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【管楽器初心者のための】ロングトーンの練習方法
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【管楽器初心者のための】ロングトーンの練習方法

基礎練習の中でも、あらゆる管楽器において最も重要とされるのがロングトーンです。

ひとつの音を伸ばし続けるだけですが、単純だからこそ奥が深い練習です。

しかし「単純だからこそ飽きやすい」という方も多いのではないでしょうか。

今回はロングトーンの目的を考えながら、練習する際のポイントなどをご紹介します。

皆さんの練習をより有意義なものにするためのヒントになれば幸いです。

ロングトーンの目的

野球やサッカーなどのスポーツでも、ただ闇雲にバットを振ったりボールを蹴っているだけではなかなか上達しないものです。

練習で大切なのは何を意識するかということ。

ロングトーンもひとつの音を伸ばし続けるというシンプルな練習ですが、シンプルだからこそ目的を持って取り組めばさまざまな効果を得られます。

例えばこのように、まずは何を目的にロングトーンをするかをハッキリさせてから練習に入りましょう。

ロングトーンの練習例

ロングトーン (Long tone) とはその名の通り「音を長く伸ばす」練習ですが、特に初心者にとって、長く伸ばすこと自体はそんなに優先すべきことではありません。

まずは短くてもきちんとコントロールされた音を出すことから始めてみましょう。

そして、安定して音を伸ばせるようになってきたら、4拍から8拍そして16拍とその吹き方をより長く持続できるようにしていけばいいのです。

ロングトーンの練習例

Fの音でロングトーンの譜例を用意してみました。

楽器を構えて、1度心を落ち着かせてから始めましょう。

  1. 拍子を頭の中でカウントしながらリラックスして息を吸います。4拍かけて吸ってもいいですが、テンポがゆっくりなので3、4の2拍で吸ったほうがやりやすいかもしれません。
  2. 4拍のロングトーンです。次の小節の頭ぴったりまで、音をしっかり伸ばすようにしましょう。吹いている間も1、2、3、4という拍を感じてください。
  3. 首、肩、ひじ、手首などをリラックスさせて体をリセットします。1度楽器を下ろしてもいいでしょう。

繰り返して①の小節の頭で再び楽器を構えて、3、4拍目で吸って、②の頭からまたロングトーン……という流れです。

自分が1番やりやすい音から始めて、そこから練習する音域を上下に広げていきましょう。

それと同時に、自分が苦手な音にも時々挑戦してみてください。

トロンボーンを例に挙げれば、上の譜例と同じFの音を6ポジションでロングトーンするのは1ポジションで吹くよりも大変ですが、6ポジションが安定してくると1ポジションのFがもっと楽に吹けるようになります。

意識するポイントを決める

最初に書きましたが、練習では「目的」を持つことが大切です。

何も考えずにただ音を伸ばすのと、目的を持って吹くのとでは練習の成果に驚くほどの違いが出ます。

何を目的とするか決めたら、次は「ロングトーンをする時に意識するポイント」をより具体的にしてみましょう。

他にもこういったアイデアはいくらでも出せますので、皆さんもぜひ工夫しながら取り組んでみてください。

最初から複数のことを同時に意識しようとせず、まずは何かひとつに絞って、慣れてきたら2つ、3つ…と意識するポイントを増やしてみるといいでしょう。

吹く前に「どんな音が出したいのか」「どんなふうに演奏したいのか」理想の音をちゃんとイメージし、その音を頭の中でしっかりと鳴らしながらロングトーンに取り組んでみましょう。

体の状態をチェックする

楽器を始めたばかりの頃は、曲を演奏していると運指やスライドを動かすことに気をとられ体や息から意識が離れてしまう、ということがよくあります。

ロングトーンならば運指やスライドを動かすことなく音を吹くことに集中できるので、演奏中に自分がどんな体の使い方をしているかを観察しながら、よりよい吹き方を見つけることができます。

チェックするポイントは他にもたくさんありますが、音を出している時は頭の中であれこれ考えず、心を落ち着かせて体の状態を静かに観察してみましょう。

「考える」より「感じる」という感覚に近いかもしれませんね。

ロングトーンを行う際には「心を落ち着かせ、体をリラックスさせて、瞑想(めいそう)のように自分の音に深く潜っていくこと」を心がけてください。

ただし、「リラックスする=(イコール)だら~んと脱力する」ということではないので注意しましょう。

演奏するのに必要な力まで抜いてしまうと、かえって吹きづらくなったり音が悪くなったりします。

音を出すためにちょうどよい力の加減を見つけるのも、ロングトーン練習の重要な目的のひとつです。

目的を持って取り組む

ロングトーンは音を伸ばすだけで手軽にできるので、「とりあえずロングトーンしておくか」という感じになりやすい練習です。

なんとなく音を伸ばして練習した気分になっても、そこに成長はありません。

「練習は目的ではなく手段」です。

まず「目的」があり、そこにたどり着くための手段として「練習」というものが存在するのです。

「練習をすること自体が目的」になってしまうと楽器を吹く楽しさも次第に薄れていってしまいます。

「こんな音が出せたら、こんなふうに演奏できたら気持ちいいだろうなぁ!」そんな理想を思い描くところから、すべての練習を始めてみましょう。

基礎練習はつまらないという方も多いかもしれませんが、まずは目的を設定し「どんなことを意識しながらやるか」を考えて取り組むようにすると地味な練習も意味のあるものになり、だんだんと面白くなってきますよ!

ライタープロフィール

島田直道

トロンボーン奏者

島田直道

1985年生まれ。

栃木県出身。

高校からトロンボーンを始め、昭和音楽大学短期大学部 と専門学校 東京ミュージック&メディアアーツ尚美(現:尚美ミュージックカレッジ)を卒業。

現在は自身のラテンジャズユニットKiyoseción でのライブをはじめ、アーティストのバックバンド、レコーディング、トロンボーン講師、執筆などで活動。

https://www.facebook.com/kiyosecion

また、サルサなどラテン音楽の専門家としても研鑽を積み、これまでLA-33、Yumuri、HERMANOS YAIPEN、Charanga Habanera、Victor Manuelle、Maykel Blanco y su Salsa Mayor など海外ラテン・アーティストの来日公演にてオープニングアクト等出演、Marcelo Villar(ex-Mayimbe)、Juan Carlos "El Lobo de la Salsa"(ex-Adolecentes Orquesta)、N'Samble来日の際にはバックバンドも務める。

2014年~2015年にかけて、日本初の音楽理論Webマガジン「サークル」にて【ラテン音楽講座】を連載。

http://circle.musictheory.jp/

2016年、大編成サルサバンド ORQUESTA REGULUS(レグルス)を結成。

https://www.facebook.com/orq.regulus/

EL COMBO CREACION、Star Salsa、PORCO ROSA、ORQUESTA HAVATAMPA メンバー。

ウェブサイト:http://gauche-tb.com

Twitter:gauche_tb

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