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トロンボーンの演奏前に必要な4つのウォームアップ
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トロンボーンの演奏前に必要な4つのウォームアップ

スポーツなどをする前には準備運動(ウォームアップ)が必要ですが、楽器の演奏前にも同じように事前の準備が大切です。

今回はトロンボーンの演奏前のウォームアップで「どんなことをすればいいのか」にくわえ、「どんなことを意識すればいいのか」というところまで解説していきます。

4つのウォームアップとその目的

僕は、演奏前には4つのウォームアップが必要だと考えています。

  1. 呼吸をコントロールしさまざまな演奏表現を形にするための【体】のウォームアップ
  2. 息を音にする【唇】のウォームアップ
  3. 音や演奏のイメージを作る【頭】のウォームアップ
  4. 自分の力を最大限に引き出すための【心】のウォームアップ

では、練習や本番で楽器を演奏できる体や頭の状態を作るために、どんなことを意識すればいいのでしょうか?

体(呼吸)のウォームアップ

息を使って演奏する管楽器において「呼吸」は避けて通れない重要なポイントです。

体が硬くなり思うように呼吸ができないと、曲を演奏することはもとより、場合によっては音を出すこと自体が困難になることもあります。

楽器を吹く前には、まずストレッチなどがオススメです。

無理に体を曲げたりせず、ゆっくりと全身をほぐしていきます。

時間が無い時は、ぐぅ~~~っと伸びをするだけでもかなり違いますので、自分なりのストレッチメニューを考えてみてください。

体がある程度柔らかくなったら、メトロノームを使って一定のテンポの中で吸って吐くのを繰り返すなど、呼吸のウォームアップもやってみるといいでしょう。

「楽器を吹いているとつい力んでしまう」という方も、楽器を持たないウォームアップの段階で、なるべくリラックスしたまま呼吸する感覚を体に覚えさせるようにしてみてください。

