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【魅惑の即興演奏】フリー・ジャズの代表作・人気のアルバム
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【魅惑の即興演奏】フリー・ジャズの代表作・人気のアルバム

たとえば既存のクラシック音楽から全く違った様式や手法を試みたものが現代音楽と呼ばれるようになり、通常のスタイルのロックとは違ったアプローチを展開したポスト・ロックと呼ばれるジャンルがあったり、一定のジャンルにおけるサブジャンルは多く存在していますよね。

「フリー・ジャズも、まさに言葉通り前衛的な方法論やフリーキーな即興演奏が特徴的な、ジャズという括りの中で新たに生まれたジャンルです。

今回はそんなフリー・ジャズと呼ばれる作品の代表的な1枚や人気作を選出してみました。

決して万人受けするような音楽ではありませんが、興味を持たれた方はぜひこの機会に挑戦してみてください!

もくじ

【魅惑の即興演奏】フリー・ジャズの代表作・人気のアルバム

Closeness

O.C.Charlie Haden

1937年にアメリカはアイオワ州にて生まれたチャーリー・ヘイデンさんは、フリー・ジャズという枠内をこえて、偉大なベース奏者としてその名を音楽史に刻むミュージシャンです。

アヴァンギャルドなスタイルからフュージョンまで、幅広い分野で長きに渡ってジャズ・シーンの最前線を走り続けたヘイデンさんは、20代前半でオーネット・コールマンさんのカルテットに参加しており、フリー・ジャズの歴史において先駆的な存在の1人としても著名ですよね。

今回紹介しているアルバム『Closeness』は、1976年にリリースされたヘイデンさんのリーダー作です。

全4曲がヘイデンさんのオリジナル曲で、キース・ジャレットさん、オーネット・コールマンさん、アリス・コルトレーンさん、ポール・モチアンさんというジャズ界の巨匠たちと、それぞれデュオ形式で演奏するという豪華な内容。

共演相手それぞれの個性と対話するような、粘っこいベースの音色と多彩なフレーズが実にスリリングでカッコいいですよ。

KOH-1

Space is the Place

Space Is the PlaceSun Ra

スピリチュアル、と書くとなんとなくうさん臭さを感じてしまう方も多いかもしれませんが、自らを土星生まれと称する伝説的な音楽家にして独自の宇宙哲学の持ち主、サン・ラさんの生み出したフリー・ジャズ~スピリチュアル・ジャズに広がる豊潤な音世界は、決してこけおどしなどではありません。

ジャズというジャンルの中で位置づけられているのは単なる偶然であって、あまりにも自由なサン・ラさんの魂を音として表現した結果、というだけな気もしますね。

1972年にリリースされた宇宙的傑作『Space Is The Place』は、タイトル自体がサン・ラさんの座右の銘であり、自ら「アーケストラ」と名付けた自身の楽団による演奏は、一切の音楽理論の制約から解き放たれた原始的な異国の祝祭のようです。

20分をこえる表題曲からして、アフリカン・リズムのグルーヴと飛び交うモーグとオルガンの響きでまったく違う世界へと聴き手を連れていってしまいす。

サンプリング・ソースとしてクラブ世代にも人気がある作品ですし、女性ボーカルの導入も含めて、サン・ラさんの宇宙に足を踏み入れるための入門編としても、ぜひ。

KOH-1

The Shape of Jazz to Come

Lonely WomanOrnette Coleman

『ジャズ来るべきもの』という邦題でも知られているこちらの『The Shape of Jazz to Come』は、フリー・ジャズのひな形を作り上げたと評される偉大な作品です。

ジャズ・サックス奏者にしてフリージャズの先駆的な存在、オーネット・コールマンさんが1959年に発表したアルバムで、スタンダードナンバーのカバーなどは含まれず、全曲がオーネットさんの作曲によるオリジナル曲で構成されています。

コルネット奏者のドン・チェリーさんとドラマーのビリー・ヒギンスさんに加えて、ベース奏者のチャーリー・ヘイデンさんが参加、2つのホーンがフロントに立つカルテットが生み出したサウンドは、ピアノを軸とした従来のジャズとはまったく違う音楽を生み出しました。

