スペシャルインタビュー 松尾優|スタジオラグ

スペシャルインタビュー
piano girl

スペシャルインタビュー 松尾優

天は二物を与えず、されども稀に与え給う。我々は時に、そんな不思議を目にします。バンドマンで言うなら、例えばジョン・メイヤーやリッチー・コッツェン。2014年10月15日に初の全国流通盤『Kiss and Fly』をリリースした、“赤い靴を履いたピアノレディ”こと松尾優も、そんな希有な才能の持ち主の一人。「ピアノ」+「ヴォーカル」ではなく、「ピアノ」×「ヴォーカル」で独自のスタイルを切り開くピアノレディに大注目!

インタビュー

「クラシックやってはったんでしょ?」って

シンガーソングライター兼ピアニストというポジションは、中々聞かないですね?
松尾:あまり、いらっしゃらないかもしれないですね。
どちらを先に始められたのですか?
ピアノが先です。4歳から始めました。
クラシックでしょうか?
はい。並行してエレクトーンもやっていました。クラシックだけでなく、エレクトーンは割とポップスを弾いたり。リズムを鳴らして、バンドサウンドで弾いたりとか。『ルパン』とか弾いていましたね(笑)。『ウエストサイドストーリー』とか、ミュージカルの曲とかも。ピアノは割とクラシックをやっていて、エレクトーンでもクラシックはやっていたんですけど、「リズム感」的なものはエレクトーンの方で学ばせてもらったかなという感じでしたね。
同じ鍵盤楽器でも、ピアノとエレクトーンは全然違うのですか?
全然違いますね。エレクトーンは電子楽器で、電源が要りますよね。コンセントがないと音が鳴らないし。ピアノは生楽器なので。エレクトーンは両手両足全部使いますね。
もはやスポーツですね(笑)。
スポーツです(笑)。すごく激しい曲とか、汗だくになったりしてたから。スポーツと思いながら弾いていましたよね。でもやっぱり、クラシックが根底なのかな?ざっくりで言うと。
そのニュアンスは楽曲から感じます。
分かる人には分かるみたいです。「クラシックやってはったんでしょ?」って。いくらジャズ風な曲を弾いても、「クラシックあがりでしょ?」みたいにすぐバレる(笑)。

歌詞というよりポエム寄りでしたけど

では、歌はいつからされていますか?
歌は大学に入ってすぐくらいからです。19歳くらいからです。
え?!そうなんですね?どういうきっかけでしたか?
きっかけは高校生くらいの頃に、友達が家に遊びにきていて、その子が「即興で私の歌作って!」みたいな感じで言ってきて。で、曲を作って即興で歌ったんですよ。ほんの数秒間だけしか歌ってないけど、「めっちゃいいやん、今の!」「ホンマ?そう?」ってなって。「じゃあ、ちゃんと1曲作るわ」という流れになって、1曲ちゃんと作って歌が出来て、喜んでもらえたのが始まりですね。詞は中学校くらいから書いていて、歌詞というよりポエム寄りでしたけど。それに音楽をつけてみよう、という感じになっていきました。曲は作ってたから、ヤマハ時代に。
ヤマハ時代と言いますと?
4歳からずっとヤマハにお世話になってたんですけど、小学1年生くらいから毎年曲を作る機会はあったので作曲はしてたんですよね。
楽器と作曲をならってらしたのですね。
『ジュニアオリジナルコンサート』と言って、自作曲を弾く発表会が毎年あるんですよ。曲は作れるし、そこに書き溜めていた詞をつけると歌にできるなってなっていって。友達が「作って!」って言ってくれたのがきっかけだったけど、その後どうしようという時に、その書き溜めていた詞を音楽に載せて作っていったというのはありますね。
ヤマハ時代に作曲されていた曲は、インスト向けに書いた訳ではなかったのですか?
インスト曲です。ピアノ曲。毎年1曲ずつは絶対作るので。小学校何年生か忘れましたけど、ちょっとジャズ風な曲を作った年があったんですよ。それを、活動を始めてから、インストも弾き出してから、普通にライブで弾いていました。「小学校の時この曲を作りました」って言って。CDにもなっているし。
それは何という曲ですか?
『メロディーよ、ニューヨークへ!』という曲で、ニューヨークで同時多発テロがあった年でした。私はその時11歳。その時に作った曲を、ライブで「これだったら弾けるかも」という感じで弾き始めました。他の曲はクラシカルだったので、ちょっとライブには合わないなという感じだったんですけど、その曲だけは出来るかな、という感じで。それが、インスト曲をライブに頻繁に取り入れだしたきっかけでした。

