【シンガーソングライター女子が語る】アイドルとバンドの違い(後編)
それは、そもそも売りにしているものが違うから、お客さんの消費動向も全然違ってくるという、すごい当たり前すぎる理由によるものだと思います。
バンドファンの消費動向
「音楽」を売りにしているバンドの場合、ライブ本編で「音楽」に触れた時点でお客さんの欲求は満たされます。
もちろんライブ後にお酒を飲んだり会話をしたりするのも楽しいけど、ライブ本編で音楽という価値を提供した時点で、最低限のサービスはすでにクリアされたことになります。
物販で売るための商品を何も持って来ずに、ライブだけやって帰るバンドやシンガーソングライターもいるぐらい、物販に重きを置いてない。
私も客としてバンドのライブを観に行っても、チケット代にプラスしてさらに何千円もお金を使ってから帰るなんてことはほとんどあり得ません。
気に入ったバンドがあればCDを買って帰るけど、同じCDを何枚も何枚も買って帰るということはまずないので、そこで落とす金額はたかが知れています。
仮に、バンドマンに会いに行くことがライブハウスに通う理由になったとしても、そこにお金はかからないです。
アイドル用語で言うところの「無銭がっつき」ができてしまいます。
バンドマンと写真撮るのに「2ショット1000円です」なんて言われてる子は見たことがありません。
「1分以上会話するには、CDをもう1枚買って並び直して下さい」とか言われてる人も見たことがありません(ビジュアル系とかは知らんけど)。
アイドルファンの消費動向
一方アイドルは、音楽を売りにしているグループや楽曲が好きなお客さんもいるだろうけど、実際はアイドルそのものに商品価値を付けて商売していると思います。
観に来るお客さんも、ライブ本編はもちろんだけどそれと同じか下手したらそれ以上に、アイドルと話したり一緒に過ごしたりする時間を大切にしていると思う。
ほとんどのアイドルイベントのタイムテーブルに、やたらと長い「物販時間」というものが組み込まれていることからもそれが伺えます。
ライブ出演時間の約4倍もの物販時間が確保されているイベントもよく見かけます(これではライブのための物販なのか、それとも物販のためのライブなのか分からなくなりそう……)。
チェキってすごい
そして、アイドルの物販商品と言えばチェキです。
バンドが売っているCDやその他グッズは、普通なら買ったとしても1人1個までですが、チェキは同じ人が何枚でも買えてしまいます。
チェキの写真そのものだけじゃなくて、チェキを撮る過程でアイドルさんと話すことにも価値が出てきてるので、もっと話したかったらもっとチェキを買う、って感じで、もう、無限です。
最近は物販の品揃えとしてとか、応援窓口的な意味合いでチェキを売ってるバンドやシンガーソングライターもたまにいます(私もチェキ売ってます。私は、自分の外見に価値があると思って売ってるってゆうか、あれは募金窓口だと思って売ってます)。
アイドルはビジネスありき
アイドルの物販システムって、商売としてよくく出来てると思います。
アイドルがこんなにもうまく経済的に盛り上がっている理由は、アイドルをビジネスとして考えている大人の存在があるからだと思います。
最近ではセルフプロデュースや無所属の地下アイドルなんて珍しくもない時代になっていると思いますが、もともとのアイドルの構造って、女の子がいて、それをプロデュースなりマネジメントなりする大人の存在があったはずです。
アイドルの女の子の力でそのバックに付いている大人まで食べさせていかないといけないんだから、ビジネスとして儲かるような仕組みにするのは、まぁ当然ですよね。
セルフプロデュース系のアイドルは食べさせなきゃいけない大人の存在はないかもしれないけど、そういう人たちもアイドルの仕組みをうまく使って盛り上がってると思います。
最後に
アイドルとバンド、どっちが良くてどっちが悪いかという話ではないけど、好きなことをする度にお金が無くなっていくのでは、いくら好きなことだったとしても、長くは続けられないよね。
気持ちだけじゃ楽器は買えないし、スタジオ代も払えないし、ノルマ払もえないし。
バンドってお金かかるけど、がんばってほしいって思う。
あと、ライブハウスはカラオケルームじゃないです。
オリジナル曲が作れなくても、オリジナル曲を外注するお金やコネが無くっても、誰でもステージに立ててしまう時代だけど有名なアイドルグループの曲のカラオケばかりを歌っているアイドルさんの方が、バンドよりも、簡単に結果が出てしまう現実は、見ててちょっと苦しいです。
本当にひどいイベントだと、ライブハウスってなんだっけな、という気持ちになることもある。
バンドやアーティストも消えないで欲しいから、ファンの人がもっとお金を落とせるシステムがうまくできるといいな〜って思う。
ライタープロフィール
シンガーソングライター
岬たん
パンクロック生まれサブカル育ちのSSW、岬たん(みさきたん)。
わがまますぎてバンドが組めなかったが、アコギ1本でもパンクロックをするべく2015年12月より自作曲での弾き殴り活動を開始。
「ブスの自撮り、デブの生足」「クソババア クソジジイのテーマ」など、次々に生み出されるオリジナル曲はどれも独特で個性的。
客席を巻き込むプレイスタイルとストレートすぎるMCからなる自由奔放なライブで、弾き語りイベントだけでなくバンドイベント・アイドルイベントにも多数出演中。
(むしろ弾き語りイベントでは浮くことも…)
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