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ドラマーが本当に欲しい楽譜、マスター譜とは
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ドラマーが本当に欲しい楽譜、マスター譜とは

音楽を演奏する上で、楽譜の存在はとても重要です。

自分達で0から作り上げたオリジナル曲も、メンバー全員が演奏内容を認識している曲、セッションなどに使われるスタンダードナンバーや、全員で演奏した事があるもしくは知っている曲ならば、譜面は不要でも良いと言えるでしょう。

ですが、メンバーの1人でもその曲を知らない、演奏したことがない場合、楽譜というものはとても大きな効果を発揮します。

今回の記事は、そんな楽譜にまつわるドラマーあるあるであり、できればドラマー以外の方にも読んでいただきたい内容です。

ドラマーにとって楽譜とは?

ドラマーが本当に欲しい楽譜、マスター譜とはここで言う楽譜とは、「マスター譜」「マスターリズム」なんて言い方が一般的な、メンバー全員で共有する、楽曲の全体図を記したもののことです。

などが書いてある、もしくは書き足せる譜面ですね。

僕がレッスン生だった頃に、師匠からマスター譜を初めて見せてもらった時は、衝撃的でした。

だって、真っ白だったんですからね!

でも、必要なことは全て書いてあり、足りないものは自分で書き足せる機能的な譜面であることも教えてくれました。

ドラマーが欲しい本当の楽譜とは?

ドラマーが本当に欲しい楽譜、マスター譜とはよく、「楽譜をください」と言うと、「ドラム譜は書けない」と返されます。

我々ドラマーが本当に欲しい楽譜は、先述の「機能的なマスター譜」です。

Aメロが何小節あるのか?などを書き記したものが欲しいだけで、バンドスコアに載っているような「フレーズ譜」ではありません。

逆に、フレーズがガッチリ書いてある楽譜を渡されて、喜ぶドラマーが何人居るか……。

フレーズが書いてあることが、悪いことではありません。

作曲者の意図する、希望するフレーズを叩けなければなりませんが、1曲まるまるフレーズが書いてあると、自分でなくても良いのでは?とドラマーは感じます。

そこに、そのドラマーに対してのリスペクトは感じません。

1番困るのは、歌詞の上にコードが書いてある、いわゆる「歌本」と言うやつです。

アレは、ハッキリ言って不要です(苦笑)。

聞いた話ですが、作曲家として大成した方が、若い頃に聴いたスティーブ・ガッドのドラムソロが忘れられず、そのフレーズを楽譜に起こし、スティーブ・ガッドを呼び、レコーディングで叩かせたそうです。

彼は難なくその指定されたソロをやったそうですが、一言も発さず、スティックをボキッと折り、憤慨して出て行ったそうです。

特に、ソロなんてものは、その時の感情・熱量がモロに反映されるセクションです。

ユニゾン箇所があるならわからなくもないですが、全編フレーズが書いてあるのは、ある意味そのドラマーに対して失礼だと、僕は考えます。

譜面が無い場合、ドラマーは何をしているか

僕の場合ですが、音源を聴きながら、採譜をしています。

何度も書きますが、上記に書いてある、ドラマーとして欲しい情報を自分で起こします。

この作業は、実はとてつもない労力なのです。

採譜には、少なくとも1曲につき2時間はかかります。

曲数が少ないもしくは、特に大きな仕掛けも無い、早い段階で音源だけ入手できている場合なら時間も短縮できて労力も軽減されますが、切羽詰まった時期や状態で譜面が無いのは、痛恨の一撃です。

譜面を書き終わると、なぜか知りませんが「演奏できる気になってしまっている」という、とても恐ろしい事態に陥るケースがあります。

僕は、コード楽器ができないので、コードに関する採譜はできませんが、ドラマーに渡す譜面にも、コードが書いてあると、尚の事うれしいです。

コードの事について、他のパートが話している最中、多くのドラマーが仲間外れになります。

また、コードが書いてある事で、曲の流れも掴みやすくなります。

コード理論は知らなくても、音階が違う事くらいは理解できるはずですから。

譜面に強くないドラマーの防御策

コレは、もうかなり早い段階で音源だけを調達して、体に染み込ませるしかありません。

かの有名なビーストドラマーデニス・チェンバースは、どうやら本当に譜面が読めないようですね……

しかし、難解な曲も2~3回聞けば、覚えてしまえるようですね。そんなアプリがあったら僕の脳にダウンロードしたいっす(笑)。

譜面における優劣

ドラマー

譜面が書ける・読めるから優等生。

譜面が書けない・読めないから劣等生。

なんて事はありません。

そりゃあ、譜面は書けたり読めたりできるに越した事はありませんが、依存症と言うのも問題ですし、偉いわけでもありません。

ドームで演奏するプレーヤーが譜面を見ているでしょうか?