「あ、歌出来た!」みたいな

もともとはインスト曲として作った曲に、歌詞とメロディを載せるのは、自然な感じで出来たのでしょうか?
自然な感じで出来ましたね。「あ、歌出来た!」みたいな(笑)感じで面白がってやっていました。すでにあるものとあるものやから、合体させたら出来るやん!という感じで出来ました、最初は。中学生の時、皆ホームページを作るのが流行ったんですよ。携帯用のホームページ。個人のサイトを作るというのが流行って、その中に「ポエム」の項目を作って載せていたんですよ。それが友達とかから好評だったから。その頃から書いていたんでしょうね、思い返せば。
実際にその「ポエム」で載せていた歌詞が曲になったのもあるのですか?
ありますね。1番最初に作った曲とかそうですね。
歌の歴史は実はそんなに長くはないものの、それに至る導線のようなものはあったということですね。ライブでは、ずっとピアノ曲と歌もの、2本立てで活動されているのですか?
最初は歌だけでした。
ライブ活動はいつからですか?
19歳からです。大学1回生。友達の2人組のユニットのアーティストがいて、それを誘われて見に行って、祇園四条にあるSilver Wingsというライブハウスだったんですけど。で、終わった後にその2人が「この子もピアノ弾けんねん、歌えんねん」という感じでライブハウスの人に言ってくれて、「じゃあちょっと弾いてみて」みたいな感じになって、何か弾いたんですよ。それを「いいやん!」って言ってもらえて、「いつかここで出えへん?」という感じになっていって、そこからですね。
では、初めてのライブもやはりSilver Wingsで?
初めてのライブは、、違った気がする(笑)。その時伏見の『力の湯』、スーパー銭湯のレストランのホールでアルバイトをしていて、バイト先の人もすごく応援してくれていたから、イベント的な時にロビーで機材とかも用意して下さって、弾き語りセットを作ってくれて、そこで弾いたりとかしていました。その辺りが初ライブだったのかな?
その関係で『力の湯』のCMソングも?
京野菜の歌ですよね、そうです。そこでアルバイトをしていたので、そこの方々は「頑張れ頑張れ!」という感じで。最近『じねんと市場』という京野菜の直売所が出来たんですね。その時に京野菜の曲を作って欲しいと社長から言って頂き、京野菜について勉強して歌詞書いて作ったんですよ。で、今ずっと店内で流れてますね、ひたすら(笑)。3~4分くらいの曲なんで、すぐ終わるしすぐまた始まるから、レジのおばちゃんとか耳にタコが出来てるんじゃないかしら…(笑)。
ヘビーローテーションですね(笑)。
桂のAEON MALLに映画館が入って、そこに『力の湯』が宣伝CMを出すらしいんです。その時に歌も流れるらしくって、「ちゃんと名前も入れとくから」って言ってくれはって。そうやって、色んな方からのサポートがありつつ。事務所にも入ったことがなくて全部自分でやってるので、そういう出会いとか繋がりとか、助けてくれる人がいなかったら今の自分はいないし、すごく感謝しています。

