多くの人が間違っている!?ギターアンプの音作りで気をつけたいこと
典型的なバンド編成の中でとくに音作りに気を使うのがギターというパート。
中音域を担う目立ちやすいパートのあなたのギターの音で、もしかすると観客を不快にさせているかもしれません。
わたくしもギターの録音などを日々行っておりますが、その中で気づいたことの1つを紹介したいと思います。
もくじ
アンプ
主に日本のライブハウスやスタジオではマーシャルかRoland JC-120が置いています。
ギターにおいての音作りは永遠のテーマであり、日々頭を悩ませているかと思います。
余談ではありますが、日本では当たり前になっているマーシャルとJC-120というアンプの組み合わせ、これ実は日本だけなんです。
海外ではマーシャルは置いてあっても、JC-120が置いてある風景はほとんど見られません。
しかもマーシャルは必ず上下分かれたスタックアンプという訳ではなく、コンボアンプの場合も多々あり。
日本ではリハーサルスタジオと呼ばれたりしていますが、英語圏では「Jamming studio」と呼ばれていますので検索してみると海外のスタジオ状況などを見る事ができます。
低域と中高域で音の進む方向が違う?
中域高域では音は真っすぐ進んでいきます。
ただ実は低域は指向性がないので人間はどこから鳴っているのか分かりません。
「そんなことないんじゃない?」と思う方もいますよね。
低音の鳴っている方向が分かる場合、それは「他の高域の音と一緒に鳴っている」からどこから音が出てきているのか分かるのです。
なのでテレビのオーディオ環境を整える場合、~サラウンドと言っていろんな場所にスピーカーを置いたりしますが、低音が出るウーハーは部屋のどこに置いてもいいんです。
低音はどこから鳴ってるか分からないし、中高域が鳴っている方向から音が鳴っているかのように聞こえますからね。
指向性から考えるバンドアンサンブル
中高域は指向性があり、低域は指向性がない。
これはバンドアンサンブルでも同じ事が言えます。
アンサンブル内のベース
ベース単体で鳴らしていれば、ベースには中高域も含まれるのでベーシストの方から音が聞こえてきます。
ただバンドで鳴らしてアンサンブルに溶け込んだ場合、ベースの低域はベーシストの方からは聞こえてきません。
バンドから聞こえてきます。
低域は他の中高域が鳴っている方向から聞こえてきますから。
アンサンブル内のギター
これはギターも同じ。
ギターは中域の楽器なので指向性があります。
なので左右でステレオ感を演出したりもできるのですが、ここでいくらギターが低音を上げて刻んでも、バンドアンサンブルになるとギターの低音はギタリストからは聞こえてきません。
主に100Hz辺りからの下の帯域の音は、バンド全体からベースやドラムのキックの低音と一緒に団子になって聞こえてきます。
海外のハードコア系のギタリストなどもインタビューで答えているように、ギターアンプの低域ノブはあまり上げても意味がない。
バンドアンサンブルに置いての音の重さ、ラウドさは、使うアンプ・音色・キックやベースとの組み合わせなどによって成り立つと言えます。
ギターの音が痛い理由。家とスタジオで音が違う理由
本題に入りますが、よくギタリストがやりがちな悪いセッティングの仕方、それは「立ってアンプを操作している」ということ。
なんだか変な精神論みたいにも聞こえてしまいかねませんが、ギターアンプにおいて立ってセッティングをするというのは耳栓をしながら音作りをしているようなもの。
スタジオやライブハウスで置いてあるようなアンプは前述のとおり、
- JC120のスピーカーは膝くらいの高さ
- マーシャルのスピーカーは腰くらいの高さ
しかありません。
今回の記事を見ているとすでにピンと来ている方はいるかと思います。
ギターの音には指向性がありますので、アンプの音はスピーカーから真っすぐ飛んでいきます。
なので、アンプ前で立って操作している耳の位置からはギターアンプから出ている音はまったく聞けていないということ。
とくに指向性のある高域に行く程、立っているその位置からは聞こえませんし、指向性のない低域にかけて徐々に聞こえてくるようになりますので、結果本来のギターアンプから出ている音よりも非常にモコモコとこもった音が聞こえてきます。
リスナーが聞いているギターの音
それではギターアンプのスピーカーのどこのポジションからの音を皆が聞いているかというと、当たり前ですがギターアンプの真正面からの本来の音です。
ステージ上は少し観客席より高くなっているので、アンプ自体の高さも観客の耳の高さに近づきますし、PAに通すためのマイクもスピーカーの前面に設置します。
ギターのレコーディングもアンプのスピーカーの前で、マイクの位置「マイキング」には非常に神経を使います。
少しの位置を変更しただけでも録れるギターの音はまったく変わってしまうので、それだけ指向性のあるギターにおいてのリスニングポジションというのは大事だということ。
と言うことはアンプシュミレーターなどで作れるギターの音も、前記のようにもちろんギターアンプのスピーカーの前面で神経尖らせてマイキングの位置調整した音なので、家で自分で音作りなどしたアンプシミュレーターの音も、ギターアンプのスピーカーの真正面から聞こえてくる音と言えます。
もし家で音作りしたセッティングのままスタジオに行っても、立ってセッティングしているとしたら「あれ?思った音と違う……?」と首をかしげることになります。
立ったままセッティングしていると……
このような状態で音作りをしてライブなどをするのは非常に危険です。
なぜならアンプの前で立ちながら聞いた非常にモコモコしたアンプの音を、そのリスニングポジションのままギタリストが良いと思う音作りにするということは、アンプの真正面から出ている音は非常に鋭利でハイの痛いギラギラとした音になってしまうから。
実際観客が聞いているのはこの超痛いギターの音になってしまうので、文字通りギターが凶器になってしまうわけ。(観客の耳を殺しにかかっているのであれば良いかもしれません)
対策
対策方法は簡単です。
しゃがんでスピーカーの位置に耳を下ろせばいいだけ。
もしくはギターアンプの高さを変える。
耳の高さをスピーカーの位置と同じにすることで、自分の思っている音をリスナーと共有することができます。
自分が痛いと思うような音にはセッティングしませんよね(笑)。
セッティングしている様子を見ていると音作りが本当にうまい人はちゃんと耳を下げています。
こういった事象をこじらせた1つの例として「アンプの真正面から聞くと音が痛いから、正面で聞いたり音作りしたくない」というギターさんがいます。
いろいろ突っ込みどころが多いというか……最初から正面で音作りしていれば音も痛くないですし、その「音が痛くて不快な音」を観客に聴かせている訳です。
もちろんベースにも中高域が含まれていますので、スピーカーの位置に耳を持っていくのは重要と言えます。
アンプの設定をいじる方、耳の位置には気をつけましょうね。
ライタープロフィール
DTMer
前田ユウキ
Dragon Ash・BOOM BOOM SATELLITES・Char・the HIATUS・サザンオールスターズ・ACIDMANやジャニーズなど、様々なメジャーアーティストのローディーを経験。
自身のバンド活動を経て、現在はフリーでの音楽コンポーザー、及びライター活動中。
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