まだFコードで消耗してるの?ギターリペアでこんなに弾きやすくなる!
中古で買われたアコースティックギターのナット溝調整&サドルの弦高調整をしました。
今回はお客様のご協力もあり「あまりに状態が良くなったことに感激したので自分のような初心者にギター選びの参考の記事になるように書いてほしい!」とのご要望があったので書かせていただきました。
つまずきやすい!最初のギター選び
「ギターをはじめよう!」と決心をした際、まずは本体の購入からです。
周りに詳しい人が居なければ当然情報はゼロ、今はネットがあり調べれば情報が出てきますが知らない状態からのスタートです。
まず専門用語は意味が分からないので、調べた所で何を買ったら良いの?となることかと思います。
分からなければ実際に楽器屋に行き店員から話を聞くのもオススメです。
今はかなりの低価格帯でも弾く分に問題がある固体は少なくなりました。
昔は「安物=問題有り」の物が多く本当に大変な時期で、安い物はかなりの順反りネック・弾きにくいので弦高を低くすると音が詰まる位の荒いフレット精度と、弾くに耐えない状態の物が多かったです。
調整等の精度は初期段階では甘い物が今でも多いとは思いますが、しっかりと調整してやれば使えるレベルになる物は多いです。
今はその辺りがかなり良くなってきているので、お店の人がオススメしてくるのであれば安心して購入して良いかとは思います。
新品で購入すれば保障もありますから問題があっても一安心です。
エレキは調整で簡単にどうにかできますが、アコギの場合は以下のお話のようにリペアが絡んでくる場合があります。
必ずしも新品を買う必要はありませんが、今回は最初の1本で中古を買われたことで選択の敷居が高かったですね。
お店に置いてある中古で一番安い物を買ったとのことで購入されました。
はじめて買ったギターをチューニングしていざ音出し!
音が鳴りました!までは良いのですが、物によっては「このギター、コードって本当に押さえられるの……?」と不安になる状態の物もあります。
誰でも最初はコードをいきなりは押さえられませんが、明らかに無理じゃないか?と思えるくらいの弾きにくさです。
お客様は疑問に思い、後日売り場に出てる数十万円のギターを握ってみると「明らかに自分のギターと比べて圧倒的にコードが押さえやすい!これなら弾けるだろうと思うギターだけど……なぜ!?同じ形のギターなのに?」と悩まれました。
どうしても買ったギターでは弾ける気がしないから修理で解決するのか?とリペアショップをネットで調べ、当店にお越しになりました。
Fコードが押さえられないのはギターのせいかも?
アコギに関してはエレキと比べ標準の弦高が高い物です。
またナット高も大量生産物は、あまり攻めて調整されてないのが多い印象です(ナット溝の高さが高い)。
その上、アコギはボディの表板(トップ材)が薄いため、長い年月で使っていると必ずと言っても良いぐらい、表板が弦の力で持ち上がって膨らんでいき、弦高が上がっていきます。
なら頑丈に作れば良いのに!と思ってしまいますが、この表板こそアコギのサウンドを決める大事な部分なのです。
強度を優先すると確かに丈夫に作れますが、振動が減り鳴りが落ちます。
強度重視で作ると音質面で良くありません。
その兼ね合いで表板は強度と音の両立がとても難しく、多くのクラフトマンが自分の考えを表板の補強材(ブレーシング)製作に表現します。
中古のアコギを選ぶ際はネックの反りなどの状態の他、アコギはこのトップの浮き具合に注意ください。
- ネックが順反り
- ナット溝高が高い
- トップが浮いて弦高が高くなっている
……と、アコギでこの状態が重なると弦のゲージもエレキと比べ太いのでギターを弾ける人でも厳しい位の弾きにくさになってしまいます。
よく初心者の方が「Fコードで挫折した」と言われる言葉、まずは自分のせいだと思わないでギターの状態を疑ってください。
上記で述べたように低価格帯でも比較的に良い物は増えましたがやはり良くない状態の物も中にはあります。
エレキは調整次第でどうにかできますが、アコギはご自身で調整できる点は少ないので、弾きにくい物をどうにか自分の手で良くすることはできないことでしょう。
リペアでこんなに弾きやすくなる!?
前置きが長くなりましたが、自分でも触ってみると弦高が高過ぎてFコードを押さえるのがキツくてとても弾ける状態ではありませんでした。
今自分が初心者だったら諦めるかもしれない弾きにくさです。
順反り過ぎたネックを調整、高いナットの溝高を削って調整、トップ浮きでそれでもまだ弦高が高いのでサドルを削って弦高を下げるリペアを行いました。
順反り状態は単純に弾きにくいです。
弦高が全体で上がるので、アコギの場合だと弦が太いので張力も強く、初期状態で弦高が高めだと致命的な弾きにくさになります。
ナット高が高いということは主にローポジションの弦高が高いため、アコギのメインであるコード弾きに弾きにくい原因となります。
力を入れないと押さえられない状態・弦とフレットの距離が増えるので押さえた時にチョーキング状態になり音程が上がるなどのトラブルが起きます。
弦高についてはメーカー出荷時の設定があるため、何とも言えませんが各リペアをして最終的に弦高の理由で弾きにくい場合はサドルを削って弦高を下げる必要があります。
状態が悪いギターを無理に弾き続けることで起こるトラブルはむしろプレイヤー側に起きます。
それは「弾きにくいギターを弾く手癖(てぐせ)が付いてしまうこと」です。
主に強く押さえて弾く癖(くせ)が取れなくなっている人が多いでしょう。
- 押さえたら音程が上がる人
- フレットに余計な摩擦を与え減りが早い人
- 手に余計な力が入ってるから早いフレーズが弾けない人(指がうまく動かせない人)
がそうですね。
リペアは無事に完了しました。
今まで弾きにくいけど何とかがんばって弾いていて、それでもFコードを1音1音全て鳴らすことができなかったと言われてたお客様がリペア後にギターを渡した1発目でFコード全ての音を出したことにお客様自身も驚き絶賛されました。
こうして思うことは、初心者の方は「弾けない→挫折」をする前に一度ギターに問題があるのでは?と疑ってみてください。
自分のせいだと思わないでください。
みんな弾けてるのになんで自分は弾けないのか?と疑ってください。
ギターを弾くのは練習すれば誰でも弾ける楽器ですので、管楽器などと比べたら音を出すことは楽勝の部類です。
なので自分がおかしい?と思わずにまずは相談し、弾きにくい原因を見つけリペアして弾きやすくしましょう。
ライタープロフィール
ギターリペアマン
Draw a New Sound 村吉涼秀
Draw a New Sound ギタークラフト&リペア担当:村吉涼秀(むらよしりょうひで)高校生の頃、授業の自由作品でギターを製作した事からこの道を目指す。
ギタークラフト学校に入学、多数のオリジナルギター製作を担当。
在学中にはTV取材や「Go!Go!Guitar」・「Guitar Magazine」誌などへの雑誌掲載多数。
プロギタリストが審査するギタークラフトコンテストに出場する等の経歴を持つ。
卒業後、ギターリペア工房 DNS – Draw a New Sound -を設立。
ベーシストとしてのミュージシャン経歴もあり、現場経験を活かした楽器の調整・修理・製作が可能。
ウェブサイト:http://dns-guitar.jp
Twitter:DNS_Guitar