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ミュージシャンのための映像知識。ライブハウスでの撮影は照明があるからこそ難しい
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ミュージシャンのための映像知識。ライブハウスでの撮影は照明があるからこそ難しい

宮原那由太です。

久しぶりの「ミュージシャンのための映像知識」を書きます。

今回はライブハウスでの映像撮影についてです。

ライブハウスの映像撮影の難易度を上げている要因は?

この写真、2014年のライブソングTVでアップした、私宮原の動画サムネイルです。

これは動画のキャプチャーなので、実際の映像の画質と言えます。

今回は、この写真から見る「ライブハウスでの撮影の難しさ」について語りたいと思います。

去年書いた記事『ライブハウス備え付けカメラの映像はなぜ「残念なのか」』の続きです。

実は、ライブの映像撮影というのは「映像撮影」のジャンルの中では、かなり難易度が高いのです。

その理由はずばり

照明があるから

です。

最初に言っておきますが、照明が悪いものというわけでは決してありません。

照明の効果があるがために、ライブハウスでのライブ映像がとても魅力的なものになるのは言うまでもないでしょう。

ただ、それを差し引いても、この照明の存在が、ライブハウスでの撮影を難しくしている要因の1つです。

難易度を上げている要因は、

  1. コントラストが強すぎる
  2. 明暗の時間変化が強すぎる
  3. ライブハウスによって明るさが全然違う

などがあります。

1つずつ見て行きましょう。

1. コントラストが強すぎる

ライブ撮影

http://o-dan.net/ja/

コントラストというのは、ざっくり言うと明るい箇所と暗い箇所の差のことです。

ライブハウスでは、照明の当たり方によって、このコントラストが強烈になります。

先ほどの写真ですが、僕の肌、少々「白飛び」しているのが分かると思います。

ライブハウスの中は、基本的に真っ暗で、照明でステージを照らすことで成り立っています。

その照明というのは、室内の蛍光灯などと違い、照らす部分は照らす、照らさない部分は照らさないのです。

その結果、「明るいところは白飛び」「暗いところは黒つぶれ」という、とてもコントラストが強い映像になってしまうのです。

「ボーカルに照明があたっているから明るさを下げたらギターの人がめっちゃ暗く映る」などは日常茶飯事ですね……

これを少しでも解消するためには、カメラ側のダイナミックレンジを上げるしかありません。

去年メインで使っていたCANON SX230HSでは、カスタムカラーという項目で、動画撮影時もコントラストを調整できます。

僕はこのコントラストを一番低い状態にして撮影を行っています。

コントラストを下げることで「暗いところはやや明るめに」「明るいとことろはやや暗めに」撮影できるのです。

録音に置き換えて言うと「コンプのかけ録り」みたいなもんでしょうかね。

2. 明暗の時間変化が強すぎる

これもコントラストに関係することなのですが、ライブハウスでの照明は曲の展開と共に変化し続けます。

ある時は真っ暗になったり、またある時はものすごく明るくなったりします。

その時間変化もかなり曲者(くせもの)なのです。

例えばオートフォーカス。

オートフォーカスは撮影ですごく楽なのですが、曲の途中で照明が暗めになると、オートフォーカスが迷ってピンぼけになることも多いです。

なので、僕は基本的にマニュアルフォーカスで撮影しています。

例えばISO感度やゲインなど、明るさに関する項目。

時間変化するので、一時期はAEロックをかけずに、明るさをオートにして撮影したこともありました。

確かに照明が暗くなった時は感度が上がるし、明るくなった時には感度を抑えてくれることもあるので便利っちゃ便利ですが、これも背景と人物のコントラストが強いので、背景に合わせて感度を調整してしまい、結局人物の顔が白飛びしちゃう、なんていうこともよくあります。

なので基本的には、マニュアルフォーカスでAEロックをかける、つまり最初からいろいろな項目を設定しておかないといけないことになります。

ただ、転換中は舞台上は暗転してるからフォーカスも狙いづらくて、本番始まってからだと結構外したりするんですよね……

リハから参加してれば大丈夫なんですけど、カメラによっては設定保存できないし、面倒だったりします。

3. ライブハウスによって明るさが全然違う

ライブ撮影

http://o-dan.net/ja/

これが一番の曲者(くせもの)です。

ライブハウスの照明の明るさって、ライブハウスが変わると変わるんです。

しかも結構大幅に。

明るいライブハウスならまだいいのですが、問題は暗目のライブハウス

カメラの性能にももちろん寄るのですが、明るさの設定を最大にしてもとても見られないような暗い映像しか撮れなかったりします。

後で編集で明るくするにしても限界があるので、こればっかりは「いいカメラ」を買うしか選択肢がないような気がしますね……

僕も、「ちょっとこのライブハウスではもう撮りたくないな……」というところがいくつかあります……

まぁ、ライブハウスの照明はお客さんのためのものであって、映像撮影のためではないですからね。

逆に、映像撮影にちょうどいい照明をしているライブハウスは、映像との相性がいいところとして記憶することが多いです。

こんなこともあるので、ライブハウスでの映像撮影は、経験値をある程度積まないと、よいものを撮影するのはなかなか難しいです。

さてさて、いかがだったでしょうか。

ライブを奇麗に演出するための照明が、実は映像的には難易度を上げているということがあるのです。

もちろん、それを乗り越えて良い映像が撮影できれば、とても奇麗なものができることは間違いありません。

これから試そうと思っている方は「ライブハウスは映像撮影環境としては難易度が高い」ということを念頭に置いて、ぜひチャレンジしてみてください。

そうそう、明るさに関することだけ補足を1つ付けます。

スモークが出せるライブハウスでは、ぜひスモークを出して撮影してみてください。

スモークがない場合、照明から出た光は、人の肌や衣装など「もの」にぶつかって初めて色が出ますが、スモークを使うと、空間を染めることができます。

これは映像的に美しくなるだけではなく「映像全体のコントラストを下げる」という重要な役割があります。

スモークがないと背景は真っ黒ですが、スモークがあれば空間に色があってとてもバランスのよいものになります。

スモークが奇麗な映像は、ライブソングTV的に言うと、例えばmasaoさんの映像などがあります。

照明から出た光で空間が染まっていることがわかるでしょうか?

ライブハウスによってはスモークというのは有料オプション(1,000円~2,000円)の場合もありますが、もし映像撮影をするなら、積極的にスモークをたいてください。

たかない場合に比べて、ずっと奇麗な映像になると思いますよ。

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ライタープロフィール

宮原那由太

音楽専門カメラマン

宮原那由太

1986年生まれ。

大学在学中より、軽音楽部にてバンド・弾き語りを始める。

2009年、第3回YAMAHA MUSIC REVOLUTIONにて音源審査に合格し、福岡エリアファイナルに、エレキギター弾き語りとして出場。

就職後、ボカロPとしてデビュー。

2011年、東京で会社員として働き始める。

2014年、ライブ映像の撮影を始める。

2015年、会社を退職し、フリーランスになる。

ブログ:http://ameblo.jp/miyabie0227

Twitter:MiyaharaNayuta

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