「どっちもやって自分だな」って

最初は歌だけのライブから始まって、ピアノ曲も弾くようになったきっかけは?
「出来ることはやらないともったいないでしょ!」という感覚になって。「私の武器になるかも」って思いました、ピアノというものが。最初やり出した時は、「どっちなの?」「どっちかにしたら?」みたいな感じで言われることもあったし、1回のライブでも1曲だけインスト挿むとか、ちょっとだけインスト挿むとかという感じで。でも「どっちも出来るんやしやったら」って言ってくれる人も多くいて下さって。で、「そうですよね」となってどんどんピアノの方も増えていったんですよ。1本のライブで2曲弾くことになったりとか。最初はCDも『歌』と『ピアノ』と分けていたんです。CDも、ピアノはピアノで出していたし、歌は歌でまとめて出していたし。どっちも好きな人もいてくれるけど、どっちかが好きな人もいるから。ピアノが好きな人は歌あんまり聴きたくないとか、ピアノはいいし歌を聴きたいとか。
リスナーの趣向としては分かれがちですよね。
分かれがちかな、って感じていたんで分けてはいたんですよ。でも、だんだんそれも、別の人間がやっている訳じゃないし、私一人がやっている以外の何ものでもないし、「どっちもやって自分だな」ってなって、今回の全国リリースのアルバムからもう融合させちゃおうと思って。ライブでも、ピアノと歌と織り交ぜてやっているので、そのままCDにしたらいいんちゃう、これが自分。という感じで。7曲のうち3曲がインストなのですが、3曲にしたのは自分らしさを入れたかったというか。「どっちもメインでやっていきたい」っていうのを分かって欲しかったというか。
では今はどちらも両立してやるというのが、完全に自分のスタイル、でしょうか?
そうですね。絶対、ピアノ、弾いてますね。
最初にも言いましたが、中々そのスタイルの方はいないですが、影響を受けたり参考にされているアーティストはいますか?
それが、特にないんですよね。

昭和歌謡が私の中ですごいルーツになってるのかな

では、歌なら誰々が好き、ピアノなら誰々が好き、というのはありますか?
ピアノは、ピアニストの小原孝という人がいて、京都コンサートホールで、私小学生の時にゲスト出演させて頂いたことがあって。小原さんのピアノは好きです。クラシックだけじゃなくて弾き語りとかもされていたり、1つのコンサートの中でポップスも弾かれていたり、色んな表情を魅せる方だなと尊敬しています。歌の方は、誰々が好きでずっと聴いてきてみたいなのは意外となくて。TSUTAYAとか行っても、その時に売れているのを当たり障りなく借りてざっと聴いてとか、そっちだったんです。あえて言うなら、コリーヌベイリーレイとか、ノラジョーンズなどのメロー系と呼ばれる女性アーティストが好きです。
狭く深くではなく、広く浅くという感じですね。
はい。でも最近気付いたことがあって、ヤマハ音楽教室に通う行き帰りの車の中で、お母さんに送ってもらっていたんですけど。そこでずっと昭和歌謡が流れていたんですよ。それ、私の中ですごいルーツになってるのかなと思って。
それは意外なところですね!
思い返してみれば、生まれるメロディーとかが、歌謡曲っぽいんですよ。私自身も、その頃の懐メロと呼ばれるジャンルはすごく好きだし、覚えやすくて真っ直ぐですっと入ってくると言うか。今、いかに個性を出して、いかに変わったことを、という作品作りも多いこの時代ですが、それとは別の良さがあると言うか。それを感じているので、多分そのまま自分の音楽にも反映されていると思うんですよ。今回のアルバムの中でも、「乙女心」という、もろ歌謡曲テイストの曲が入っていて。それは、もう山口百恵さん!というか(笑)。だからその時代ドンピシャなおじ様おば様に、「これめっちゃ好き」って言ってもらえたり。でも、それをそのままアレンジまで寄せてしまうとやはり古いので、アレンジは昭和っぽさと今っぽさを織り交ぜた感じにしたりとか。自分らしさは入れたいというのはあるから。
ここにきて百恵ちゃんが(笑)!
そうなんですよ(笑)。聖子ちゃんとかも好きですよ♪
世の中を見渡しても、なかなか二つの武器で成功を収めている方が多くはないと思いますが、では今後もあえて、その二つの武器で貫いて行く、ということですね。
はい。
この分野で第一人者になるぞ、という気概の表れですね!
声優さんでも、色んな役どころを演じられるじゃないですか、声を巧みに変えて。「あのアニメのあのキャラクターをやっている人が、今喋っているこれもやってはるんや!」とか、「え?!まじで?」みたいな、そういうのが憧れですよね。「CMのあの曲歌っている人が、この映画音楽のバックでBGM弾いてはんねんで」とか、「編曲してはんねんで」とか、色んなところで出没したいと言うか。驚かせたい(笑)だから、「弾き語りで自分は絶対テレビに出たい」とかじゃなくて、自分から生み出すことの出来る音楽だったらスタイルはなんでもいいんですよ。それぞれを貫かなければならないし、極めないといけないので大変なんですけど。でも昔からそうなんですよ、私。「二兎を追うもの一兎も得られず」って親からも言われてきたから、それを逆に生かしたいなというのがあって。あれもやりたい、これもやりたいっていうのが常にあるから。器用貧乏にならへんようにだけ気を付けてって言われていました。
では今後は他のアーティストへの楽曲提供やプロデュース的なこともやっていく感じでしょうか?
自分が音楽を通して、『松尾優』というカラーを出せれば、何でもいいという感じですね。でも、確かなことは、裏方気質ではないというのは一つあるので(笑)、人前には出たいと言うのは根底としてあるんですよね。表舞台には行きたいんです!目立ちたがり屋も幼い頃からです(笑)

