【トロンボーン初心者のための】はじめてのリップスラー
今回は金管楽器の代表的な基礎テクニックのひとつ「リップスラー」について説明したいと思います。
リップスラーというのは、タンギングを使わずに音を滑らかに変えるテクニックです。
この練習を通して、より最適な息や舌の使い方を身につけることができますので、やり方を覚えて普段の練習に取り入れてみてください。
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リップスラーの仕組み
トロンボーンは音の「高さや音量」によって必要な息の「量やスピード」が決まります。
同じ音でも息の圧によってプレスの加減や口の支え具合が違ってきますし、音域によって舌の位置も変化します。
出したい音によって、吹き方に微妙な違いがあるんです。
その微妙な違いをタイミングよく瞬間的に切り替えることでタンギングを使わず滑らかに音が変わる……これがリップスラーです。
なんだか難しそう?
確かに、最初は少し難しく感じるかもしれませんが、今日はそんなリップスラーに慣れるための練習方法を教えちゃいます。
オススメ練習法
トロンボーンの教則本にはリップスラーを練習するためのさまざまなパターンが載っていますが、定番なのは以下のようなフレーズです。
最初のBbだけタンギングして、2音目以降はタンギングをせずに音を変えるというもの。
もちろんこれでもいいんですが、個人的にはもっともっとやりやすいところから始めてみることをオススメします。
というのも、音と音の距離が離れるほど口の状態も大きく変わってくるので、当然リップスラーも音が離れるほど難易度は上がってくるんです。
なので、最初はなるべく自分が「吹きやすい音域」の「近い音同士」から始めて、慣れてきたら徐々に「音域」と「音同士の距離」を広げていくようにするのがいいでしょう。
例えばこんなのはどうでしょう。
まずは中音域のFとGを選んでみました。
音と音の距離が近いので口の形はほとんど変わりません。
上の譜例を、最初はタンギングありでやってみてください。
次に、タンギングなし(リップスラー)でやってみます。
どうでしょう、うまくいきましたか?
うまくいかなかった方も、ご心配なく。
次はリップスラーをする時のポイントをひとつずつ確認していきましょう。
練習時のポイント
ポイントは4つです。
- 息を流し続ける
- 音(音程)をイメージする
- スピードのコントロール
- 唇を締めすぎない
まずは息を流し続けること。
なめらかに音をつなげたい時はなめらかに息をつなげる必要がありますので、ロングトーンのように2小節間まっすぐ息を流してください。
音をイメージすることも大切です。
タイミングよく音が変わるよう頭の中で「G~F~G~♪」と音程をしっかり歌いながら吹きましょう。
慣れてきたら音程だけでなく息の量やスピードまでイメージするようにしてみてください。
うまくいかない時は、Fの音に変わる時にほんの少しだけ息のスピードをゆるやかにしてみてください。
Fで息をゆるやかにしたら、Gの音に戻る時にまた息のスピードを元に戻すことも忘れずに。
最後に、唇を締め過ぎないこと。
リップスラーとはいいますが、唇だけで音を変えるには限界がありますし、無理をすれば余計な力みが発生し、かえって音のコントロールが難しくなります。
上で述べたように、息を上手に使うことで唇に負担をかけずに音を変えることが可能です。
以上がポイントですが、これらを一度に完璧に実行するのは大変だと思いますので、「まずは息をまっすぐ流しながらやってみよう」「息が流れるようになってきたので、次は唇を締め過ぎないよう気をつけてみよう」と、ひとつずつ意識しながら慣らしていってください。
また、タンギングをせずにスライドを動かすというのは、慣れるまではもしかしたら少し勇気がいるかもしれません。
最初は奇麗に音が切り替わらず音と音の間の音が入ってしまうこともありますが、あまり神経質になりすぎず、息を流し続けることを優先してください。
音が切り替わる瞬間を繰り返し感じながら、感覚をつかんでみてくださいね。
口と息の変化、そしてスライドの移動……最終的にはすべてのタイミングがそろうことを目標に練習してみましょう。
音域と距離を広げていく
慣れてきたら、少しずつ音と音の距離を広げていきましょう。
先ほどやったGとFの組み合わせを元に、上下に半音ずつ音を広げていきます。
「GとD」「FとBb」くらいになると、吹いている時の感覚も結構変わってくると思いませんか?
最初に1音ずつロングトーンして口の状態や息のスピードを確認し、それからまずはタンギングありで、次にタンギングなしで、というように段階を踏むといいでしょう。
同じような方法で、さまざまな音域や音の組み合わせに挑戦してみましょう。
舌のリラックスを身につけよう
リップスラーだけに限らず、トロンボーンを演奏する上で身につけたいのは舌をリラックスさせることです。
トロンボーンを演奏する際、舌に余計な力が入っていると音のコントロールが非常に難しくなります。
「舌」については、こちらの記事でも取り上げていますので、リップスラーの練習を始める前にぜひ一度ご覧ください。
舌は常にリラックスした状態が理想ですが、これは決して「だら~ん」と脱力しているようにということではありません。
「必要最低限の力」を「必要なタイミング」で使い、可能な限り余計な力は捨てるということです。
演奏がうまくいかない時は、舌やのどに力が入っていないかよく観察してみてくださいね。
最後に
「はじめてのリップスラー」と題して練習方法やポイントを解説してきましたが、今回紹介したやり方は初心者だけでなく中級者以上の方々にもオススメです。
ぜひ自分なりの工夫を加えながらやってみてください。
リップスラーを練習しながらストレスの少ない吹き方を探していきましょう!!
ライタープロフィール
トロンボーン奏者
島田直道
1985年生まれ。
栃木県出身。
高校からトロンボーンを始め、昭和音楽大学短期大学部 と専門学校 東京ミュージック&メディアアーツ尚美(現:尚美ミュージックカレッジ)を卒業。
現在は自身のラテンジャズユニットKiyoseción でのライブをはじめ、アーティストのバックバンド、レコーディング、トロンボーン講師、執筆などで活動。
https://www.facebook.com/kiyosecion
また、サルサなどラテン音楽の専門家としても研鑽を積み、これまでLA-33、Yumuri、HERMANOS YAIPEN、Charanga Habanera、Victor Manuelle、Maykel Blanco y su Salsa Mayor など海外ラテン・アーティストの来日公演にてオープニングアクト等出演、Marcelo Villar(ex-Mayimbe)、Juan Carlos "El Lobo de la Salsa"(ex-Adolecentes Orquesta)、N'Samble来日の際にはバックバンドも務める。
2014年~2015年にかけて、日本初の音楽理論Webマガジン「サークル」にて【ラテン音楽講座】を連載。
2016年、大編成サルサバンド ORQUESTA REGULUS(レグルス)を結成。
https://www.facebook.com/orq.regulus/
EL COMBO CREACION、Star Salsa、PORCO ROSA、ORQUESTA HAVATAMPA メンバー。
ウェブサイト:http://gauche-tb.com
Twitter:gauche_tb