決まったコード進行や楽曲構成を意図的に逸脱し、不協和音が生み出す不思議なずれと美しい旋律とが同居する、まさに自由度の高い前衛ジャズの原点と呼ぶべきサウンドが本作の偉大な価値を決定付けているのです。

とはいえ、今聴くとそこまで難解というわけではなく、オーネットさんの作曲家としての才能も感じ取れるジャズの名盤として聴けるのではないでしょうか。

KOH-1

Unit Structures

StepsCecil Taylor

ニューヨークはクイーンズ出身、ジャズ界における前衛的なピアニストとしてその名を刻むのがセシル・テイラーさん。

フリージャズの先駆的な存在として知られているテイラーさんですが、幼少期からピアノを弾き、音楽カレッジでクラシック音楽の教育を受けていた経歴を踏まえると、いわゆるアカデミックな音楽的教養がテイラーさんにはあるというのが重要ですよね。

同時に現代音楽などにも親しんでいたというテイラーさんが1966年に発表した『Unit Structures』は、60年代のフリー・ジャズ・ムーブメントにおいて重要とされる1枚です。

ジャズの名門中の名門レーベル、ブルーノートからリリースされた本作は、それこそ現代音楽的な手法でいくつかのテーマをコラージュのようにつなぎ合わせ、演奏者それぞれの個性が火花を散らし、スリリングな展開を見せるサウンドはフリー・ジャズという概念を抜きにしても十分カッコいいですね。

嵐のように打ち鳴らされるテイラーさんのピアノのスタイルを聴けば、ピアノという楽器は弦楽器であるのと同時に打楽器でもあるということがよくわかるはずです。

KOH-1

なしくずしの死

Alto Improvisation No.1阿部薫

伝説にその名を刻み、天才や鬼才などと呼ばれる芸術家は、私生活が破天荒であったり、生き急ぐように若くして亡くなってしまう方が多いですよね。

日本のフリー・ジャズの歴史における最も有名なサックス奏者といっても過言ではない、29歳という若さでこの世を去った阿部薫さんは、まさに天才であり鬼才と呼ばれるにふさわしい存在でした。

作家であり女優でもある鈴木いづみさんとの結婚生活は、後に巨匠若松孝二さんによって映画化されていますね。

そんな阿部さんの音楽スタイルはほとんど独学で身に付けたそうで、従来のオーソドックスなジャズとは違い、最初から自由な魂の中で生まれた、言葉の意味そのままの「フリー・ジャズ」と呼ぶべきものです。

そんな阿部さんが1976年に発表したソロ・アルバム『なしくずしの死』は、20世紀フランス文学における異端の作家、ルイ=フェルディナン・セリーヌの著作からタイトルを拝借していることからもわかるように、破壊的な文学性と日本的叙情とが交互に迫りくる、まさに魂の名演が収められています。

決して気軽に聴けるような内容ではありませんが、阿部さんの人となりに興味を持たれた方は、ぜひ一度挑戦してみてはいかがでしょうか。

KOH-1

クレイ

クレイ山下洋輔トリオ

日本におけるフリー・ジャズは、決して欧米の後追いなどではなく、むしろ世界に誇るべき驚きの個性と実力を持ったミュージシャンたちによって生まれました。

海外から輸入したというよりは、日本でも1960年代の時点で独自の音楽を鳴らすジャズ・ミュージシャンが現れて、同時代的にそれぞれのムーブメントが勃発していたのだと言えそうです。

当時の日本のフリー・ジャズがどれほどのものであったのかを私たちに教えてくれる作品の1つとして、今回は山下洋輔トリオの傑作ライブ・アルバム『クレイ』を紹介します。

1974年、ドイツにて行われたジャズのフェスティバルに出演した彼らの演奏が録音された本作は、ピアニストの山下洋輔さん、サックス奏者の坂田明さん、ドラムスの森山威男という3人の日本人による新しいジャズの形を、当時のヨーロッパのジャズ愛好家たちに知らしめた歴史的事実を真空パックしたもの。

アバンギャルドな演奏ながら、小難しい理屈をねじ伏せる暴力的なまでのパワーは、今聴いても衝撃的の一言ですね。

演奏が終わり、耳の肥えたオーディエンスから万雷の拍手と大歓声が巻き起こったのも当然でしょう。

KOH-1

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