子供が好きで音楽が好き。音楽を通して少しでも感受性豊かになって欲しい

いいですね!ガツガツ行きましょう!今非常勤講師として教免もとられているとのことですが、教育にかける思いというのも大きいのでしょうか?
ただ単に子供が好きで音楽が好きというのがあるので、「教育たるもの」みたいなそんな堅いことはあんまりなくて(笑)。音楽を通して少しでも感受性豊かになって欲しいと言うか。好きだからやっているというだけですよね、ただ単に。10月に勤務先の中学校で合唱コンクールもあったのですが、3年生が歌うんですけど、その課題曲で私の曲が歌われたりしたんですよ。それも、いつもだったらソロで歌うから、ソプラノ・アルト・男性の3部に分けて編曲して楽譜を書いてあげて、それを音楽の授業で練習して、本番は6クラス全員分、6回私がピアノ伴奏したりとか、今度CMソングになる『君が大人になって』という曲も、皆YouTubeとかで見てくれてるので、すぐ覚えてくれてるから、歌詞配って授業で一緒に歌ったりしていますね。
自分の曲が教材になるなんて最高ですね!
嬉しいですよね。自分の曲を皆が歌ってくれるって、そんな機会あまりないことだし、経験出来ないと思うから。
誰しもが経験できることではないですよね。
40人1クラスの皆が声を揃えて歌うってことって中々ないから、ありがたいなという思いで。非常勤講師は勤務は1年なので、次の春で講師は一旦終了するんですけど、学校に行って子供達と音楽を通して触れ合ってという経験は絶対に役に立つと言うか、自分にとってまた引き出しに入れることが出来ている感じはあるので、これから生まれる音楽にそれを変換して入れていければなというのはありますね。色んなことを経験したいというのがあるので、知らないことを。見たことのない世界を見たいとか、知らない人に会いたいとか、色んな所に行きたいとか。その流れの中での非常勤講師というお仕事をやらせてもらっている感じです。音楽も子供も大好きというのもあって。

