ビートルズの名曲「Hey Jude(ヘイ・ジュード)」の誕生秘話
誰しもが一度は耳にしたであろうビートルズの名曲、「Hey Jude(ヘイ・ジュード)」。
その誕生の裏には、さまざまな事情がありました。
今回はうわさも含めたいくつかの説を通して、この曲の誕生に迫ります。
もくじ
Judeという名前はどうして誕生したのか?
洋楽が苦手な方でも、さすがにビートルズの名曲「Hey Jude(ヘイ・ジュード)」を聴いたことがないという人はいないと思います。
ロンドンオリンピックの開会式で、ポールがこの曲を演奏しているのを記憶に留めている方も多いでしょう。
ポールは、ライブで必ずこの曲をセットリストに入れています。
この曲はエンディングで「Na Na Na Na Na Na~」と何度もコールをするのですが、その場面でバンドと観客が一体となれるという意味でライブ向きの曲と言えます。
ところで、この曲の歌詞は主人公がJudeという名の人物を励ますという内容になっています。
今回はこの名曲がどのようにして誕生したのかについてお話しします。
ジョン・レノンの離婚がきっかけ
ジョンは、ビートルズがメジャーデビューをする前にシンシア・パウエルという女性と結婚していました。
マネージャーのブライアンエプスタインが、若い女性をターゲットにしたアイドルグループとしてビートルズを売り込もうとしていた矢先の出来事で、彼は頭を抱えてしまいました。
しかし、過ぎてしまったことはどうしようもないので、やむなく2人の結婚の事実は公表しないことになりました。
つまりシンシアは、公式にはジョンの妻ではないということになってしまったのです。
気の毒なように思いますが、彼女はあまり目立つことを好むタイプではなかったので、かえってこの方がファンに騒がれず静かな生活を送れて良かったようです。
もともとはHey Jools(ヘイ・ジュールス)だった
シンシアと結婚していたジョンですが、やがてオノ・ヨーコと知り合いました。
彼らの仲は急速に親密になり、やがて恋愛関係に至りました。
とうとう彼は、シンシアと離婚することを決意しました。
ポールはジョンの行動について批判したわけではなかったのですが、当時まだ5歳で父親を失うことになった息子のジュリアンをとてもかわいそうに思いました。
彼は、日ごろからジュリアンを自分の息子のようにかわいがっていたからです。
そこでポールは、ジュリアンのことを元気づけるために曲をつくってやろうと考えました。
ある日彼は、ジュリアンに会おうとジョンの自宅へ向かって車を走らせていました。
彼はいつも車を運転するときに、良い曲が思い付くかもしれないという理由で、ラジオはつけないことにしていました。
すると、「Hey Jools, don’t make it bad」という歌詞とメロディーが頭に浮かんできたのです。
Joolsというのは、どうやらジュリアンのニックネームだったようです。
しかし、いくらなんでもジュリアンのニックネームをそのまま使うのはまずいので、何か別の名前に変えた方が良いと考えました。
ポールは、アメリカのミュージカル映画「オクラホマ!」に登場するJud(ジャッド)という人物が好きだったので、彼にちなんでJudeという名を選んだとされています。
ジョンの受け止め方は違った
しかしジョンは、この曲が表向きはジュリアンに向けられた曲だと分かっていながら、実際には自分に向けられた曲だと受け止めていました。
特に、「go and get her(彼女を自分のものにしろ)」という歌詞は「ヨーコを自分のものにしろ」と呼びかけているように受け取れました。
あるいは、裏を読んで「オレの元を離れてヨーコの所へ行くな」というメッセージとも受け取ったのです。
ただ、さすがにこれはジョンの思い込みだと思います。
純粋にポールは、ジュリアンのことを励ましたかっただけでしょう。
別の説もある
ある女性ジャーナリストの存在
以上が公式に伝えられている見解ですが、これらとは異なる見解も唱えられています。
Judith Simons(ジュディス・シモンズ)という女性ジャーナリストが、この曲のタイトルは自分の名前にちなんだものだと主張しています。
彼女は、イギリスの女性ポップジャーナリストの草分け的存在として知られています。
ビートルズがブレイクしたころには彼女はすでに30代後半でしたが、むしろ彼らより歳上だったことが幸いしたと語っています。
もし、彼らと同じような年代だったとしたら、あのすさまじいビートルマニア現象に巻き込まれて、頭がおかしくなっていたかもしれないと語っています。
彼女は、イギリスでビートルマニア現象が始まったころにビートルズと取材で知り合いました。
ジョンの叔母のミミとも親しくなって、彼らと兄弟のような、親密な関係を築きました。
真実かどうかは分からない
シモンズは、ヘイ・ジュードがリリースされる直前に、ビートルズの広報担当だったトニー・バーロウから、この曲のタイトルが自分の名前にちなんだものだと聞かされたと語っています。
また彼女が90歳になったときに、ポールが彼女宛にお祝いのメールを送ったのですが、その冒頭に「拝啓ジュディス(あるいはHey Jude)」と書かれていたというのです。
でも、どうなんでしょうか。
これらの事実だけから、この曲のタイトルが彼女の名前にちなんだものと根拠付けるのは少し無理があるような気がします。
バーロウの話も、本当に彼がそんなことを言ったのかどうか、仮に言ったとしてもそれが事実だったかどうかは確かめようがありません。
メールにしても、ポールがちょっとしゃれっ気を見せただけなのかもしれません。
あくまでも、彼女の希望的な憶測に過ぎないような印象を受けます。
ポールが名前を考えるときに、意識的に、あるいは無意識に彼女の名前を念頭においたとも考えられますが、彼自身もそこまで明確に覚えてはいないでしょう。