【Qactus開発者が語る】「指一本で弾くこと」からビギナーは何を得るのか
「挫折者をゼロにする補助ツール」、Qactusに対して、「ギターを簡単にするオモチャ」という誤解を持っている方を見かけることも多いです。
今回は、Qactusに隠された挫折を防ぐ秘密を少しご紹介したいと思います。
もくじ
「指一本でコードが鳴らせる」についての正しい解釈
Qactusに備えられた第二番目の能力「初期段階の困難を乗り越えるための機能」のうち、「指一本程度でコードが鳴らせる」という特徴に関して、安易な先入観でネガティブなイメージを持つ人がまれにいるようです。
たとえばこんなコードフォームがあります。
あるいはこんなコードも。
これらはギターで普通によく使うコードで、経験者は寝てても押さえられるフォームですが、まだ初期段階を越えていないビギナーはそれなりに苦労します。
各弦がきちんと鳴らせるかどうかはひとまず置いといて、それ以前の段階の話をしますね。
ビギナーにとっての、運指の壁
その段階のビギナーは、これらのポジションにすべての指を「1アクション」で置くことができず、ひとつひとつのポジションをひとつひとつ順番にぎこちなく押さえにかかり、そしてすべて整った時点でようやくジャラーンとはつ弦する、という非音楽的な「作業」をします。
これはひとつの上達のステップなのでしょうがない。
いきなりすべてのカ所に指がポンと乗せられるスキルがまだない訳ですから。
当たり前ですが、この段階ではビギナーは何か曲を奏でるといった楽しい感覚を味わうことはできません。
この壁を早期に越えられればよいのですが、このつらい期間があまりに長いと、やはりくじけてしまうビギナーがドドドドッと出てきます。
さて、彼らがギターを本格的に嫌いになり、永遠にギターを放り投げてしまう前に、仮に、Qactusを試すことにしましょう。
最初に出てきたほうのコードフォームが、Qactusによってこのように指一本で鳴らせるようになります。
せっかくなので、もうひとつのほうのコードも。
どちらもQactusの機能のおかげで指一本で演奏できる状態になりましたね。
ちなみに、どんな人もスマホをいじる時(画像の拡大縮小のような指二本の特殊な操作を除き)基本的には指一本程度で文字入力したりそのほかさまざまな操作をしたりしますよね。
つまり、指一本をお目当ての場所にポンと置くことぐらいなら誰にでもできる訳です。
これで先ほどの挫折要素はいったんは回避できたことになりますが、指一本でコードが押さえられるからといってギターが簡単だと言っている訳ではありません。
「コードを押さえる」というのは、単に「各音程を準備する仕込み作業」に過ぎず、ギターを演奏する上で本当に難しいのははつ弦つまり「弦を鳴らして音楽にすること」ですよね。
後者こそが「ギターに命を吹き込むアクション」である、ということをきちんと知っている経験者なら、前者の作業を多少簡略化したとしてもむしろギター上達のステップとして有効な方法であり、簡略化を避けたビギナーが当たって砕け散るよりははるかに有意義であることぐらいは想像できるはず。
「ギターを簡単にする」のではない
ギターというのはザックリ言うと「木と針金を鳴らして音楽にするもの」なので、何らかの音は出せたとしてもそれが「音楽」になっているとは限りません。
風の強い日に剥がれかけたトタン屋根が発しているあの音が「音楽」ではないのと同じで、その原始的な木と針金で「音楽にする」ためには演奏者の心やスキルが要るのです。
この心やスキルを磨くためにQactusが、いったんその煩わしい「作業」を軽減して差し上げたに過ぎない訳です。
「音楽にする」という非常に難しくて面白いものを最初からきちんと味わい、遊んでいるうちに運指も含めてスキルアップし、そしてあの5人に4人が越えられない憎き壁を確実に乗り越えましょう、とQactusは言っているのです。
Qactusの「指一本で弾ける」というメッセージは、「ほら、ギターは簡単でしょ?」ではなく「ギターは難しい、だから面白い」なのです。
ギターの難しさを知っている人なら前者のような誤解をするはずはないと、私は常々そう信じています。
なぜならギターの本当の難しさは、はつ弦にあり、だからこそ多くの人々にとっての「利き腕」がそれを担っている訳ですよね。
演奏力だけでなく、正しくギターの難しさを知るのにもそれなりのスキルが要ります。
実は、一見上手に弾けてるように見える人でも、なんとこれに気付いていない人というのは、社会人プレーヤーには案外多いのです。
月並みですが、やはりどんな楽器も奥が深いんです。
Qactusのフォーム、通常のフォーム
そんな世の事情もあり、「指一本で弾ける」のQactusの機能に関して、まれにネガティブな意見が出ることがあります。
「Qactusで指一本でコードが押さえられるようになっても、普通のコードをまた覚え直さなきゃいけないんじゃないの?」といった声をSNSなどで時々見かけるのですが、このような安易な先入観で彼ら自身のチャンスを逃してしまうのは気の毒なので、きちんと説明します。
先ほどのコードフォームを使って進めましょう。
これに対し、Qactusだと
こうなりますね。
ギターに挫折しそうになり、Qactusにすがりついてこの指一本のフォームを覚えたものの、Qactusを卒業したらまた覚え直さなきゃいけない、と思った皆さん、よく見てください。
Qactusのフォームは必ず、本来のコードフォームのポジションのうちの一カ所である、というところに気付くはず。
もうひとつのコードのほうでもチェックしてみましょうね。
これに対し、Qactusを使うと
こうなりますよね。
よく見てみると、やはり本来のコードフォームが省略されただけの「指一本」だということが分かるはず。
よっぽど座標が苦手だという人のために、念のため、
この赤いところがつまり、Qactusの「指一本」のカ所だということです。
「覚え直す」のではなく「積み重ねる過程」に過ぎないということにきちんと気付かないと、何より自分自身にとって最後の復活のチャンスを失うことになります。