スペシャルインタビュー MILKBAR |スタジオラグ

スペシャルインタビュー
MILKBAR

スペシャルインタビュー MILKBAR

京都音楽シーンにおいて、「真珠」と形容すべき音楽家集団:MILKBAR。結成7年目となる2015年2月18日、ついに1stフルアルバム『Detritus』をリリース。これまで散りばめられた輝きに今の光沢が加わり、新たな煌めきへと昇華した珠玉の作品。満を持して放たれる『Detritus』に、そして現在のMILKBARの至近距離に迫る、3年ぶりのロング・インタビュー。

インタビュー

1. 『ソーダ水の気の抜けた朝に』~現在まで

前回インタビューさせていただいたのが、2012年4月頃、『ソーダ水の気の抜けた朝に』リリース時でした。あれから約3年、バンドメンバーの変遷もありつつでしたね。どのような3年間でしたか?
梶谷:『ソーダ水の気の抜けた朝に』リリース直後に、ベースの寺田が病気になりまして。一時期離脱という形で、バンドが2人になりまして。
舌ガンでしたよね?
寺田:3年前、インタビュー録ってもらった時がまさに、痛くて(笑)。あの時すでに、体の中に病気がおったんです。
それで、寺田さんの発言が少なかったのでしょうか?
寺田:もともと、僕は言葉が弱いので(笑)。僕は3年前のインタビュー、すごい思い出に残ってて。あの時はまだ、ガンやってことは分かってなくて。
今はもう完治されましたか?
寺田:医学上は5年で大丈夫ということで、あと2年?でも今もう全然普通の生活をしています。
本当によかったです!おかえりなさいませ!
梶谷:で、リリース直後のプロモーションとかライブとか、「今からやぞ!」という感じだったのが、それまで3人でべったりやっていたのが急に1人抜けた状態でやらなければならないという。サポートで空中ループの森さんにベース弾いてもらいながらやってたんですけど、急過ぎて気持ちの整理とやらなあかんことの温度差が激し過ぎて、一時期精神的に追い込まれている時期もあったりとか。寺田が帰ってきてからは、そこから這い上がるのにリハビリもあってライブ活動も控え目になりながら、ということがあったりして。復帰した時に、アコースティックギターの市山という、一人メンバーが増えて、手伝ってもらいながらなんですけど5人編成という形で持ち直せたんですが。今度は市山が抜けたり、所属していたレーベルとも離れることになったり、激動の3年間でございまして。
では、今はようやく態勢が整って、「これからいくぞ!」という感じですね?
梶谷:ようやくですね。
前回のインタビューのお話しでも、実は大澤さんの話が登場していましたが、現在は正式メンバーでしょうか?
北小路:はい、正式メンバーですよ。
大澤さんの加入のきっかけについてお聞かせください。
梶谷:2人になった時、メンバーを増やしてやりたいという希望が北小路の方からもありまして、北小路が加入させたのが市山で。もともと『ソーダ水の気の抜けた朝に』の時から、音的なところで鍵盤が足りないなと2人でもディスカッションしてまして。大澤は高校の僕の同級生で、たまたまその時期に彼がやっているバンドの音源を聴かせてもらって。聴いたところものすごくいいんじゃないかと。僕らの知り合いの中から探してたんですけど、ちょっと飛び道具的に、全く知らん人を入れて。バンドの繋がりで想像される、多分この人が入るだろうなっていう人じゃなくて、「誰なんですか?」みたいな人を入れるのも面白いかと思いまして。話してみたところ1曲弾いてくれるというので。それが、『ソーダ水の気の抜けた朝に』収録の「腹に精子とフラッシュバック」という曲だったんです。
それが、初めてのセッションだったのですね。
梶谷:メンバーと会わせることなく、音だけでやりとりしておりまして。
その時は面識もなく?
梶谷:レコーディングの時初めて来てもらうということになって。それからメンバーと喋りながら。やってることとか音楽のセンスは、メンバー的にもすごい気に入ったので、出来ればメンバーになって欲しいという話をして、入ってもらうことになりました。
タイミング的には『THE JOSHUA TREE』リリース頃ですか?