唇のウォームアップ

唇に求められるのは「柔軟性」です。

閉じた上下の唇の間を「息」が通過した時、これをいかに音に変換できるか

体と同様、唇も硬い状態だと息が通過した時に上手く反応せず、綺麗な振動が起こせません。

唇のウォームアップには、口を軽く閉じたまま息をゆったりたっぷりと吐いて唇全体を「プルプルプルっ」と大きく震わせるフラッピングが最適です。

振動がしづらい場合は、息を吐く時に唇の上下がピタッとくっついているように意識してみてください。

ただし、力を入れてしまうと振動しなくなってしまうので注意が必要です。

上手くいくと馬が鼻を鳴らすような音がします。

これも呼吸と同じく力任せに唇を震わせるのではなく、長~いため息を吐くようなイメージで、閉じた唇が自然に震えるようにやるのがポイントです。

口の周りはもちろん、顔や首周りにも力を入れないよう、とにかく脱力をして行いましょう。

息をたっぷりと使って唇だけでなく体全体を振動させるようなイメージで、唇が適度にほぐれたなと感じるまでやります。

フラッピングはウォームアップだけでなく口が疲れたりバテた時にも有効です。

頭と心のウォームアップ

準備運動というと、つい体のことにばかり意識がいきがちですが、管楽器は奏者の内面が演奏にとても大きく影響します。

「今日はなんかダメな気がする…」「昨日の疲れが抜けてないなぁ~」

…など不安な気持ちがあると、それが体に伝わり演奏にも表れてしまいます。

「よーし、今日も良い音出すぞー!」「今日はこんなことを目標に吹いてみよう!」

…と、前向きな思考を作っていくのも大切なウォームアップのひとつです。

また、なんとなくボーっとしたままで演奏してしまうと音に対して集中力が欠けてしまい、練習では成果が得られず、本番でも力を発揮できません。

ウォームアップの段階から「こんな音で吹きたい」というイメージを明確にしていきましょう。

マウスピースを使ったウォームアップ

マウスピースだけでの音出しに関しては管楽器奏者の間でも昔から、やった方がいい派とやるべきでない派で、意見が大きく分かれます。

当然ながら何にでも人によって合う合わないはあるので、結果として調子が整うなら取り入れればいいと思いますし、かえって調子を崩すならやめたほうがいいでしょう。

僕の場合はやるとしても本当に軽く1〜2分くらいです。

グリッサンドでオクターヴを上下したり、無理のない音域でスケールを上下したりと、内容はその日の調子や状態で変えながら、マウスピースを当てる位置や、息を吐いた時にかける圧などを整えていきます。

楽器につけた時とマウスピース単体では反応や抵抗感が違うので、無理に音を出そうとせず丁寧に口を慣らしていくことが大切です。

楽器でのウォームアップの一例

どの音でもいいですが、高すぎず低すぎず自分が一番無理なく出せる音がいいでしょう。

僕の場合最初はヘ音記号五線内の F 辺りの音を伸ばします。

出したい音を頭の中にしっかりとイメージして、先ほど同様リラックスした状態で吸って…イメージした音に合った息で、吐く。

長さは特に決めません。

長さを気にするよりも体に不必要な力みがないか、息はまっすぐ気持ち良く吐けているかを大切にします。

タンギングやグリッサンド、リップスラーなどを組み合わせながら少しずつ吹く音域を上下に広げていきます。

音量変化を加えてみてもいいでしょう。

ウォームアップの目的

最初に書いたように、ウォームアップの目的は練習や本番で楽器を演奏できる体や頭の状態を作ることです。

今回何度も書いてきましたが【無理やり力任せに音を出さず、とにかく自然体でリラックスしてやること】を心がけてください。

音のイメージがあって、体と息がきちんと働いていれば、音は自然に後からついてきます。

息をたっぷり使って楽な音量で、音が気持ちよく伸びていくのを感じながら、自分の音(そして頭で鳴っている音)に深く潜っていくような感じでやってみましょう。

練習と同様「何をするか」の前に「何を目的とするか」に焦点を当てることで必要な内容が見えてきます。

もちろん考え方や実際のやり方は人それぞれなので、皆さんも自分にあった方法を探してみてください。

ウォームアップの段階で丁寧に土台を作るというのは練習や本番で良い結果を生むためには必要不可欠なことです。

丁寧に!

これが大切です。

ライタープロフィール

島田直道

トロンボーン奏者

島田直道

1985年生まれ。

栃木県出身。

高校からトロンボーンを始め、昭和音楽大学短期大学部 と専門学校 東京ミュージック&メディアアーツ尚美(現:尚美ミュージックカレッジ)を卒業。

現在は自身のラテンジャズユニットKiyoseción でのライブをはじめ、アーティストのバックバンド、レコーディング、トロンボーン講師、執筆などで活動。

https://www.facebook.com/kiyosecion

また、サルサなどラテン音楽の専門家としても研鑽を積み、これまでLA-33、Yumuri、HERMANOS YAIPEN、Charanga Habanera、Victor Manuelle、Maykel Blanco y su Salsa Mayor など海外ラテン・アーティストの来日公演にてオープニングアクト等出演、Marcelo Villar(ex-Mayimbe)、Juan Carlos "El Lobo de la Salsa"(ex-Adolecentes Orquesta)、N'Samble来日の際にはバックバンドも務める。

2014年~2015年にかけて、日本初の音楽理論Webマガジン「サークル」にて【ラテン音楽講座】を連載。

http://circle.musictheory.jp/

2016年、大編成サルサバンド ORQUESTA REGULUS(レグルス)を結成。

https://www.facebook.com/orq.regulus/

EL COMBO CREACION、Star Salsa、PORCO ROSA、ORQUESTA HAVATAMPA メンバー。

ウェブサイト:http://gauche-tb.com

Twitter:gauche_tb

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