The Beatles(ビートルズ)という魔法の名前はどうやって生まれたのか?
ビートルズ。
何とシンプルかつ覚えやすい名前でしょう。
でも、実はこれ、彼らが作った造語なのです。
今回は、この名前がどうやって生まれたのかについてお話しします。
バンド名を決めるのは悩ましい
バンドを組んだ経験のある方ならお分かりいただけると思いますが、バンド名を決めることって本当に悩ましいですよね。
メンバーからいろいろ意見が出されますが、最終的には1つにまとめないといけない。
バンド名がダサいと感じられると、演奏の腕まで疑われてしまいます。
ビートルズが世界的なバンドとなったため、音楽に全く興味のない人ですらビートルズという言葉自体を知らない人はまずいないでしょう。
バンド名だけで音楽に興味のない世界中の人にまで覚えられたのは、彼らが最初かもしれません。
最初からビートルズではなかった!
ビートルズというバンド名は最初から存在したわけではなく、いくつかの変遷(へんせん)を経ています。
そもそものスタートは、リーダーのジョン・レノンが1957年に16歳で結成したアマチュアバンド「クオリーメン」でした。
このバンドは、彼が通学していた高校の同級生で結成されました。
その時、バンド名をどうするかを全員で話し合ったのです。
ジョンが通学していた高校はクオリーバンク高校といい、その校歌に「クオリーメン」という歌詞が登場します。
クオリーメンというのは、石を切ったり加工したりする石工のことです。
同級生たちは、これをバンド名に採用しようとしましたが、ジョンは校歌を引用するなんてダサいと反対したのです。
しかし、多数決で決められてしまいました。
もっとも、彼にとってはとにかくバンドを結成することが重要で、バンド名などは別にどうでも良かったのです。
なお、この前に「ブラックジャックス」というバンド名が存在したという説もあるのですが、これはジョンが親友のピート・ショットンと2人でフザけて付けた名前で、バンド名ではなかったようです。
このクオリーメンには後にポール・マッカートニーとジョージ・ハリスンが参加しましたが、プロとして最後までジョンと行動をともにしたのは彼ら2人だけで、他のメンバーは次々と入れ替わったり脱退したりしました。
その頃の彼らが演奏していた音楽は、当時流行していたスキッフルというもので、身近にある日用道具(例えば洗濯板など)を使って音を出して歌を歌うというスタイルでした。
これだと楽器の演奏ができなくても、誰でも気楽に音楽が演奏できたのです。
バンド名の変遷
その後、バンド名は、ジョニー&ザ・ムーンドッグス、ロング・ジョン&シルヴァー・ビートルズ、シルヴァー・ビートルズなど、どんどん変わりました。
初期の名前を見ても分かる通り、この頃はまだジョンのワンマンバンドという感じでした。
ようやく、1960年8月にドラマーとしてピート・ベストが加入し、ビートルズというバンド名に落ち着いたのです。
バンド名を変えさせられた?
ビートルズがメジャーデビューする前の下積み時代に、ドイツのハンブルクへ出稼ぎに行ったお話は以前にしました。
1961年、トニー・シェリダンという売れっ子の歌手が、スコットランド民謡の「マイ・ボニー」という曲をロックにアレンジしてレコーディングするため、ちょうどハンブルクに来ていたビートルズにバックバンドとしてオファーしたのです。
彼らは喜んで引き受けたのですが、ビートルズという名前をクレジットすることにポリドールレコードが難色を示しました。
なぜなら、ビートルズという名前は、性的なことを意味する言葉と発音が似ていたからです。
それで、ビートブラザーズという名前に変えさせられたのです。
この曲は、ドイツのシングルチャートNo.5を獲得するほどヒットしました。
そして、ビートルズの地元リバプールでファンだった青年が、ビートルズがレコードをドイツで出したらしいという噂を聞き、リバプールにあったNEMSレコード店に買いに来たのです。
しかし、店長は、ビートルズという名前もそのレコードのことも全く知りませんでした。
レコードに名前がクレジットされていないのですから、知らなかったのも当然だったでしょう。
その店長こそ、後にビートルズを世界的なバンドとして成功させた名マネージャー、ブライアン・エプスタインだったのです。
ビートルズという名前の誕生
では、ビートルズという名前はどうやって生まれたのでしょうか?
