理戦争とするのはやや言い過ぎでしょうか。
CD販売とDL販売
それでは、今一度ここでCDとDL、それぞれのメリット・デメリットを考えてみたいと思います。
CD販売のメリット(ユーザ視点)
- 音源、ジャケット、歌詞カード等トータルパッケージとしての作品を実物として入手できる
- ライブを見にいって気に入ったアーティストがあればその場で買える
CD販売のデメリット(ユーザ視点)
- 単価が高い
- 商品を手に入れるまでに手間がかかる(ネットでの購入手続き、CDショップへ足を運ぶ、等)
- モノなので場所を取る
- プレイヤーで再生するのにディスクを交換しなければならない
DL販売のメリット(ユーザ視点)
- 単価が安く、欲しい曲だけ単体で買える
- ネットに繋がっていればいつでもどこでも買える
- 検索→ワンクリックと、欲しい曲を探して購入するまでの手順が楽
- 結局はデジタルオーディオプレイヤーで聴くことがほとんどだと思うので、取り込んだりする手間がない
DL販売のデメリット(ユーザ視点)
- データなのでバックアップをとらないと損失する可能性がある
- ネット環境がないとサービスを享受できない
CD販売のメリット(アーティスト視点)
- 音源、ジャケット、歌詞カード、曲順等トータルパッケージとしての作品を提供できる
- 単価が高いので自身の収入や次作の予算を確保しやすい
- ライブ会場で現物として売れる
- プロモーション等でその場で渡せられる
CD販売のデメリット(アーティスト視点)
- 流通やジャケット制作・パッケージ等コストがかかる
- 販売に至るまで時間がかかる
- 商品在庫が存在する
DL販売のメリット(アーティスト視点)
- 録音を終えたらすぐにでも配信できる
- 販売店に依存せず、ネット環境があればいつでもどこでも買ってもらえる
- 在庫を抱えなくていい
- 提供の仕方によっては、CDより高音質なハイレゾでも配信できる
DL販売のデメリット(アーティスト視点)
- 単価が安く収入も少ないので予算が確保しづらい
- アルバムとしては買ってもらいにくい
多分にざっくりとしていますが、大まかにそのような感じではないでしょうか。
CD販売か、ダウンロード販売か、あるいはその先に
やはり大きく見ると、CD販売はアーティストサイドに、DL販売はユーザサイドに、それぞれメリットは大きいと思います。
それでは今後、音楽販売ビジネスの形はどうなっていくのでしょうか。
アナログレコードが、完全にではないにせよCDに取って代わられたように。
アナログカセットがMDに取って代わられ、さらにCD-Rやハードディスク等のストレージに取って代わられたように。
CDというメディアも普遍のものではなく、今すぐなくなることはないでしょうが、消えゆく運命のメディアであることは確かなのではないかと思います。
移り行く時代の中、アーティストやレコード会社側も、新しいモデルを構築していくのは急務ではないでしょうか。
ダウンロード販売もそうですが、定額配信ストリーミングもいよいよ日本において本格始動が噂される昨今、アーティストにとっても、ユーザにとっても、その環境は大きく変わろうとしています。
CD販売はレコード会社が、ダウンロード販売はシステム制作側が、それぞれ大きな利益を得た・得ていると聞きます。
時代の潮目、アーティストにもユーザにも双方にメリットのある、新しいモデルの提唱が待ち望まれますね♪
ライタープロフィール
ライブスポットラグ
平田 浩康
Live Spot RAGの平田浩康です。
15歳の時、音楽特にロックのカッコ良さに痺れギターとバンドを始めました。
生まれ故郷の高知県は、ライブハウスやコンサート会場も少なく生の音楽に触れる機会が少ない、当時は情報源も雑誌やCD、VHSビデオ(!?)という時代でしたが、音楽というとてもキラキラしたものに魅了され、勉強そっちのけでギターと音楽を楽しむ毎日でした。
大学進学から京都に移住し、大学では軽音楽部を卒業(笑)。
それまでは邦楽ロックや洋楽ハードロックを中心に聴いていましたが、先輩や同期から世の中にはもっとたくさんの音楽があることを知らされ、今では「いいな」と思えるものはジャンル隔てなく聴いております。
大学卒業後にRAGに入社、約6年のオフィスや約10年の音楽スタジオを経て、現在は創業39年の老舗Live Spot RAGにて勤務、主にプロモーション業務を担当しております。
日本トップミュージシャン達が奏でる「本物の音楽」に触れ、お客様に届けることで、あらためて音楽の煌めきを実感する日々です。
今でもギター、バンドはゆるく継続しており近年は今更ながら歌も歌ってみたりしています。
もうすっかりおっさんになってはしまいましたが、あの頃「音楽に描いた夢の向こう側」を、今後もみなさんと追っていければと思っています。