当然、ホールクラスで演奏する場合は、何回もリハーサルをするので、譜面を見ないと言うのが当たり前のスキルになります。

JAZZ系ミュージシャンの「譜面が有れば何でも弾きますよ」って言う、アウトローな感じも憧れですよね。

しかし、譜面の有無・読譜できるかできないかではなく、その曲を複数の人間と美しく創り上げるにはどうしたら良いか?が、根本に無いといけません。

その、思いやりの気持ちが有るか無いかで、できあがった曲やアンサンブルは雲泥の差になります。

譜面を書けない人・渡せない人

20世紀初頭に横行していた「ドラマーはただ叩いてりゃいい!」なんて横暴な時代もあったようですが、ドラムはバンドの王様です。

主だってリズムやグルーヴをつかさどるパートです。

メインボーカルやギターが偉い時代は、もはや昔の話。

今は、リフものやドラムボーカルも珍しくありません。それだけ重要なポジションと認識しているにも関わらず、譜面となるとズサンな人は、残念ながら多いのが現状です。

参加ミュージシャンの腕を試したい・フリージャズの様に、カオスな雰囲気を求められているなら、むしろ譜面はあえていらないと言う選択肢が正しい判断と言えるでしょう。

仕掛けの多い、POPSやROCK……いつもボーカルの後ろに隠れてしまい、ギターの華やかさを影で支えているにも関わらず、譜面すら配られない。

そりゃ、温厚なドラマーも怒っちゃいますよね(笑)。

譜面いらずのドラマーの光と影

JAZZ系などのスタンダードに詳しい方は「次、カンタロープ、その次に枯葉ね」って話だけで済んでしまいます。

また、歌謡曲や演歌系は、大まかな流れやパターンがあるので、そこを読み取る事ができれば、ある程度は対応できます(あとは曲を知る事)。

しかし、コレはSessionにおいてのみ許される所業であって、お客さんからお金を頂いているライブでは、全くもって通用しません。

そもそも、ミスや事故なんて起こして良い理由はありません。

譜面いらずで通ってしまうドラマーって譜面を配らない癖が付いている方からすると、とても重宝(都合良い)されるドラマーと思われてしまうので、見えない落とし穴かもしれません。

最後に

誤解の無いように書きますが、僕個人は譜面を頂けない現場の方が多いです。

早目に音源を頂き「採譜する労力を踏まえた報酬・リスペクト」があって、初めて成立するものと考えます。

譜面を頂けないから、その人は悪い人とは思いません。

しかし、譜面を頂けたなら、それまでAマイナスだった評価が、Aプラスになり、俄然(がぜん)頑張ろう!って気持ちになります。

5曲あったら、10時間掛かりますからねぇ……(汗)

譜面を渡せない人の中には、どのパートであろうが、確実にリードしてくれる方がいます。

リーダーシップを取れるメンバーが、1人でもいると、譜面問題は、そんなに気にはなりません。

上から目線と感じるかもしれませんが、ドラマーの譜面問題は、それだけ根深い死活問題なのです。

ライタープロフィール

ドラマー

中村"NOBU-san"暢晃

乙女座 AB型 12歳の秋、両親の勧めでドラムを始める。

この頃は、音楽の楽しさが理解出来ず、塾に行く感覚で通い始める。

中学生の頃に課題曲でやった、Suzanne VegaのLukaという曲から、面白さ・凄さを見いだす。

高校生の頃は、多数バンドに参加(ドラマーが僕しか居ないという事態)。

ここでも、ドラムの重要性を痛感する。

高校卒業後、専門学校に入学し、ドラム、ラテンパーカッション、ドラムコー、人間学を学ぶ。

また、この時期に出会ったBlack Musicは、僕の一生を左右するくらいの衝撃の出会いだった。

現在は、POPS、FUNK、ROCK、歌謡曲、演歌、JAZZ、HARD ROCKなどジャンルに納まらないLIVE活動やサポート活動の他、インストラクターとしての顔も持つ。

また、イベント主催やミュージシャンコーディネーター(インスペクター)としても、高い評価を得ている。

演奏サポートやLesson希望の方は、Mailにてお問い合わせ下さい。

ウェブサイト:http://nakamuranobuaki.org

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