北小路:そうですね、1~2年、ゆうにやってるかな?
梶谷:人間的に恐い感じに見えるんですけど(笑)。口べたなところもありまして、なかなか表には出て来ないんですけども。基本的にはそういうことが出来ないから、メンバーというのには向いてないかも知れんとは、本人からも言われてまして。ただやっぱり音楽をしている団体なので、音楽の部分で関わりたいと皆が思っている以上は、メンバーとして書かしてくれっていうことで。
大澤さんがやられていますアカネイロヒキさんのライブを拝見したことがありますが、とても「和」を感じるサウンドでした。やはりそういう方面のサウンドキャラクターですか?
北小路:基本的に何でも出来ちゃう人で、ただ、自分が今追求しているものの方向性が「和」というベクトルに向いているだけで。あいつ自身は関係なく、音楽とつくものは何でも吸収しちゃうやつなんで、思っているより広いですよ。
そうなんですね。今度ゆっくり喋ってみます(笑)。大澤さんの加入により、MILKBARのサウンドはどう変化しましたか?
北小路:単純に、出来ないことが可能になったんですよね。3ピースって、最小単位でバンドのサウンドを出すじゃないですか。構成的なものとかで、やっぱり限界な部分もあって、それがもう1つ楽器が増えることによって、すんなり、真っ直ぐいけて成立しちゃうっていうことが出来る訳じゃないですか。そういう点で、自分らのやっていきたいものとか考えてたこととかが、すごく忠実に再現できてる感じですね。ライブとCDの違いというのはありやと思いますけど、違い過ぎてても僕らとしては気持ち悪かったりする部分もある訳で。そういう部分もいい具合に埋まってきて、クオリティ高いライブが出来るようになったなって思いますね。
逆に、大澤さんの加入に関わらず、MILKBARのサウンドとして変化していないのは、どういうところですか?
梶谷:メロディじゃないですかね。
北小路:僕自体の考え方とか、曲の作り方とかは変わってないですね。ただそれが、3人だった色が4人になって出て来たっていう、そういうところだけで。中の核、梶やんが言った「メロディ」みたいなものは、全然変わってないと思いますね。
キーボードのアレンジは、大澤さんにお任せする形ですか?
北小路:ディスカッションをする時もあるし、いい曲の作り方を模索してたりもするんですよ、まだ。どういう形がいいのかとかは、曲単位で変わっていくので、各々イメージ持ってきて繋ぎ合わせていって、全部壊してもう1回何かみたいな時もあるし。ほんとまだ、バラバラですね。
もう脱退されましたが、アコースティックギター&コーラスとして市山さんが在籍されていましたが。
梶谷:他にやりたいことがあったみたいで。そういうのを見つけたみたいで、熱量的に同時進行は難しいということで。僕らも僕らで、バタバタリリースしたりとか、本人の生活を無視したようなスケジュールとかっていうので苦労かけたところもあったので、皆で話して、そういうことなら別々でやろうか、となりまして。今は東京の方でやってるみたいで。
今回のアルバムを聴かせていただいて、今のMILKBARにアコースティックギターの音はすごく合うなと感じました。
北小路:大澤が入って幅が広がったんやと思うんですよ。アコギ入れる隙間とかも出てきたし。サウンドが柔らかいものになってきた。だからかも知れないですね。
ライブでは直也さんがアコギも弾かれるのですか?
北小路:いや、僕は基本的にアコギは弾かないです。やっぱりエレキギターでやってますね。別に楽器にこだわることはしたくないので、ピアノを弾いたりとかアコギでもいいんですけど。MILKBARが3人でやってきた時の、偶然でも生まれたそういうものに自信を持ってたりするので。そういうところと、うまく繋ぎ合わせものが「今」やと思うんで、あんまりアコギはメインでは弾かないですね。
直也さんはブログにて「バンドマンから音楽家へ」シフトした、と書かれていました。この意味は、分かりやすく言うとどういうことでしょうか?
