【ギターピックアップレビュー】Seymour Duncan(セイモア・ダンカン)ハムバッカー編
自分で使ったもの、作ったギターに乗せただけのもの、多少温度差はあると思いますが、極力他のピックアップの名前を挙げて比較・評価をしやすくしているつもりです。
もくじ
SH-1n/SH-1b|’59 model
スタンダードなビンテージサウンドのピックアップだと思います。
無駄な倍音がないスッキリした音像ですが、中域はそこそこ密度があります。
クリーンはおとなしく、歪ませるとバイト感が出てきます。
Gibsonの57 Classicをスムーズにした感じでしょうか。
「枯れ」はそこまで強調されていません。
- 密度がある中域→ハイゲインで使っても薄っぺらくならない
- バイト感がある→弾き方によっては派手な音も出せる
基本的には優等生なビンテージ系ですが、優秀なオールラウンダーです。
フロント用(SH-1n)とリア用(SH-1b)で若干音が違います。
リア用の方が少しパワーがあってピークが下に寄るので、ハイゲインなピックアップと組み合わせるならこちらをフロントにマウントした方がバランスが良い場合があります。
SH-2n/SH-2b|Jazz model
個人的に、フロントピックアップの中で1番好きです。
密度が高く硬めで、クリーンはもちろん歪ませてもワイドレンジで芯のあるサウンドです。
SH-1「’59 model」よりも輪郭がはっきりしていて、特にクリーントーンの存在感に差があります。
低域はアタックだけ「ゴツン」と鳴ってすぐに減衰するので、速いフレーズでも音がつぶれません。
人によっては少々くどいと感じるかもしれませんが、そのぶん泣くときは泣いてくれます。
泣きっぱなしにならないのも良いところ。
隣り合う弦を一緒に鳴らした時、歪みが散らからずにグッと締まる感じで力が入る?のが気に入っています。
ちなみにリアにマウントした場合は、思いのほか骨のあるサウンドです。
Gibsonの「Burstbucker TYPE2」から枯れなどのビンテージテイストを取り除いた感じでしょうか。
出力は低いですが線の細さはなく「シャープ」というよりは「ブライト」なキャラクターです。
SH-3|Stag Mag
タップするとシングルコイルそのものの音が出せる、という体のハムバッカーです。
が、肝心のハムバッカーとしてのサウンドは薄っぺらくてイマイチですね。
シングルコイルとしては、フロントではそこそこ使える印象です。
ややパワーを抑えた、素直なビンテージ系サウンドです。
ハム/シングルともにリアで使うには非力(故にフロントで組み合わせるピックアップがない)かと。
フロントでシングルコイルメイン、時々ハムを使いたいという人ならアリだと思います。
SH-4|JB model
僕はコイツが大嫌いなので、あまり参考にしないでください。
とにかく、設計が古い。
細かい変更はあったらしいのですが、それでも古いと思います。
質の良いハイゲインアンプが少ない時代なら、こういう高密度中域モリモリハイゲインピックアップが重宝されるのも頷けます。
同じく古いハイパワー系ピックアップといえばDiMarzioのSuper Distortionがありますが、こちらはワイドレンジかつ倍音に適度な隙間があるので、今でも通用するキャラクターだと思います。
ピッキングの強弱に対する反応は優秀なので、単音フレーズの弾き心地は良いと思います。
しかしピッキング/フィンガリングノイズなど、細かい音(超高域)は無視されるので、コードやリフのフレーズは単調になりがちかと。
高域は出るのですが、密度が低くボディ材他の影響を受けやすいです。
載せるギターによってかなり変化するので、レビューの本などで評価に一貫性がないのはこれが理由だと思います。
逆に密度が高い中域は主張が強く、どんなギターに載せてもJBの「クセ」として語られる部分です。
このキャラクターを気に入るかどうかで、はっきり好みが分かれるピックアップです。
SH-5|Duncan Custom
個人的に1番好きなリアピックアップです。
SH-1「’59 model」のパワーアップ版という体ですが、どちらかというとSH-2「Jazz model」のハイゲイン版だと思っています。
SH-1「’59 model」のハイゲイン版は、サウンド的にも相性的にもSH-14「Custom 5」でしょう。
SH-2「Jazz model」の文章を借りれば、
密度が高く硬めで、クリーンはもちろん歪ませてもワイドレンジで芯のあるサウンドです。
SH-4「JB model」やSH-14「Custom 5」よりも輪郭がはっきりしていて、特にクリーントーンの存在感に差があります。
という感じでしょうか。
ハイパワー、フルレンジ、クリーン、抜けやエフェクトのノリが良い反面、キャラが薄く淡白、フラットで音圧やコシ・粘りを感じつらいのも事実です(ないのではなく、出し辛い)。
高いレベルでまとまっていながら器用貧乏な感じは、ESPのLH-200に似ていると思います。
どこか「国産」っぽい雰囲気です。
SH-1「’59 model」ほどバイト感はないのですが、ピッキング・ハーモニクスはコントロールしやすいです。
真顔で何でもやってくれる超優等生です。
SH-6n/SH-6b|Duncan Distortion
SH-4「JB model」やSH-5「Duncan Custom」はパワーのあるビンテージサウンドですが、これは別物です。
名前の通り歪ませて本領を発揮しますが、クリーンも悪くありません。
SH-4「JB model」よりクリアで、強くピッキングするとサチュレーションが効いた太いクリーンになります。
クランチは一定の歪みで歯切れよく弾くフレーズよりも、強弱を付けたアルペジオなんかに向いていると思います(これはSH-4「JB model」も同じ)。
ディストーションはクセがなく、とにかく懐が深いです。
ただ歪みやすいだけではなく、倍音が豊かでピッキングにしっかり反応してくれます。
早い話が、SH-4「JB model」を現代的なトーンにアレンジした感じでしょうか。
コイルが同じでマグネットが違うだけ(SH-4……アルニコV、SH-6……セラミック)といううわさを聞いて、妙に納得した覚えがあります。
ちなみにフロント用のSH-6nは、リアにも適性があります。
トーンは非常にブライトでスムーズ、出力もミドルパワーで他のラインナップと被らないおいしいポジションです。
なんでも、これが今は欠番になっている「SH-7」だったらしいですね。