実は、ビートルズというのは造語で、ジョンと元メンバーだったスチュアート・サトクリフの2人が考えた名前です。
ジョンは、1950年代後半に活躍した、アメリカのバディ・ホリー&ザ・クリケッツというバンドのリーダーであるバディ・ホリーをとても敬愛していました。
彼は、自分で作詞作曲をし、なおかつそれを自分のバンドで歌いながら、ギターを弾いて演奏したのです。
ギター2本とベース、ドラムスという4人のシンプルなスタイルこそ、まさにビートルズの原型ともいえるスタイルでした。
彼らのクリケッツという名前は、昆虫であるコオロギという意味です。
そして、もう1つ、イギリスの伝統的なスポーツの名前の意味もあります。
つまり、2つの意味を掛け合わせていたのです。
ジョンは、バンド名に2つの意味を持たせるというアイデアを非常に気に入り、また、昆虫の名前を使うことにも魅力を感じました。
それで、何か昆虫の名前でなおかつ2つの意味を持つ名前がないかと色々と考えたのです。
すると、メンバーのサトクリフがマーロン・ブランド主演の「The Wild One」という映画に出演したリー・マーヴィンがバイクに乗る女の子たちのことを「beetles」と呼んでいたことにヒントを得ました。
英語でビートルというとカブトムシなどの甲虫類を意味します。
しかし、どうやら英語圏ではあまり気持ちの良い名前ではないようで、他の名前にした方が良いとアドバイスする人もいました。
そこで、ジョンは、スペルの中の1文字であるeをaに変えてBeatlesとしたのです。
もちろん、音楽のbeatの意味を持たせたのです。
ポールもこの考えに賛成しました。
やっと、ここでビートルズという名前が生まれたのです。
ジョンは、この名前をなかなかシャレていると気に入りました。
人が初めてビートルズと聞くとちょっと気持悪いという印象を受けるが、スペルを見るとそうかbeatと掛け合わせているのだなと分かって、なるほどと思わせるからです。
バンド名がいかに重要かを世の人々に明らかにした
断言はできませんが、ビッグ・アーティストでバンド名に造語を使ったのは、おそらくビートルズが初めてではないかと思います。
その後、彼らの影響を受けて造語をバンド名にするグループが次々と現れました。
例えば、Led Zeppelin(レッド・ツェッペリン)は、「going like lead Zeppelin」(ポシャるという意味の慣用句)をもじったものです。
そして、この名前はバンド名を覚えやすくしたという重要な意味を持ちました。
というのも、それまでのバンドはメインボーカルが1人いて後はそのバックバンドという構成がほとんどだったからです。
ですから、必然的にバンド名もバディ・ホリー&ザ・クリケッツのような長い名前になっていました。
しかし、これではなかなかバンド名を覚えてもらえません。
ビートルズという単語1つでシンプルな名前はとても覚えやすいものでした。
そして、もう一つの重要な意味として後にFAB4(ファブフォー「素晴らしい4人組」という意味)と呼ばれたように、ビートルズは誰がメインということもなく、全員がチームとしてバンドを構成しているのだ、ということをはっきりと世の中の人々に示したのです。
ライタープロフィール
ビートルズの熱狂的ファン
和田晋司
大阪府出身 ビートルズのファン歴ウン十年。
色んなものに手を出しましたが、唯一続いている趣味がこれです。
ビートルズの語り部として彼らの偉大さを後世に伝えていきたいと思っています。
ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログ