世界レベルの口笛奏者が教える!ビブラートで口笛をプロっぽく聞かせる方法
今まで10年、20年と何度も試してきたけど、一向に音が出るようにならない!
音はちょっと出るけど、曲が吹けない!
そんな方々に口笛で音楽を楽しんでもらうために書いています。
口の中の感覚を大事にしながら、口笛の音を自在にコントロールできるようになるのが目標です。
現時点で全く音が出ない方、メロディーが吹けない方は先に第1回・第2回の記事をお読みください。
音程がつけられる(第2回)ようになり、きれいに音を切れる(第3回)ようになったら、ビブラートを聴かせることでメロディーの表現力をつけていきましょう。
ビブラートって何?
主に長い音を震わせて音色に波のような変化をつける技術のことをビブラートと言います。
歌では「こぶし」とも言いますね。
バイオリンやギターでは、左手で押さえている弦を指で細かく上下に押したり引いたりして音程を変えます。
フルートやリコーダーの場合には、強い息と弱い息を交互に行ったり来たりすることで音量を変化させて波を表現します。
その際、通常は音程や音量の変化の幅ができるだけ一定になるようにします。
口笛のビブラートはどうやるの?
口笛はバイオリンなどの弦楽器のように音の途中で簡単にピッチに変化をつけられ、またフルートなどの管楽器のように息の強さで簡単に音量の強弱を変えることができます。
従って、なんとどちらも使えるのです。
これは他の多くの楽器と比べて口笛の持つ大きな強みで、表現の幅をぐんと増やすことができます。
では、実際にやり方を見ていきましょう。
音程でかけるビブラート
音程でかけるビブラートは比較的簡単です。
第2回で見たように、「うゆうゆうゆ」という口の動きで音程を上下に同じ幅で動かします。
その際、2点注意すべきことがあります。
一つ目は基準となる音に対して上の音程で波を作るのか、下の音程で作るのか、です。
基本的には同じ曲の中では特に理由がない限りどちらか片方に決めて使うべきでしょう。
もう一つは、音程の変化の幅の大きさです。
基準音からどれくらい離れるかによって、「大きい」ビブラートや「小さい」ビブラートをかけることができます。
息の強弱(音量)でかけるビブラート
次に紹介するのは、息の強弱でかけるビブラートです。
こちらも息を途切れさせず、「ふぅふぅふぅ」というように吐く息の強さ(量)を変化させます。
口の前に手を置いてみると息の強さの変化がわかりやすいかもしれません。
息の強さを変化させると、音量が変わって震えているように聞こえます(実際には音程も若干変化します)。
こちらも音程でかけるビブラートと同様に変化の幅を意識して、大きいビブラートと小さいビブラートを練習してみてください。
息の強弱を使ったビブラートは、音程でかけるビブラートと比べると繊細で、聞き手にとっては聞こえにくいこともありますが、効果的に使えばとても美しい表現技法でもあります。
私の場合は、バイオリンっぽさを出したい場合には音程で、フルートっぽさを出したい場合には音量でビブラートをかけることにしています。
細かいビブラート
ビブラートには音程と強弱以外に大事な要素、「波長(速さ)」があります。
音程や強弱の上下を同じ時間にたくさん詰め込んだら波長の短い(速い)ビブラート、ゆっくりと変化させれば波長の長い(ゆっくりとした)ビブラート、といった具合です。
音程を意識的にコントロールする場合、舌の筋肉を動かして調整するため、速さにはどうしても限界があります。
そこで、とても細かいビブラートを使いたい場合、腹筋と喉を使って息の圧力で勝手に舌が動いて音程が変わるようにするテクニックを使います。
具体的には、発音の回(第3回)で使った「う」の音を使って息を止める方法を、軽く連続しておこないます。
腹筋に力を入れて、吐く息を止めないままできるだけ速く「ううううう」と言ってみてください。
慣れてきたら、声を出さずに息だけでやってみます。
その際、喉で息が止まって音が鳴っているでしょうか?
もしできれば、この音が鳴らないように、喉の力を抜いて、空気の流れが止まらないようにします。
これを、自分の一番出しやすい音を吹きながらやってみてください。
どうでしょうか、古き良き和製ホラー映画の効果音(ヒュードロロ)のような音が出たでしょうか?
これを全ての音域で音が止まらないようにきれいにできるまで練習します。
当然息の圧力を使っているため、音程だけでなく音量も変化して、とても「強い」ビブラートになります。
ビブラートの使いどころは?
ビブラートは音楽的に重要な表現技法のひとつですが、使い過ぎには注意しましょう。
曲の最初から最後まですべてビブラートをかけて吹いてしまうと、聞き手も疲れてしまいますし、何より単調になってしまいます。
また、ビブラートをかけて吹くことに慣れてしまうと、音程のごまかしがきくため、正しい音程を意識して吹く癖がつきません。
特に、細かいビブラートは口笛愛好者にも嫌がられるぐらいなので、多用禁物です。
では、メリハリをつけてビブラートを使うためにはどうしたらいいでしょうか?
まず、短い音や速いパッセージにはビブラートをできるだけかけないようにします。
音程やリズムが不明瞭になってしまうからです。
逆に長く伸ばす音では、ビブラートをかけた場合とかけない場合で全く違う効果が得られます。
ビブラートの種類も使い分けられると効果的です。
例えば、フォルティシモで力強さを表現したい場合は音程の幅が大きく波の細かいビブラートをかける、逆に柔らかさや静けさを表現したい場合はゆったりとして音程の幅の小さい(息の強弱を使った)ビブラートをかける、といった具合です。
とても長い音が出てくる曲の場合、音の途中まではビブラートなしでストレートに吹いて、途中から徐々にビブラートをかけていくといったような表現もできます。
いろんな長さの音が出てくる練習曲としては、「七つの子」(♪カラス~なぜ鳴くの~)が向いているかもしれません。
ぜひいろんなビブラートの使い方を試してみてください。
今回のまとめ
- 口笛のビブラートにはいろんな種類がある
- 変化の幅(振幅)と速さ(波長)を意識しよう
- ビブラートは使いどころを考えて効果的に
ビブラートをマスターすれば、「プロっぽい」演奏ができるようになって、周囲に一目置かれるでしょう。
次回は、口笛中級者が陥りがちな罠「しゃくり」について取り上げます。
ライタープロフィール
口笛奏者
武田裕煕
中学生の暇が高じて始めた口笛は、いつしか世界へ。
2010年・11年の国際口笛大会ジュニア部門を2連覇、2014年の成人男性部門では2位に入賞。
2017年アメリカのMasters of Musical Whistlingで総合2位入賞。
米国・日本でクラシック音楽のリサイタルを開催、口笛とボーカルをリードにしたジャズカルテットTwo Cats Two Dogsを主宰するなど様々な音楽ジャンルを演奏し、ワークショップや講演会を開くなど口笛音楽の普及活動を行う。
国内外のメディア掲載多数。
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