その時の日常とかその時思っていることとか、私日記のように出るんで、曲に

10月15日に初の全国リリース盤となります「Kiss and Fly」がリリースされました。反響などはいかがでしょうか?
やっぱりお店に並ぶということが、手売りで売っているだけとは違うと言うか。自分自身も感じるし、周りも「お店で買えるの?」みたいになるし、気軽に手に取ってもらいやすくなる、しかも全国の人に。いつもライブに来てくれる人しか売ることができなかったのが、一気に広がった感じはあります。でも私自身がそのアルバム、7曲入りなんですけど、燃え尽きるくらい全部詰め込んだというか、もう何も隠し持ってないというか(笑) 次、これを超えるものが出来るのか!?というのが正直あって。全国リリース盤の処女作としての緊張感と言うか、最初にしか出ないものを自分でも感じています。それはエンジニアさんとも言ってたんですけど。空気感と言うか、注ぎ込むパワーと言うか、それを全て入れた感じで。だからこそ自信を持って「聴いてください!」って言えるし、聴いてもらった人からもすごい嬉しいメッセージをくれるので、それが嬉しかったりとか。今回コメントやレビューをたくさんの方にもらったんですけど(松尾優ホームページから見ることが出来ます)、それを見て「ああ、嬉しいな」と純粋に思えるし。一人でも多くの人に届けばなというのはありますよね。
1stアルバムのみが持つ何かオーラのようなものって確かに感じることがありますね。
これ以上いいものが出来る自信がないみたいなことを色んな人に言ってたら、「それ、皆そう思うんやで」みたいに言われました(笑)。「これからまたどんどん生まれてくるから大丈夫!」って偉大な先輩方が言って下さるので、「あ、そんなもんなんか!」と安心しつつ。だから、またここからしっかりと毎日を生きることかなと。その時の日常とかその時思っていることとか、私日記のように出るんで、曲に。だからバレるんですよね。分かりやすく言えば、失恋ソング書いたら、「え?失恋したん?」みたいな(笑)。本当にモロに、そういう感じで生まれてくるから。だから日常がどれだけ充実しているかによって、いい音楽が生まれるかというのが変わってくるし、まずは毎日をしっかり充実させて生きることというか。いい音楽どうこうの前に、そこからしか生まれないので。という流れの中で色んな人に会いたい、色んな所に行きたいというのがあるんですよね。
では、次回作が暗い暗い作品だったら、、
え、どうしよう(笑)。「大丈夫?ストレス溜まってる?」みたいな(笑)。
もしそうだったら心配してお電話しますね(笑)。
お願い致します(笑)。今回のアルバムが「Kiss and Fly」というタイトルなんですが、このタイトルが、アメリカとかフランスの空港に書かれているフレーズで、お見送りしてくる車の一時停車車両に表示されてるんですね。「キスを交わして行ってらっしゃい」という背中を押すフレーズです。その意味を知った時に、このアルバムを聴いて音楽で聴いた人の背中を押せればなという思いで付けました。それぞれの日常があるし、それぞれの人生があると思うし、人それぞれ抱えているものも違うと思うけど、ちょっとでもこの音楽を聴いた人の背中を押せればなという思いで付けました。
広い意味での応援歌的な感じでしょうか。
そうですね。今私にある「頑張れ!」というエネルギーというか、それを全部入れたつもりで作ったんで。
ポジティブに溢れていますね!
よく、「朝に聴きたい」って言ってもらいますね。出かける前に聴きたいとか、1回休憩時間挟んで次また後半戦頑張らなきゃみたいな時に、聴いたらすごい頑張れるとか。そういうのを聞くと、「あ、受け取ってもらえてるんや」っていう感じで嬉しくなったりします。

