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【作詞入門】アイドル曲の歌詞の作り方。サビ以外にもっと注目してみよう!
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【作詞入門】アイドル曲の歌詞の作り方。サビ以外にもっと注目してみよう!

歌メイン、ライブメインにしているアーティストでさえ「楽曲が良ければ売れる」訳でもありません。

そんな意味ではアイドルはいろいろな可能性を秘めています。

演技もできない、歌もそこそこ、ダンスもそこそ、でも「とびっきりかわいい」だけで売れているアイドルもいます。

さらに言えば、かわいくもない、何となくの人柄だけ、コミュニケーションの能力、そんのような性格や才だけで売れているアイドルもいます。

「サビが勝負!」は定石通りの曲作りですが、最近のアイドルシーンではサビ以外でも十分勝負できる曲があります

今回はいつもよりも歌詞の角度からの分析は少ないですが、このテーマにスポットを当ててみます。

お手本神曲:私立恵比寿中学|サドンデス

作詞は今を時めく岡崎体育さんです。

定石外

アイドルに限らず歌謡曲の1つの定石としてAメロ→Bメロ→サビ2番→Cメロ→オチサビのようなカタチがあります。

「サドンデス」はその定石の外にある曲です。

この曲の進行をイメージで書くとAメロ→Bメロ→サビ→Cメロ→Dメロ→……です。

ここがサビかなと思うと、また後ろにサビ級の見せ場が出てきます。

それで、こっちがサビだったのかと思っていると、もっと盛り上がるパートが続きます。

聴いている人は「なんだこりゃ?」の初めての体験にハラハラドキドキすることでしょう。

アイドルファン固有の推し信奉な思いだけでなく、この曲を聴いたすべての聴き手の思考回路を止めようとする装置が働きます。

歌詞を書く者の一人として定番や定石に捕らわれていたなと、本心から反省させられた一曲です。

音楽の可能性と書いてしまえば安っぽいですが、エンターテイメントとしての音楽のすそ野はどこまでも広がっているのだなと思います。

本当のサビ

膝とかもはやガクガクに笑って窒息寸前

言葉の新しい波を感じさせるフレーズです。

思想性を正しく欠き、楽しみのみを追求しています。

この歌詞を含むAメロ(第一ブロック)はわりとハードな歌い風です。

それに続くBメロは

あなたの心の登校班の班長になりたい

あなたが来るまで待っていたい

若さを前面に押し出した昔ながらのアイドル風となっています。

この辺りを読んだ(聴いた)だけでは別段変わりない普通のアイドル曲です。

騒げ 叫べ 踊れ 歌え 命燃やせサドンデス!

ライブを意識したサビです。

歌詞的には目新しいものはありませんが、アイドルの王道を突っ走る気持ちのいいサビです。

曲の物語の流れはこう。

この曲の本当のサビはダンスサドンデスをする場面だと私は思っています。

歌詞はありません。

ファンが「オイッ オイッ オイッ……」と掛け声を送ります。

メンバー全員が全力で踊り、本当に倒れてしまう限界まで踊り続けます。

歌詞の無い世界一素敵なサビ、作詞をしていてこんな切ない思いになったことは初めてでした。

こういうのを本当の「仕掛け」「カラクリ」と言うのだと。

偏差値

偏差値と言うと何かと不快感を表す人もいますが、モノの質を高めるには役に立つ数字の一つだと思います。

楽曲は、よほどの大物プロデューサーでない限り、原案からPV制作の過程まで、大勢の人が「あーでもないこーでもない」と知恵を出し合って合同で創り出します。

たまたま歌詞を代表して書くとか、偶然鼻唄メロディーが採用されるとか、そのような偏りはあるものの、1人ですべての作業を仕上げて即発表なんてことは少ないでしょう。

見ていて これが私たちだ

Oh Yeah (Oh Yeah)

最後まで最後のサビも盛り上がります。

メロディーは一番のサビとは違うメロディーです。

そもそもこの曲には1番も2番といった概念がありません。

私立恵比寿中学といったアイドルグループの質の高さをもっと高める、そのことに専心している歌詞だとも言えます。

歌わないという沈黙の代償として得られることのできたたくさんの衝動。

このコンセプトとそれに応えることのできたメンバーの力です。

その意味ではこの楽曲「サドンデス」はアイドル偏差値の高い大人の涙の結晶だと言えるのではないでしょうか。

お手本神曲:Tick☆tik|FIVE JUMPER

作詞はMOCOさんです。

熱量

Tick☆tikはチクチクと読みます。

平仮名表記されている場合もあります。

アイドルと言っても色々あり「あはは、うふふ」と笑っていれば自然とファンの増えるグループもあれば、過激な水着を着て過激なポーズをとっても全然人気の出ないグループもいます。

その差は何でしょうか

私は前々からその差の1つは「熱量」だと思っています。

握手会をする、歌を歌う、グラビア一枚を発表する、どんな活動にしても熱が伝わらないと感動はしませんし、人は動きません。

それはアイドル自身が発する熱量ではなくて、相手に伝えられる熱の量を意味します。

どんなに頑張っていても相手に何も伝わらなければ残念ですが、それはゼロなのです。

この曲「FIVE JUMPER」の楽曲的なサビはちゃんと定位置にあるのですが、本当のサビは

ヘドバン来いや!

から始まる数十秒のヘッドバンギングだと思います。

私の個人的な嗜好は多分に加味されてはいますが、Tick☆tikのパフォーマンスの熱量はどのアイドルにも負けていません。

ある意味、あくせくした歌詞なんかいらないと思わせるシーンもあります。

このグループのメンバーの限られた資質を最大限に引き出すものの1つとしてこのヘドバンがあるのでしょう。

熱を少しでもアイドルから引き出すために、ファンに伝えるためにダンスや音楽、衣装や照明、舞台そして私たちの歌詞があります。

発売禁止を怖れずに曲を書いた歴代のシンガーをも手本とし、奇抜なアイデアでもベタな世襲でも、私たちは前向きに歌詞を綴り続けるのです。

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