北小路:僕、ミニマムって嫌いなんですよ。これは人それぞれ捉え方があると思うので、あんまり誤解は招きたくないんですけど、「バンドマン」という言葉の性質上、すごく僕はミニマムな世界観をいつもイメージしちゃうんですよ。悪い意味じゃないんですけど。ただ、僕らバンドをやってる人間とか、そういうことじゃなく単純に「音楽を生み出す人間」って言いたいんですよ。バンドサウンドにこだわった何かとかじゃなくて。音楽っていうものってクラシックから歌謡曲まで、北欧から南米の民族音楽、色んなものをイメージした総称の名前じゃないですか。それら全てを網羅した、「音楽」を作る人。僕らは、そういう、バンドサウンドに固執しない、純粋に音楽というものを作りたいと思うんですよ。だから、「バンドマン」という肩書きがすごく邪魔になってきたんですね。音楽家MILKBAR集団でいないと、自分の楽曲と肩書きが合わないと思っちゃって。
めちゃめちゃ、土佐弁で言うと「こじゃんと」でかいですね!同じくブログで「解散の危機に直面」といった内容も書かれていましたが、差し支えなければその理由、また解散せずに「音楽家MILKBARとして、在りつづける」と決めるに至った心境や経緯をお聞かせください。
北小路:解散とか休止とか、そういうバンドが止まることを意識してた時期って細々いっぱいあって。それこそ寺田が病気で抜けてしまった時とか、僕真っ先に「休止」って言葉出しましたし。事務所との仲が、僕が我がまま言ってしまってるとこで仲が悪くなっていって。何でこれがあかんのかも分かれへんし、何をしたらいいのかも分からへんしみたいな、すごく八方ふさがりになってしまって、ただただしんどかったんですよ。もともと「何かをやれ」と言われるのがすごく嫌いな人間なんで、でもやっぱり要求される訳じゃないですか。そういうのがすごくストレスやって、ホンマ単純に向いてないんやな、俺はと思った時もあったり。だから、とりあえず「やめませんか」と。「事務所やめるか、俺らやめるか、どっちかしませんか?」くらいの選択肢をメンバーに投げたこともあったし。アル中みたいになって、倒れたこともあります。
ええ!?本当ですか。。
北小路:本当、弱いんで、僕も。味方なんか誰も居らへんってなって。ちょっと病んでた時期があって。そういうのもあったんですけどね。ありがとうございます。
寺田:何や、それ(笑)。
北小路:MILKBARとして在り続ける、「持続する」のと「在り続ける」のって、全く意味が違うんですよ。「持続」っていうのは、僕の中ではMILKBARを続けること。ライブをして、就職するんやったら就職して、バンドをやり続けるっていう。バンドをやめさせないことを大前提とした「持続」。すごい保守的なんですよ、僕にとってそれは。でも、「在り続ける」とか「存在し続ける」って、自分らを今いるポジションから動かしていかないとなり得ないんですよ。というのも、「存在し続け」られたり「在り続け」られてるって、100 %とは言わないですけど外からの支持だってないと無理なんですよ。それを自分達が勝ち取りに行くためには、自分達がちゃんと動いていかないと、成長し続けないと無理なんですよ、音楽家やし。だからこそ自分達は、どんどん前に前に進んで、面白いこととかすごいこととかを、逐一出していかないとダメだと。それが僕の中で「在り続ける」、MILKBARとして「存在し続ける」大義なんですよ。
常にポジティブな前進が必要であると?
北小路:後退でもいいんですけどね。傷ついてもいいんですよ。ただ、「ここの場所に居るための努力」なんて必要がない。だから、実家から出ろってことですよね(笑)。一人暮らししてみなさい、ぐらいの感じに近いんじゃないかなと(笑)。
そういう風に、昔から思われていたのですか?
