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【アンプに例える】宅録ギタリストのための簡単EQ術
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【アンプに例える】宅録ギタリストのための簡単EQ術

ミックスに関して記された書籍やネット上のウェブページを眺めていると、頻繁に紹介されているのがプラグインのEQ(イコライザー)を使ったテクニック。

「EQを使って音を住み分ける」「EQで音の距離感を調節する」などなど、ベテランのエンジニアは、EQひとつで本当にさまざまな問題を解決してしまいます。

今回は宅録ギタリストに向けて、EQの使い方をご説明します。

はじめに

【アンプに例える】宅録ギタリストのための簡単EQ術さまざまな調節ができるEQですが、まだミックスにあまり慣れていない人にとっては、できることの選択肢が多すぎるため、一体どこをどのくらい弄れば良いのかイマイチ分かりづらいですよね。

見よう見まねで雑誌に書かれたテクニックを試してみても、「本当にこれでいいのだろうか……」「思ったほど効果が得られてない気がする……」なんて感じることも多いと思います。

そこで今回は、複雑なテクニックはいったん置いておき、最も基本的かつ効果の大きいイコライジング術を紹介したいと思います。

一見、無限の組み合わせがあるようにも思えるパラメトリックEQも、実際によく操作されるポイントは意外と限られているもの。

ここではイメージしやすいように、ギターアンプに付いているEQのツマミを例に用いて説明してみたいと思います。

さまざまな応用テクニックを習得するためにも、まずは基本的なイコライジングをバッチリとこなせるようにしたいですね。

周波数をアンプに例えてみる

ギターアンプやエフェクターに付いているEQツマミと、ミックスで扱うパラメトリックEQ。

これらはなんとなく別物のように感じてしまいますが、本質的には大きな違いはありません。

まずはパラメトリックEQの各バンド周波数を、以下のように設定してみましょう。

EQ イコライザ

中域だけハイミッド・ローミッドと二つに分かれているものの、これで一般的なギターアンプのEQツマミに近い効果が得られると思います。

プラグインEQは効きが強いので、自然なサウンドを保つためにも±7dbぐらいの範囲で調節するのが良いでしょう。

それでは各帯域について細かく見ていきましょう。

ハイ&ローをしっかりと

今回設定した4つのポイントのうち、特に重要なのはハイ・ローの2バンド。

これらの帯域さえしっかり調整できれば、基本のEQとしてはOKな場合も多いです。

Fenderの代表的なアンプであるDeluxe ReverbにもEQが「Treble」と「Bass」の2バンドしかありませんが、音作りに関して不自由することはあまりありませんよね。

ローで音圧を作る

EQ イコライザ

ギターアンプの「Bass」つまみと同じイメージで低域をカットorブーストするためには、まずEQの周波数を180Hzにセットしてみます。

この際EQのカーブはピーキング(ベル)ではなく、シェルビングタイプにしておきましょう。

これによってサウンドの音圧感を直感的にコントロールすることができます。

低域を強調すると音が派手にカッコよくなるので、ついついブーストしたくなってしまいますが、あまり上げすぎると他の楽器と混ぜた時に音がぶつかり合って、抜けの悪いサウンドになってしまいます。

ブーストする際はほどほどにしておきましょう。

もし「ちょっと効きが弱いかな?」と感じた場合には、少し周波数を上げて250Hzに設定してみましょう。

特にカッティングのギターなどはこの帯域からカットすることで、キレのあるシャープなサウンドを作れます。

ベースやバスドラムなど低音楽器の場合はもっと低い帯域(60~150Hz)にも手を入れたくなりますが、これらの帯域はモニター環境によっては判断が難しい場合があります。

まずは180/250Hzのセッティングを用いて、低音をきっちり処理できることを目指しましょう。

ハイでエッジ感を出す

EQ イコライザ

EQの周波数を4kHzに設定することで、一般的な「Treble」ツマミと同じ感覚で音を操作できます。

ローと同様に、EQのカーブはシェルビングタイプにしておくのが良いでしょう。

ギラっとした成分をコントロールすることで、音の輪郭を強調したり、逆に落ち着かせることができます。

もし音のキレが悪く感じられる場合、ハイをブーストしても良いのですが、できればその前に一度ローを少しカットしてみてください。

余分なローをカットすることで相対的にミッド〜ハイが聞こえやすくなり、ハイだけを強調した場合よりも良い結果が得られることが多いです

慣れてきたらもう少し周波数を上げて8kHzあたりにも設定してみましょう。

4kHzがアンプの「Treble」だとしたら、8kHzは「Presence」といったイメージでしょうか。

音のキャラクターを大きく変えずに、サウンドのエッジ感だけを強調できます。

ミッドの操作は慎重に

「Bass」「Treble」ときたら次は「Middle」と行きたいところですが、中域に手を入れる場合は少し注意が必要です。

先に紹介したハイとローの帯域は基本的にどの楽器にも有効ですが、ミドルは音源によって効果的な周波数ポイントが変化します。

また、ミドルは大きく手を入れると音のキャラクターが崩れてしまいやすいため、適切に処理しないと良い結果が得られません。

中域へのEQは、明確な目的を持っておこなうようにしましょう。

ハイミッドは音の芯

EQ イコライザ

ハイミッドへのEQは、他の楽器と比べてギターの存在感が大きすぎるor小さすぎると感じた場合に有効です。

1.5kHz辺りは、いわゆる音の芯と言われるところ。

やや広めのQ(ピーキング)でブーストすると、アンサンブルの中で音がハッキリ聞こえやすくなります。

この帯域は、楽曲の主役となることが多いボーカルにとって非常に重要な帯域です。

もし他の楽器の存在感が大きく、ボーカルが聞き取りづらいと感じられた場合には、この帯域を少し譲ってあげると解決できるかもしれません。

ローミッドで音をすっきりと

強く歪ませたギターや、オフマイクで部屋の響きを多く収音した音源などは、サウンドに雑味が多く「もっさり」とした印象を受ける場合があります。

そういった時には、EQカーブをピーキングに設定して300Hzをカットしてみましょう。

EQ イコライザ

これによって音をかなりスッキリさせることができると思います。

やりすぎるといわゆる「ドンシャリ」なサウンドになってしまい、楽曲全体の音圧感が失われるので注意しましょう。

まとめ

EQに関するテクニックは本当にさまざまで、人の数だけ方法があると言っても過言ではありません。

「〜Hzを〜dbカット」といった具体的な数値も、音楽のジャンルやスタイル、そして音源によって大きく変化していきます。

最終的にはやはり、音源に合わせた処理を自分で決めていかなければなりません。

そのためには、音を正しく判断できるだけの「基準」と「耳」を育てる必要があります。

まずは今回紹介したシンプルな操作で、基本的な処理のマスターを目指してみましょう。

その上で少しずつ応用のテクニックを試して行き、EQを自分の手足のごとく扱えるようになると良いですね。

ライタープロフィール

ギタリスト・アレンジャー

べにまる

ギタリスト/アレンジャー。

曲を作ります。

三度の飯より楽器が大好き!

重度の機材オタクです。

ちょっぴりマニアックな機材のレビューや、ギター・宅録・MIXのノウハウを、他とは少し違った視点からお伝えしていきます。

ウェブサイト:http://benimarulabo.com

Twitter:rnrbenimaru

YouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/c/benimarulabo

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