日常じゃなくてアーティストとしての自分になるために履こうと思って

プロフィールの中に『赤い靴を履いたピアノレディ』というフレーズがありますが、これはどういう意味でしょうか?
例えば毎回ライブでは帽子を被るとか、この人は毎回これを着るとか。そういう自分に代えられるアイコン的なものが何か欲しいなと思ってて。『ピアノレディ』という言葉が、私が勝手に作って言っていたんですけど(笑)、「この言葉優さんぽくてすごく良いですね」みたいな感じでアーティスト仲間達から言われて。赤い靴は、もともと赤色が好きで、赤い靴って童謡とかにもなってたり、私の中でちょっと特別な存在だったんですよ。日常じゃなくてアーティストとしての自分になるために履こうと思って。あまり深い意味はないけど、好きなワード、好きなものですよね。それで覚えてもらえると嬉しいなと言うか。『ピアノ』ってつけたのもピアノ弾く人って覚えてもらいたかったと思う。あ、この人ピアノ弾くんだなってすぐ分かるように。
リリース以降、結構長いスパンで全国を回られていますね。
全国と言えるほどは行ってないですけど(笑)。行ける日が土日とかに限られてくるので、今まで行かせてもらっていた、お世話になっていたライブハウスとかに絞って行く感じにはなっているんですけど、プラス、インストアライブが入ってきています。お店で売っているCDと手売りで売っているCDとジャケットが違うんです。手売りの方が、写真も違いますし紙ジャケなんですよ。ライブ会場限定で、売らせてもらっていて、手書きのライナーノーツとかも印刷してたり、お店では買えない特別仕様になってるので、それを引っ提げて行くんです。
では、ファンの方は両方ゲットだぜ!ということですね?
そういうことですね!(笑)。たくさんの方がすでに両方ゲットして下さっていて嬉しい限りです!
ピアノ曲3曲はソロですが、他の曲はバンドや弦も入っています。それらのアレンジもされるのですか?
バンドの場合は1回ピアノ弾き語りで聴いてもらって、バンドアレンジはバンドメンバー皆で意見出し合って決めるんですけど、最終判断は私がします。6曲目の『教室の窓から』という曲は、今回新曲として1曲入れてるんですが、それはヴァイオリンとチェロとピアノと歌なんですけど、弦のアレンジは全部自分でしました。楽譜を書いて奏者の人に渡して。ミックスで驚かれたんですけど、私のイメージが、全部が主役として聴こえてくる音にしたかったんですよ。弦だけ聴いてもメロディーとして聴ける曲というか、そういうイメージでアレンジしたので、普通ならもっとピアノと歌を大きめにと出して弦はサイドで脇役みたいな感じが一般的というか、エンジニアの小倉ユウゴさんもそういうイメージだったらしいんですけど、全然違ったから。私が。「もっとストリングス出して。もっと出して。」「え?これ以上?」みたいな感じで言われながら、「もっともっと!全然足りひん!」「こんな出すの?」みたいな感じになりながら、最終的には意図を理解してくれてそういう音源にもなったし、大きく出して良かったなと思いますね、今から考えたら。
それは壮絶なせめぎ合いがあったのでしょうね。
彼はコメントを書いてくれた時にもその曲について触れてくれていたし。あまり一般的ではなかったんでしょうね、バランス的には。最後のインストの『海』っていう曲は、1発録り、1回でもう。「めっちゃ良かったやん、今の!」みたいな感じで終わりました。
ファーストテイク!
「はい、じゃ、試しに録ってみようか」みたいな時に。でもこれ、何回も泣きそうになったって小倉さんがミックスの時に言ってくれました。割とインストは早いですね。
さすが『ピアノレディ』ですね!この大作のリリースツアーファイナルにあたるのが、2015年1月24日ライブスポットラグで行われますね。
和紗さん、斉藤麻里さん、さぁささん、全4組の出演です。

