亀田誠治ここにあり。映画「カノジョは嘘を愛しすぎてる」の音楽
「一目惚れって信じますか?」
はい、信じます。
いや、問題はそこではありません。
亀田誠治さんが音楽担当を務められた話題の映画、「カノジョは嘘を愛しすぎてる」を見てきました。
正直過剰な期待は抱いていなかったのですが、いちバンドマンとして見事にその予想は裏切られました。
とてもいい映画でした。今回はその映画についての感想を記したいと思いますが、若干ネタバレが含まれますので、これから見にいこうと楽しみにされている方は、その旨ご了承いただければと存じます。
もくじ
「カノジョは嘘を愛しすぎてる」とは?
元々は、青木琴美さんという漫画作家のコミックとのこと。
分類としては少女漫画に属する作品。
それを実写映画としてリメイクしたのが本作です。
人気バンド「クリュードプレイ」の元メンバーにして、バンドの全楽曲を提供する天才サウンドクリエーター:アキと、クリュードプレイの大ファンで、実は天性の歌声を秘めた女子高生:リコの恋愛を中心に描きつつ、随所に音楽業界の舞台裏やライブ映像を散りばめた、「恋愛×音楽業界×バンドサウンド」がコラボする意欲作。
アキとリコの最初の出会いの場面で登場するセリフが、冒頭の「一目惚れって信じますか?」そこから物語は動き出します。
主人公の二人
アキ(キャスト:佐藤健)
芸能人に関して全く詳しくないのですが、新進気鋭の若手俳優:佐藤健さんが演じておられます。
クリュードプレイのオリジナルメンバー(ベーシスト)ながら、とある理由によりデビュー時にバンドを脱退。
以降もバンドの全楽曲を手がけるサウンドクリエーターとして、中の人ではあり続けます。
「消費される音楽」を作り続けることに嫌気がさし、全てに対し不機嫌になっていたところリコに出会い、次第にデビュー前のように音楽制作を楽しんで取り組めるようになっていきます。
愛機はミュージックマン・スティングレイ。
リコ(キャスト:大原櫻子)
全国5,000人のオーディションから、大原櫻子さんという新人女優さんが大抜擢。
高校生3人バンドのVo&アコースティックギター担当で、女優さんながら抜群の歌唱力を誇りもはやヴォーカリストといって過言ではないほど。
ちょっと天然が入っているようなキャラ設定の女の子でそこがまた魅力的。
クリュードプレイの大ファンで、嘘の名前をついたアキを当のアキとは知らずに付き合い始めます。
後にアキの上司にあたるプロデューサーに見出され、「MUSH&Co.」のヴォーカルとしてデビュー。
作品の魅力1:映画館ならではの演奏シーン
最初は亀田誠治さんが音楽を担当するバンド関連の映画ということで、「亀田サウンドを映画館の大音響で楽しめるライブのような体験ができるのでは?」と思っていました。
が、これはある意味裏切られました。
それはそうですよね、映画館でコンサートホールのような大音量を出したら、回りのシアターは大迷惑ですものね(笑)。
しかし、映画クオリティの演奏シーンが大画面で見られるのは、映画館ならでは。
全体としては演奏シーンはそれほど多くはないので、もう少し長めに入ってたらもっと楽しめたかな?というのが個人的な感想です。
作品の魅力2:作中のアイテム
音楽関連の映画ですので、楽器や音響機器もたくさん出てきます。
それらの細部がとてもリアリティがあって、バンドマン的にはテンションの上がるポイントでした。
例えばアキのスティングレイ。
アキが14歳の誕生日に(25歳設定なので11年前?)ギターと間違えて父親が買ってくれた初めての楽器。
11年前くらい、たしかにスティングレイは流行っていたな~と思い出したり、もしかして亀田さんご本人のベース?と思ったり。