北小路:すごく昔から疑問になってたことがあって。バンドをやってて、ライブハウスに出て、ライブハウスの人だからって訳じゃないけど、絶対言われるのは「売れたいんでしょ?」ってことじゃないですか。売れるためにはどうしたらいいんだろう、あそこと繋がってどうこうしてっていう。でも、「一言でもうち売れたいって言ったか?」って。本当に売れたいの、そのバンドは?みたいなことも思うんですよ。でもバンドをやる上で「売れる」っていうことが大義名分になってて。そうでないとやってる意味がない、お金欲しいでしょ、生活したいでしょ、これでつって。実際、生活したいと思ってたしやりたいと思ってたんですけど。事務所に入って事務所で挫けて、自分ら1人になった時に、本当にそれって、言われてることって正しかったんかなと思って。そこをしないと生きていけない訳でもないし、自分達だけで出来ることって一杯あるのに、最初からそっちを頼って何かをするっていうのは、多分自分には向いていないと思って。で、事務所を立ち上げて自分達でリリースとか全てのことをやった時に、そう思いましたね。音楽じゃない部分でメンバーと関わることが多くなって、何をどうしたらいいのかっていう話とかをすごくして。「あ、全然生きていけるこれで!」と思ったんですよ。誰かに媚び諂うのは本当に向いていないから、そういうことをせずとも全然生きていけるし。自分達が死ななけりゃ、誰も死なないと思って。大事なものが、シフトチェンジした感じです。
事務所を抜けて自分達で動き始めたところ辺りから、そういう心境ということですね。
北小路:地に足着いた感じです。

2. 『Detritus』リリース

それでは、2/18リリース待望の1stフルアルバム『Detritus』についてお伺いしたいと思います。まずはリリースおめでとうございます!!
全員:ありがとうございまーす!
「ついに!」「ようやく!」ですね!リリース直前の今、どのような心境ですか?
北小路:MILKBARというバンドの形が目に見えて分かる、すぐ分かるような作品がやっと出来たなと思って。1作目からずっと言ってて、MILKBARっていうバンドが分かる作品をちゃんと作ろうぜって言いながら、あーでもないこーでもない、全然違うつってどんどん来てて(笑)。ようやく理想です、自分らの。今のMILKBARの理想的な作品が出来たなと思いますね。
では、MILKBARとして名刺代わりの1枚と言えますね。
梶谷:その通りですね。
アルバムタイトルの「Detritus」という言葉、すごく難しい言葉ですね。このタイトルを選んだ理由をお聞かせください。
北小路:「Detritus」の意味って、海洋学用語で、「Marine Snow」とかと同じ対をなす言葉なんかな?海の中の微生物の死骸とか魚のフンであったり鱗だったりとか、そういう「要らなくなった排泄物」みたいなものの漂っているものを「Detritus」って言うことなんですね。このタイトルをつけるのもすごく賛否両論あったんですよ、実は。イメージ的に「Detritus」の意味を話すと、すごくマイナスなイメージ。
言葉の説明からすると、そうですよね。
北小路:ただでも、僕ら的には、自分達がMILKBARとして生まれて、今に至るまで生まれてきた楽曲って、成長していくんですよね。曲って成長するから、ある一定の時から自分のもとから離れるんですね。離れたとき、また違う解釈になって、新しい気持ちで演奏できたりするんですけど。そうやって出て行ってしまった自分達の楽曲だったりとかをアルバムに詰めて人に渡すっていう。自分達から出たものの意味?一番すごく安易になった(笑)?
全員:笑
梶谷:色々あって、そういうのを出し切って、それって海洋学的に合ってるかよく分かんないけど、結局排泄物がプランクトンになったりとかして。ならないですか?
北小路:排泄物はプランクトンにはならない。。
梶谷:失礼しました(笑)!誰かに聞いたんやけど(笑)。
北小路:排泄物からプランクトンは生まれない(笑)。
梶谷:「Detritus」のあれは、全部が排泄物ならずに、プランクトンにもなるっていう風に聞いたけど?
排泄物を多分、プランクトンとかが食べて、それをまた別の魚とかが食べて、ということですよね?
梶谷:そう、連鎖するということです(笑)。
この作品を食べてというか、そこからまた次の作品が生まれていく、的なことですね?
梶谷:僕はそう捉えてました。
北小路:なるほど、そういうことね。
梶谷:合ってます、多分(笑)。
それでは、収録各曲について、お伺いしたいと思います。M1「petronoise」これは造語でしょうか?