どんな自分になってるか。その時にならないと分からないから、それを楽しんで欲しい

ツアーファイナル@京都ということで、この日にかける意気込みをお聞かせください。
日々新しくなっていってると思うんですよ。CDを出すと決めてから発売日までの間にも変わっているし、発売してからツアーファイナルまでの間にも自分自身絶対変わっていると思うから、二度と同じライブは出来ないと思うので、色んな景色を見てきてツアーファイナルの日に行くと思うので、新しい松尾優を見て欲しいというのはありますね。それは私も分からないし、どんな自分になってるか。その時にならないと分からないから、それを楽しんで欲しいなと。自分も楽しみたいなというのはありますね。
もちろんご来場のお客様もすでにCDを聴いて来られるとは思いますが、CDとも違うよと。
またCDとちょっと変わったなとか、表現が違うなとか、そういう変化は絶対あると思うので。そこを楽しみにして来てくれたらいいなと思います。
では、CMソング『君が大人になって』についてお伺いしたいと思います。こちらは再録になるのでしょうか?
はい。サカイ引っ越しセンターのCMソングとして、12月から偶数月に2年間流れます。
これはどういうきっかけでの起用でしょうか?
それも繋がりで、この曲が生まれたのがそもそもちょっと前で、私が大学4回生の時だったんです。教員免許を取る、音楽教育学専攻のクラスにいて、教育実習に行ったんですよ。中学校に3週間。その3週間のあいだに、皆に向けての思いを1曲の曲にして出来たんですね。それが『君が大人になって』なんですけど、実習の最終日までに歌とピアノだけレコーディングしてCD-Rに焼いて、全学年全クラス用に焼いて、サプライズでプレゼントして。担当クラスだった生徒には歌ってあげたりしつつ、「ありがとう、また会おうね!バイバイ!」って言って帰ってきました。
めっちゃ感動的ではないですか!
そこで一度ストーリーとしては完結していたんですけど、せっかく作ったしライブでも歌おうと思って、ライブでも歌い出したら、子供達に向って作った曲なんですけど、大人の人からすごく嬉しい言葉をいただいたりして。「子どもの頃のこと思い出したわ」とか、「自分の息子に聴かせたいわ」とか、嬉しい反響があって。自分の曲の中で一番皆様に育ててもらった曲だなっていう印象はあったんですよ、ずっと。それからCM会社の方からサカイ引っ越しセンターのお話しをいただいて。今までは書き下ろしてたんですけど、その時は『「君が大人になって」という曲が、ドラマ仕立てのCMの内容にぴったりなので、プレゼンにかけたいんですけどいいですか?』という連絡をいただいて、「是非お願いします」ということで。私の曲だけではなくて他にもメジャーアーティストも含むリストを作って。その一方で、CMを作る監督が、私が大学時代に学校がDVDを作った時に、私それに出演していたんですけど、その撮影スタッフの方がいる会社の監督だったという感じで、私の存在も『君が大人になって』も知って下さっていたみたいで、監督も自ら『君が大人になって』を持って来てくれてはったんですって、プレゼン用に。で、CM会社の方も持って来ている=ビンゴ!みたいな(笑)。
それはすごい偶然ですね。
純粋にその曲を使いたいと思って使ってくれはったんやっていう嬉しさがあって。他にもいっぱいアーティストさんはいらっしゃるのに、全然無名のこんな私の曲を気に入っていただいて。「ありがとうございます!」という感じで。それって、大学行ってなかったら生まれてないし、教育実習行ってなかったら生まれてないし、辿っていくとすごいなと思って。
今回の再録する前のバージョンからすでに流れていたのですか?
そうです。流れているし、去年の夏に出したCDに入っていますね。もう音源化もされています。その時はピアノ弾き語り+エレクトーンを使ってヴァイオリンの音を弾いたりしていたんですよ。今回は生の楽器を使って、またアレンジし直してもう1回録音する方向なんです。前のは2年くらい前の古い音源なので、今だから出来るいい音源を作ろうと決めました。
なるほど、最新の松尾優バージョンという訳ですね。これはCMソングとしてオンエアされる意外にも、CDリリースやダウンロードなどの予定はありますか?
音源が出来たら、まずはiTunesで販売予定をしています。時期は未定ですが、CDとして出すことも確かだと思います。

聴いてくれている人がいて初めて、その曲・音楽が生まれる瞬間になると思う

今後の活動における、目標・やってみたいことをお聞かせください。
どんな形でもいいので、自分の作品を出したいというのがあって、それがインストでもいいし歌でもいいし楽曲提供でもいいし。自分で作って家で歌っているだけやったら生まれていることにならないと思うので、聴いてくれている人がいて初めて、その曲・音楽が生まれる瞬間になると思うんですよ。だからその機会を増やすということと、一人でもたくさんの人に届けたいというのがあるから、いっぱいお客さんがいる前で演奏したいっていうのはありますね。多少なりともCMで名前を知ってもらえるきっかけにはなると思うので、それから知ってもらって聴いてもらっていいな、で、他の曲もいいな、じゃあこの人のライブ行きたいなって繋がるように頑張りたいなという感じです。
そういう意味では今回のCMはすごく大きいですよね。
種をいっぱい蒔いていきたいのはずっとあったので、それがいつ咲くかは分からないけど、10年先かも知れないし、1ヶ月先かも分からないけど、色んな所に種を蒔きたいなというのは今年のイメージの中にあったので、それを咲かせたいというのがあります。
それでは最後に、スタジオをご利用の皆様にメッセージをお願いします。
音楽をやっている人って、何かを伝えたいとか発信したいとか、曲になったり言葉にしたりしていると思います。それをやめないで、発信することをやめたら終わりだと思うので、共に言いたいことを言っていきましょう、やりたいことやりましょう!その時にやりたいこと、その時に会いたい人のところに会いにいくし、今これが必要と思ったらするし、思っているだけじゃなくて自分の中から形にして出す。行動にしても言葉にしても。そういう発信力を持ち続けましょう! 
ありがとうございました!
関連記事
ソーシャルメディア
Tweet
いいね!
コメント
PV