アキが楽曲制作に使っているのも、業界定番のProTools(バージョンまでは分かりませんでした。。)、リコのヴォーカルマイクもSHUREのBETA87A、リコのバンドがストリートで使っていたのはYAMAHAのTHRなどなど、バンドマン的に「お!」と反応するアイテムが随所に散りばめられていて、そういうのを探すのもお楽しみの一つ。
作品の魅力3:アキと瞬の友情
クリュードプレイのヴォーカル:瞬はアキと幼なじみで、中学?高校?からのバンド仲間。
アキが相談や報告をするのも瞬に対してで、また家に遊びに来るなど深い友情が感じられます。
物語のラストの伏線を引いたのも、瞬でした。
私も高校時代のバンド仲間は今も付き合いがあり、やはり特別な友情を感じる大切な仲間。その感じがうまく表現されていて、ぐっとくるものがありました。
作品の魅力4:ラストへの集約、その鍵を握る神曲
これは本当にネタバレになりますので、読みたくない方はここまででお願いします(笑)。
私は、「実は自分がクリュードプレイのアキだった」と正体を明かすのが、ラストなのかなと、見る前は思っていました。
ところが中盤ですでに正体を明かすというまさかの事態(笑)。
「じゃあ、どういうラストが待っているのかな?」そう思って中盤以降を鑑賞していました。
作品終盤、物語はクライマックスに向け、ある1点に集約していきます。
推理小説で言えば謎解きの場面、ここ如何で作品の評価が大きく左右される、重要な場面です。
そしてこの作品において謎解きにあたるのが、「R」というタイトルの、アキが書いた未発表曲。
それが流れた瞬間、私は全身鳥肌が立ちました。
亀田誠治という偉大なる音楽家に、完全に平伏しました。
「カメダは音を愛しすぎてる」そう叫びたくなりました(笑)。
「この作品の評価を左右する楽曲がこれから流れる」、シアターにいる誰もがそう注目したでしょう。
その注目に見事に応える楽曲・歌詞。この感動は、是非シアターで味わっていただければと思います。
入るのは若干恥ずかしい。。
お客さんは圧倒的に女性客、しかも女子高生や若い方が多く、なかなかバンドマン的には入りづらい雰囲気ではありますが、バンドマンなら十分楽しめる作品だと思います。
是非カノジョとのデートにいかがでしょうか。
上映予定時間を少し回ると客電が落ちますので、そのタイミングをねらってこっそり入るのもありですね!
ちなみに私は完全に浮いていて、かなりこっ恥ずかしい思いはしましたが、それを上回る感動は得られました♪
ライタープロフィール
ライブスポットラグ
平田 浩康
Live Spot RAGの平田浩康です。
15歳の時、音楽特にロックのカッコ良さに痺れギターとバンドを始めました。
生まれ故郷の高知県は、ライブハウスやコンサート会場も少なく生の音楽に触れる機会が少ない、当時は情報源も雑誌やCD、VHSビデオ(!?)という時代でしたが、音楽というとてもキラキラしたものに魅了され、勉強そっちのけでギターと音楽を楽しむ毎日でした。
大学進学から京都に移住し、大学では軽音楽部を卒業(笑)。
それまでは邦楽ロックや洋楽ハードロックを中心に聴いていましたが、先輩や同期から世の中にはもっとたくさんの音楽があることを知らされ、今では「いいな」と思えるものはジャンル隔てなく聴いております。
大学卒業後にRAGに入社、約6年のオフィスや約10年の音楽スタジオを経て、現在は創業39年の老舗Live Spot RAGにて勤務、主にプロモーション業務を担当しております。
日本トップミュージシャン達が奏でる「本物の音楽」に触れ、お客様に届けることで、あらためて音楽の煌めきを実感する日々です。
今でもギター、バンドはゆるく継続しており近年は今更ながら歌も歌ってみたりしています。
もうすっかりおっさんになってはしまいましたが、あの頃「音楽に描いた夢の向こう側」を、今後もみなさんと追っていければと思っています。