進化したVOCALOID5でオリジナル曲を作ってみた
VOCALOID5発売から少したちますが、なかなかVOCALOID5のオリジナル曲は増えていないようです。
そういう意味では、VOCALOID5オリジナルというカテゴリーは、追究するには面白いジャンルではないかと思ったりします。
前回はV5の標準ライブラリだったAmyを使って英語歌唱データに挑戦してみましたが、今回はVOCALOID IAでオリジナル曲に挑戦してみました。
基本的なセッティング
今回は過去に作成したオリジナル曲のリメイクをIAに歌ってもらいます。
VOCALOID4まではかなり大胆に調整をしないと抑揚が付けにくかったり、奇麗に聴かせるには熟練が必要でした。
今回はVOCALOIDが苦手としていた抑揚やウィスパーボイスなどを織り交ぜた歌を作ってみます。
基本的なセッティングは次の通りです。
Characterの設定は少しだけ高めにして、少しAirを上げることでエアリーさと存在感の両立を目指しています。
これらのパラメーターは歌唱の途中にも結構手を入れることになります。
IAはVOCALOIDの中でも性能の高いライブラリですので、VOCALOID5の機能とIAの能力でどこまでできるのか細かく調整をおこなってみました。
アクセントをつける3つのパラメーター
旧バージョンのVOCALOIDから大幅に表現力が向上し、調整も簡単になったのが抑揚の制御です。
旧バージョンではベロシティとダイナミクスの調整で抑揚をつけても強弱感の表現は難しいものでした。
VOCALOID5では新しいパラメーターによって、はっきりとした強弱が付けられるようになりました。
1つはExciterでこのパラメーターを上げることで声のハリが出ます。
ベロシティの高い歯切れの良い発音と合わせれば頭のアクセントになりますし、フレーズ中にアップダウンさせることで強弱によってよりリズムを強調できます。
2つ目はEmotion、これはDynamicsとは別に発声タイミングに対して抑揚と長さの調整をダイレクトにおこなえます。
エモーションツールでアクセントをつけたい部分を強調することで音量とスピード感が変化して強調されるようになります。
画像のハイライト部分をオンにするとピアノロール上でエモーションツールが使用できるようになります。
3つ目はDynamicsで、単純に基本の音量を上下させられます。
ほかの音源におけるExpressionと同じような振る舞いですが、VOCALOIDの場合は、弱くなる部分でDynamicsを下げる方向の調整や、音価を短くしたい時にDynamicsで音を切るような使い方に向いています。
この3つを組み合わせることで抑揚とリズムをコントロールするように調整してみました。
ビブラートは歌唱スキルで
VOCALOID4までは、Vibrato DepthとRateでコントロールする方法と、全てのビブラートをカットして手動でPitchBendパラメーターを書く方法がありました。
しかし、VOCALOID5では歌唱スキルによってスタイル別の歌い方の特徴をある程度表現してくれます。
例えば、Soulfulを選択すると若干のしゃくりや強めのビブラートが、idolを選択するとやや不安定なピッチとヒーカップっぽい跳ねが末尾についたりします。
それぞれSkillとAmountが設定でき、Skillでは適用カ所や範囲が変化し、Amountはビブラートの揺れの大きさなどが変化します。
今回はスローな曲なのでBalladを選択しました。
Amountを上げ過ぎるとビブラートが邪魔になる部分があるのでAmoutは少し低めにしてあります。
歌唱スキルによっては発音の途中に音程の跳ねが入ったりして扱いにくい部分が出たりしますが、これはエモーションを下げることによって解消できます。
ウィスパーボイスを実現するAirとBreathiness
ウィスパーボイスは、旧バージョンでは個別ライブラリで対応されていましたが、VOCALOID5ではパラメーターの調整でウィスパーボイスが実現できます。
AirパラメーターとBreathinessパラメーターを調整することで、吐息混じりの声を簡単に作れました。
今回の曲ではブレイクの手前のフレーズに使用しています。
コツというほどテクニックも必要なさそうなのでこれはぜひ試していただきたいと思います。
歌唱の結果はこちら
ここまでの調整を反映した結果、こんな歌唱になりました。
前回のさよならバイスタンダーからかなり進歩できた気がします。
VOCALOID5はVOCALOID4より格段に良い結果が得られるようになりました。
それも以前より簡単にできるようになったのですから、使う側からしたらうれしい限りです。
とは言え、とっつきにくいインターフェースとマニュアルや参考書籍の少なさはいなめず、まだ初心者にはハードルが下がったとは言いにくい環境です。
その点ではライバルであるCeVIOから学ぶ点も多いと思いますし、今後のアップデートやより素晴らしいライブラリの登場で解消されていくことに期待をしたいですね。
ライタープロフィール
DTMer
みるくここあ
元IT技術者。
ウィンドシンセを使います。
VOCALOIDやCeVIOを使って曲を作ってみたり、ボーカルを迎えて曲を作ってみたりしています。
元々楽器の練習用にオケを作るだけだった半端なDTMerでしたがVOCALOIDに出会い、その変遷に付き合っていくうちに深みに嵌っていたただの音楽好きです。
VOCALOID 2 MegupoidとVOCALOID 3 IA、そしてCeVIO Creative StudioのONEを使用しています。
ウェブサイト:http://milkcocoa.org
Twitter:milkcocoa_org