大切な機材を守る。ラックケースの選び方
ラックタイプの機材は高価なものが多いですし、裸ではなく保護用にやはりケースは欲しいところ。
またいくつも組み合わせて使うことがほとんどですので、機能的なサイズでパッケージしたいですね。
より使いやすいように、各種ケーブルのルーティンを最適化したパッチパネルなども腕の見せ所ですね。
そこで今回は、ラックケースについて取り上げてみたいと思います。
ラックケースが必要となる時
エフェクトボード程は誰もが通る道ではないとしても、ある一定のバンドマンは、「ラックケース」を必要とするシチュエーションに遭遇することもあるでしょう。
- ラックタイプのプリアンプやパワーアンプを導入した
- ワイヤレスシステムを導入した。
- ラックタイプの音源モジュールを導入した
- 音響用にグラフィックイコライザーやリバーブを導入した
- レコーディング用にオーディオインターフェースやマイクプリアンプを導入した……など
憧れのラックケース
今も存在するのでしょうか。私が高校生くらいの時には存在した、エフェクターは「コンパクト派」か、「マルチ派」か「ラック派」かで争う、ほぼ全てのバンドマンを巻き込んだ暑苦し過ぎる論争は。
高校生の頃の私はコンパクトを数個所有するしかないエフェクト弱者、その論争にはハナから蚊帳の外でしたが、高校を卒業する頃に友人が手に入れたBOSSのハーフラックマルチに度肝を抜かれました。
当時ギタリストにとって必要なあらゆるエフェクターが網羅され、マニアックなパラメータやルーティンが自由度高く設定可能、専用のフットコントローラーでパッチ切替もお茶の子さいさい、そんな夢のようなマシンが高校生でも何とか手に入れられる価格でしかもハーフラックサイズ!
現在の最新鋭の機器からするとおもちゃみたいな音だったとは思うのですが、当時の私達には黒船のようなインパクトがありました。
「いつかはラック式のプロセッサを所有してみたいものだ」若かった私はそう思ったものであります。
スタジオに、ギターのハードケースといかついラックケースを持って現れる。
何となくそんなことが、かっこ良く思えたのです。
「めちゃめちゃロックやないか!」と。
今となっては荷物は極力減らしたい、軽いセミハードケースにオーバードライブ1個くらいで済ましたい、すっかり精神は横着化し肉体は虚弱化してしまいましたが「固いもの」「重たいもの」「いかついもの」にロックを感じる心は、バンドマン男子の基本スペックではないでしょうか?ないですか(笑)。
ともあれ、バンドマンたるもの、楽器ケースを手に入れ、エフェクトボードも手に入れたら、次に手に入れるべくはトートバッグでもTUMIのスーツケースでもありません。
やはりここは屈強なラックケースを手に入れ、ピクニックの際にはお弁当をマウントして持ち出しましょう。
ラック式の機器
世の中には様々なラック式の機器が存在します。
横幅19インチというサイズに収められたそれら工業規格品のうち、バンドマンが関わるのは主には以下のような機器かと思います。
楽器系
アンプ、プリアンプ、パワーアンプ、エフェクター、チューナー、ワイヤレスシステム、音源モジュール、電源モジュール……など
PA系
パワーアンプ、イコライザー、リバーブなど各種プロセッサー、CDプレイヤー、チャンネルディバイダー、ラック型ミキサー、ワイヤレスシステム、電源モジュール……など
REC系
オーディオインターフェース、レコーダー、マイクプリアンプ、コンプなど各種プロセッサー、キューシステム、ラインミキサー、電源モジュール……など
たくさんありますが、その中の一部に関わる方もおられるでしょうし、ほとんど全てに関わる方も職業的にはおられるでしょう。
これらの内必要なものを最適な組み合わせで、ラックケースに収めていきます。
サイズ
ラック機器のサイズ、横幅は通常19インチです。
その半分のハーフラックサイズという機器もあり、専用のマウントパネルを使うことで19インチサイズでマウントできます。
奥行きは機器によって様々ですが、びっくりするくらい短いものもあります。
複数機マウントする場合、並びによってはジャックにアクセスできないという惨劇も発生する可能性がありますので、並びはきちんと考えましょう。
また、ケースの奥行きにも短いもの長いもの存在しますが、収めるべき機器がきちんと収まる、ケーブルを挿したままにする場合などはプラグの分も計算に入れて選択しましょう。
高さは、U(ユニット)という単位で1U=約44.5mmです。
機器自体は1U〜大きくても4Uで、ラックケースは1U〜大きなものは24Uとかもあり、特注すれば何Uまでも作ってもらえると思いますが、あまりに大き過ぎると実用的ではありません。
ケース自体に素材により結構重量がありますので、マウントする機器の重さとケースの重さ・移動範囲や移動手段に鑑み高さを選択しなければいけません。
パワーアンプなどトランス系は発熱量も多いので、冷却用に空きベイを作っておいた方がいい場合もあります。
素材の種類
FRP / 塩化ビニール
最も良く見るタイプではないでしょうか。
いかにも質実剛健(しつじつごうけん)という感じで、高い強度・耐久性を誇ります。
スタックしても安定感があるので、多数のラックを車載して運搬する場合も安心。
ただ、結構重いです。
プロの音響の現場ではほとんどこの素材が使われていますが、パワーアンプが4基も5基もマウントされた12Uオーバーのケースを見たら、見なかったことにしたいレベル、腰痛をお持ちの方は決して近づいてはいけません。