北小路:造語ですね。
どういう意味でしょうか?
北小路:「petrograph」っていう言葉があって、1万年前に存在してたって言われてる世界共通言語なんですよ。まだ言葉がないと言われていた時代にpetrographという象形文字があったんですって。それが世界各国で共通して見られるらしいんですけど、そのpetrographをもじって、「petronoise」にしたんですよ。というのも、次の曲「TICTAC」に繋がっていく伏線みたいなものなんですけど。子供の声と時間って、絶対に自分達が通ってきたものだし、どっかから聴こえる雑響音って言うんですかね?意識せず聴こえてしまった音とかっていうものを組み合わせた、メランコリックな世界なんですよね(笑)。
梶谷:雑になってきた(笑)。
北小路:これはね、「TICTAC」を喋った方が早い(笑)。
ではM2「TICTAC」についてお伺いします。この曲のモチーフは、やはり「不思議の国のアリス」ですよね?
北小路:もともとはそういうイメージやったんですけど、何か書いていくうちにすごく変わっていって、自分の中で。自分が昔経験した時の感じ・感情と、今それを同じく、歳を重ねた自分が経験した時の感情・感じ方っていうのは全然違うなと思って。歌詞の内容で時間軸だけを変えてるんですよ、1番と2番で。幼い時のことと、2番は同じことを見てるけど歳をとったときの感じ方っていう風に捉えてて。僕らは時間というものに縛られて生きているし、時間の流れみたいなものをすごく書きたかったんですよ。それを聴いてもらうための、「petronoise」っていう、自分達が生まれる前とか生まれてきた後の空気感というか、そういうところにシフトさせたいというか。それを置いとけば、多分リピートしたとして最後の曲の「ルーゼ」から、すぐ戻って来れる。
なるほど!それがあっての「petronoise」、からの「TICTAC」なんですね。通常aliceは女性として解釈されると思いますが、「Mr.alice」とされていますね。
北小路:性別がない、男でもないし女でもないっていうことにしたくて。不思議の国のアリスって、兎を追って穴に落ちてね、切磋琢磨する訳じゃないですか(笑)。雑な比喩表現ですけど、生きるとかって、やっぱアリスとか投影出来ちゃうんですよね。だから、自分達全員、男・女関係なく、時間の中を切磋琢磨して生きている感じ(笑)。それが、「Mr.alice」っていう言葉の語源です。
おかまちゃんではないのですね(笑)。
北小路:「alice」だけやったら女やもんな。
梶谷:そうやな。
M3「君に涙、僕に涙」ですが、この曲含め、過去のリリース作品に収録されている楽曲は再録やリミックスですか?
北小路:再録はしてないですね。
梶谷:リミックスはしていますよ。
この「君に涙、僕に涙」はリミックスですか?
梶谷:そうです。
この曲のPVは、3年前にすでに存在していたと思うのですが、youtubeでの公開は最近ですよね?
梶谷:そうなんですよ。色々大人の事情がありまして(笑)。ベストのタイミングで出そうということで、当時出さずにストックしてたんですが、なかなか時期を見失っていってお蔵入りしてたのがあるんですけども。今回のリリースに合わせて、ようやく。
M4「きらり」は、大澤さんのキーボードや歌詞に「和」を感じますね。
北小路:これは、キーボードのフレーズに関して「どうしようか?」みたいな話になっていまして。僕が、「こんな感じに弾いて」ってなって弾いてもらったものをほぼ移植してやってもらっている状態ではあるんですけど。田舎で森があって、神社の鳥居があって、山の階段を上に上がっていって、そんなくらいの田舎の風景のある、歌詞のイメージだったんですよ。そういう風景をイメージしてたら、「和」になっちゃいました。
分かります、その情景。
北小路:ギターのフレーズもね、久石譲的になっちゃった(笑)。
梶谷:久石譲的(笑)。ピアノもそんな感じですよね(笑)。
この曲は特にリフレインが多用されているようにも感じます。
北小路:ほぼデモから変わってないですよ。曲構成があれが一番いいし、聴かせたいところは「きらりきらり」っていうところだったりもするので、リフレインしていますね。もともと僕の作る曲って、リフレインめっちゃ多いんですよ。コード感だったりとか。
そうなんですか?
