【作詞入門】アイドル曲の歌詞の作り方。お祭りソング編
皆さんはお祭りの歌と聞いて何を思い出すでしょうか。
盆踊りの定番「東京音頭」でしょうか、美空ひばりさんの「お祭りマンボ」でしょうか。
今回はアイドルのお祭りソングに焦点を当てて作詞のヒントを繙いてゆきたく思います。
お手本神曲:夢みるアドレセンス|舞いジェネ!
作詞はオカモトショウさんです。
釣られる楽しみ
「釣り」という言葉があります。
フィッシングの魚釣りの意味ではなく、私は、人の興味を駆り立てて自分側へ巻き込む、といった意味で受け入れています。
「これは釣りだから関わらないでおこう」とか「分かってて釣られてあげるよ」の用法で大きくは外れていないでしょう。
良くも悪くもこの「釣り」の言葉、昔から使われていましたがネット文化と共にさらにその拡散のスピードを増しました。
まずこの曲名「舞いジェネ」って何かな?とファンならずとも釣られることでしょう。
最近はこの様な曲名で興味を集めるものが多くなってきました。
歌詞に
ヘイ!DJ止めないでマイ・ジェネレーション
止まらないオール・ナイト・ロング!(舞い舞い舞いFu!)
があるので、曲名は恐らくそれらを組み合わせた造語です。
古くは一世代二世代前のアイドル、太陽とシスコムーンの「ガタメキラ」も似たような要素がありました。
アイドルの曲の曲名は大胆なつかみの場でもあります。
もっともっと刺激的挑発的な曲名を付けて受け手の興味を駆り立てることも可能です。
視覚的な要素
近未来ディスコティックなサウンドと歌詞のあおりからしても「舞う」ことがこの曲の使命であるかのようです。
君の声聞きたい 相!逢!愛!
私たちの未来は(ヨイヨイヨイ良い!)
平明なリフレインも表現以上に効果的です。
それは漢字を変えた「相!逢!愛!」。
聴いても変わらない「aiaiai」が目に映るとまた違った叙情を呼び起こします。
曲は耳で楽しむものなのですから、視覚的な要素は聴覚には関係ないですが歌詞にはとても重要です。
そのくらいのアンテナを張って活字を選ばないと人の心に残る活字群をつかみ出すことはできません。
- 御願い
- お願い
- おねがい
- オネガイ
- onegai
では大きく違うと言うことです。
「舞いジェネ」は舞いたい世代、舞ってなきゃやってられないよ世代の略語でもあるのでしょう、と考えを巡らせるとファンにはそれだけでとても楽しい時間です。
Twitter、Facebook、ワイドショー誰もが御意見番
決まり文句はこう「あ~あ、終わってんなあ 笑」
薄霞の向うから聞こえるような繊細な歌詞でなくてもすてきな歌詞はすてきです。
TwitterやFacebookという単語は世相的な鮮度からすれば峠を越えた感はありますが、それでも若者のお祭り意識の中ではまだまだピンピンと跳ね打っている言葉です。
流行語でなくともツイッターに流れている言葉や独特のネット用語など、歌詞に使われていない言葉はまだまだたくさんあります。
それらを積極的に使うのも作詞家の幅を広げることになるでしょう。
お祭りソング
「お祭り」の本来の意味は神事、儀式を発端とする「祀(まつ)る」ですが、若者の「お祭り」は楽しいこと全ての総称です。
クリスマスもハロウィーンもちょっとしたパーティーもすべてお祭りです。
その意味ではこの曲もれっきとしたお祭りソングです。
思春期なんだもん 始まってすらないから
止まらないオール・ナイト・ロング!(舞い舞い舞いFu!)
言葉の一つ一つ感覚的な把握以上のとてもできた一節です。
オールナイトロングの言葉は使いたくても怖くて手の出せない単語の1つですがここでは濃密な意味もなく軽く使われています。
すぐ後の「舞い舞い舞いFu!」でバランスを取っています。
繰り返しのリズム良さに歌詞が気持ちいいくらいに載っています。
これは何度も言う「作詞者が作曲者であることの強み」です。
私もたまに作曲をさせて頂くのですが、歌いながら歌詞を書くのは非常に気持ちがいいです。
思った歌詞にメロディーを合わせることができる、自分の胸中と表出できる表現に誤差が少ないのでストレスもありません。
作曲しない作詞家さんもこれからは音符と言葉の距離の把握がますます試されるのでないでしょうか。
お手本神曲:LinQ|ハレハレ☆パレード
作詞はナオト・インティライミさんです。
よくある言葉をメインに使う
四文字熟語はアイドルの歌詞によく登場します。
ボカロの曲でも四文字熟語をたくさん目にします。
五七調や、都々逸の節回し、三々七拍子など日本人の遺伝子、体内に沁みついた独特のリズムがある種の心地良さを引き出すのでしょう。
俳句、短歌の短詩型の世界でもそれらのリズムと響きは長きに渡り研究課題となっています。
お茶の子サイサイ あたりきシャリキ 例え火の中水の中
せっせっせっーのよいよいよい
特別にアイドルの歌詞を感じさせるような言葉ではありませんが、メロディーに乗った途端不思議と素晴らしい歌詞のように聞こえてきます。
これらの言葉に飽きないのは曲全体がお祭りモードに入っているからです。
しっとりした曲なら「なんだろ?」的な歌詞でしょう。
よくある言葉を怖れなくメインに使っています。
たくみにメロディーに乗せています。
そこにはノウハウや理論の無いプロの技術だけがあります。
この曲はスピードがあるので歌詞にすると活字の量も多いです。
メロディーに乗り切れていない語尾もスピードが解決しています。
そのような多分なごり押しにも作詞の新しい手法が隠されていそうです。