スペシャルインタビュー J&K 2/3|スタジオラグ

スペシャルインタビュー
J&K | スタジオラグ
「J&K」としてのカラーも出来てきたということでしょうか?
梶原:それぞれのスタイルもあるから、競争するとか、どっちの方がすごいとか、そういう形ではなく、ずっとやって来れてたから、そういう意味では元々色はあったと思うんです。ただ「J&K」のために作った曲というのはそんなになかったから、それぞれのユニットで演奏して来た曲を持ち寄ってとか、カバーを持ち寄ってとかではなく、レコーディングをきっかけに「J&K」のためにそれぞれ書いた曲っていうのがいくつか出来たっていうのはすごく大きいと思いますね。
順さんと久美さんにとって「J&K」はどういうサウンドだと捉えてらっしゃいますか?
安達:私はclub PANGAEAを中心にずっとやってきてて、自分のカラーはすごく分ってるんですけど、順さんと一緒にやるようになって、選曲とかギターのアプローチとかが、すごいポップでキャッチーなんですよ。なんか明るい。だけど、ちゃんとロックしてるし、アンサンブルがすごく楽しい。次出るアルバムの1曲目「Joker&King」は、「J&K」を象徴した曲を書きたいと思って書いた曲で、私なりのこのユニットのイメージが、あの1曲に集約されている感じです。
梶原:僕はそもそもセッションミュージシャンというか、スタジオワークや色んなツアーのサポートとかも含めて、いわゆる世の中でいうギターのジャンルとか音楽のジャンルとかいうのを拘らない演奏活動をずっとしてきてたので、そういう意味では「J&K」はロックじゃなきゃいけないとか、「J&K」はこうあるべきっていうような決まり事っていうのは特にないんですよ。久美ちゃんと僕が楽しむ事が出来れば、どんな曲想もどんなスタイルもありだと思っていて、もしかしたらビッグバンドを後ろに二人でアコギでやってもいいくらいっていうか。
分りやすい喩えですね。
梶原:久美ちゃんと知り合ったきっかけというか、浅野祥之さんと僕が始めたギター二人が中心となって楽しめる事を色々考えて行こうっていう「J&B」というグループがあって。その中でエレクトリックの活動とアコギデュオの活動とっていう2つの柱ができて、それをバランスよくやっていくっていう活動を、約12年前から4年間くらいものすごい勢いでやった時期があって、その頃に久美ちゃんに出会ったんです。
「J&B」ではラグにもよく出演していただきました。
梶原:年3回ツアーしてた。
安達:そこに追っかけに行ってたのが私です(笑)
梶原:浅野さんが亡くなって、僕はソロ活動になって。今回久美ちゃんとまたアコギデュオだけじゃなくエレクトリックも含めてっていうので、僕としては浅野さんの代わりを久美ちゃんにやってもらおうとかは全然思ってないけど、僕の活動の中で「J&B」で見つけたものがものすごいたくさんあって、それをより発展させて行きたい、膨らませて行きたい気持ちはずっとあったので、それをまたする場が与えられたかなっていう感じですかね。「J&B」と比べるつもりもないし、基本的に久美ちゃんは「J&B」でやってきたアプローチっていうのは元々好きでいてくれるから、そういう意味では違和感無く取り組んでくれるというのはあるし、僕は「J&B」でやっていって今度はこういうことやりたいな、と思ってた事が断ち切れてたところがあるので。自分のソロアルバムで一人でオーバーダビングすることもトライしてきたけど、実際にライブになるとギター一人になってしまう。「J&K」というユニットを通じて、またギターサウンドの可能性みたいなのを色々トライできるっていうか、与えられたっていうことが一番大きいかな。久美ちゃんには浅野さんの存在とか影とかをあまり強くは思っては欲しくはないんだけどね。そんなことをプレッシャーにしてもらっても僕としては望むところじゃないし。久美ちゃんが楽に自由に演奏出来る中で、僕としては2ギターの可能性を色々トライして行きたいなってとこですね。
「J&B」での活動もあり、やはり順さんにはツインギターへの強い思いがあると思いますが、ツインギターならではのサウンドやプレイでの魅力とはどういうところでしょうか?