北小路:4コード以上使わない(笑)。「腹に精子とフラッシュバック」とか、2コードしか使っていない(笑)。延々、Aメロから最後まで、ずっと同じテンポとフレーズなんですよずっと。そういうのが好きなんですよ。
意外!ではradioheadの「creap」とか好きですか?
北小路:好きですし、最近言われたのが、「ハウス・ミュージックのやり方に似てるね」って言われて。「ハウス」とか聴いたことも通ったこともなかったし、最近聴いてみたら、言いたいことは分かると思って。
じゃあ、直也さんの作曲において、サンプリング的な感覚はあると?
北小路:僕好きですね、多分そういうのが。だからコードは、延々リフレインしていますよ。で、たっしーがいつも困るんですよ(笑)。
梶谷:全員困るでしょ、あれ(笑)。歌詞がね、最後に完成するので、それまで構成が分からないっていう(笑)。「ここ、どこですか?」っていうのがありますね。
寺田:二人でスタジオ入る時とか(笑)。
梶谷:だから、リズム隊の練習がすごくしにくい(笑)。「ここは何メロなんや?」っていう(笑)。
逆に、どう変化つけるか、といった、プレイヤー的な腕の見せ所では?
梶谷:そうですねぇ。だけど、いやねぇ。。構成が、後で歌詞が入った時に変わったりするんで、そこはもう7年間やっているんで慣れましたけど(笑)。
では、色んな構成を展開していって、展開していって、みたいな感じの曲は、あまりないのですね?
北小路:シンガーソングライターさんとか、弾き語りさんの楽曲の作り方と、全く違うと思うんですよ。
実はMILKBARの音楽はFUNKだった、みたいな(笑)?
北小路:FUNK全く弾けないですけど(笑)。
次の曲が、M5「さよなら、まぼろし」ですが、「ルーゼ」の2個目のコードが頭のコードですよね?
北小路:合ってます。僕、さっきも言ったみたいにコードをリフレインする人間で、逆に言うとコードを全く知らない人間やったんですよ。だから、自分が気持ちいいと思った響きしか使わへんくなってたら、この有様で(笑)。コードに対する興味が昔からなくて。だって、CとGとAmとEmFとですごい曲書けちゃうじゃんと思って。そう考えたら、俺もう全然いいと。命懸けるの、コードとかじゃねえって思って。最近自負してるのが、「京都一、簡単なバンド」(笑)。
いやいや、そんなことないでしょ(笑)。「ルーゼ」との関係性のようなものを、意識されている曲ではないですか?
梶谷:MILKBARっていう、コード進行がメランコリックでセンチメンタルな感じの空気感が、この曲にはあると思いますね。自分らでも、「MILKBARの響き」やって感じはあります。
そうですよね。「MILKBARの響き」を感じます。
北小路:そういう点で、自分らも意識はしてますけどね(笑)。
梶谷:うちらの「王道」よね(笑)。
「やっぱ、バーモントカレーだよね」みたいな?
梶谷:近いものがある(笑)。
北小路:バーモントです(笑)。MILKBARのバーモント(笑)。
M6「5月14日、雨の日に。」は、後半展開が激しく直情的になりますよね。そういう展開は、逆にMILKBAR的ではない感じで?
北小路:そうなんですよね。第三者の方に入ってもらって、第三者視点で聴いてもらって、実験的と言うかこの曲がどういう展開になっていくのかなっていうのが知りたくて。自分達だけやったら出来ひん発想やったりとか盛り込まれてるので。より、楽曲の激情感というのがアップしたなと思ってて。ドラム録りとかもこだわりましたからね。
梶谷:大変でしたね。1回、僕らの作品の『逃げ出してしまいたい』に収録されてるんですけど、別バージョンで録り直して。ドラムはハイハットを抜いたりとか、スネアのミュート具合とか、最後のサビで盛り上がるんですけど、サビだけは別録りしてるんですよね。
え?そうなんですね?