梶原:僕の中では作品を作るときの発想とライブの時の発想とちょっと違ってて。作品を作る時には、キーボードにサウンドを頼らないっていうこと。ギタリストがリーダーのバンドだったりソロ活動においても、サウンドメイキングという意味ではキーボードに頼るっていうことはいたって普通のことで。ギターがメロディ弾いてソロ頑張って、印象的なメロディやリフはギターが弾いてるんだけど、でも例えば転調した時に世界が広がるサウンド、キーボードにそこを請け負ってもらったりっていうのが通常多い訳です。それをギターだけでどうするかっていうところで、レコーディングの時にはこの曲のこのシーンではこの音色でこのエフェクトでとか。例えば普通ギター1本リズムバッキング入れれば済むところを、3本でリズム作るにはどうしたらいいかを考えて作っていく。そういう作り方でギターサウンドの面白さというか可能性みたいなものを探していくっていうのは作品作りにおいてのギター。弾いてる人間は二人だけど、サウンド的には決して2ギターではなくて、再現しようと思ったら6人とか7人とか必要になってくる曲もある。そうやって作ったものをライブでやる時には2人でやる訳ですよ。これは無理をするというか、あそこに入れた効果的なあのフレーズとかあの音色はなしになる、サウンド的には何かが足りない状態がずっと続く訳ですけど、何かが足りないところに聴いている人が聴こえない音を聴こえてくるような演奏というんですかね。
イマジネーションを掻き立てるような演奏、ということでしょうか。
梶原:作品に入れる曲を選ぶ時にも、最終的には二人で演奏するんだって事は念頭に置いて作品作りを始める訳ですよ。ギター二人じゃ曲にならんぜ、みたいな曲は困る訳で。ギターデュオで演奏する曲であれば、少なくともメロディとコード進行がしっかりしてないと。メロディに力がないと、ライブで聴いている人に伝わらないと思うし。
アルバムを聴いて、どの曲もすごく歌っていると感じました。
梶原:ドラム・ベースが入ってエレクトリックだと、リズムの楽しさだとかそっちの要素もかなり強くなるので必ずしもメロディがなくても楽しめるものは作れると思っていて、あえてメロディのない曲、リズムパターンとリフだけで作っている曲とかそういうトライもあったりするんです。でも2ギターだけでライブするっていうのは、一人がソロ弾いてたらもう一人があとは何とかしなきゃいけない訳じゃないですか。自分の発想力とか、お客さんがどう聴こえてるかってとこで演奏する、チャレンジングなことではあると思うんですよね。だから理想はライブ終わって帰る時に、「そういえばキーボードいなかったよね?」くらいの感じでいて欲しい訳ですよ。色んな色が見えて、色んな景色が見えて、激しい曲もあり優しい曲もありっていうのを、ギター二人だけでやってたんだね、っていうのを後から気が付いてほしいくらいの感じがあって。上手に引き算してサウンドを作って行くというか。タレントのはなわ君っているでしょ。
ベース弾き語りのはなわさん、ですか?
梶原:ベースと歌だけじゃないですか。だけど聴いている人は全部コード聴こえてるんですよ、あれで。はなわ君はものすごい丁寧に曲を作ってると思うんですよ。ちゃんとベースラインとメロディで、間にハーモニーが聴こえるように作ってるんです。分かりやすく言うと、そういうこと。あれ?そう言えばコード楽器いないんだって後から気が付く。例えばアコギデュオで、けっこうリズムでがーっとやって終わって、そういえばドラムもパーカッションもいなかったよねって後から気が付くみたいな、そういうのが楽しい。