梶谷:サビからはチューニングも変えた別のドラムで。そこまでの過程はこれで、そこで切って。別録りでって、すごいことになってましたね。ノーミュートでやってるんで、バスドラムもノーミュートで、フルストロークで。何も聴こえないです(笑)。僕だけ気持ちよくて、周りは何も入れへんような状態で。びっくりするくらいの音でやってましたね。
では、ライブではそういうトランス状態に入るような曲ですか?
梶谷:サビでハイテンションではいきますけど、そこまでやってしまうと、色々具合が悪くなるんで(笑)。一番聴かせたいのは歌なんで、ライブでは調整します。
北小路:レコーディングならではのね。やりたいことやれた的なね。
タイトルの「5月14日」は実話に基づく日付ですか?
北小路:皆に言われるんですけど、全く実話でも何でもなくて。5月に作った訳でも何でもないんですよ。でも、僕の中でルールをすごく決めてて。曲のメロディとかが出来た時に、雨振ってる日しか、俺はやらへんって決めてて。その3日間、雨降ったんですよ、ずっと。「すげえ!」と思って。サビのメロディ出来た時とか、自画自賛ですけど泣きそうになって。すげえいいの出来たと思って。歌詞もちゃんと書かないとと思って、ずっと雨降ってくれてるから。ほんとすんなり出てきて。で、どうしようかなと思ってたんですけど、普通のタイトルも難解だし、ちょっと小説タイトルや映画タイトルっぽいものをつけたいなと思って。別に何の日でもない、5月と14日ってやっとこうと思って。何の日でもないものを選びたかったんですよ。
2月だったら大変ですものね(笑)。
北小路:バレンタイン(笑)。よくよくその後考えてみたら、年って変わるから5月14日は何かの日になっちゃうかも知れない。
梶谷:お客さんとかファンの方が、「5月14日はMILKBARの日や」言うて皆さんが聴いてくれたりとか、盛り上がってくれたりとかしてて。僕らは5月14日は何もしていないので、そろそろ何かしようかな、みたいな(笑)。逆に追い込まれてるみたいになってて。ファンで連結して、5月14日は「MILKBARの日」って言ってくれてて。
それは面白いですね!ファンの方の間では祭りの日!
梶谷 :何もしていないです。ライブもしいひんし何もしないという。そろそろね(笑)。
では次の5月14日までに、wikipediaに「5月14日はMILKBARの日」と載せましょう!M7「THE JOSHUA TREE」は、なかなかこのタイトルを使うことは大胆なことだと思いますが。
北小路:「やめとけ」って色んな人に言われて。「何でや?」って思って(笑)。
このタイトルの曲は多数存在するとは思いますが、U2の名盤にもありますよね。
北小路:やっぱりそれが一番デカいですよね。別に恐いものみたいな感じもなく、すんなりとはつけちゃったんですけど。それよりも、その楽曲を作った時が、うちの寺田が抜けちゃって、作り始めた曲なんですよ。だから自分の中ですごく思い入れがあるんですよ。退廃的なことを言っちゃうんですけど、木が揺れるじゃないですか。でも、揺れない木があるんですよ、風が吹いても。なんでやろ?と思ってたら、その木って葉っぱをつけてないんですよ。
なるほど。
北小路:だから、揺れないんだ、みたいな。それが自分の中で響いちゃって。何も持たなければいいってもんじゃないけど、揺れないようにする方法があると思って。で、「THE JOSHUA TREE」という曲を作って。歌詞にそういうのも盛り込んだっていう、本当に気持ちの入った曲だから、U2がつけたとかもういいやって思って。逆に、僕の認識だとU2のって小文字やったんですよ。ほな、大文字にしようと思って。「俺の方が大きい!」と思って(笑)。
ミニマムはダメですもんね(笑)。これは実際に、揺れなかった木がJOSHUA TREEだったのですか?
北小路:JOSHUA TREEは多分、日本じゃ生えてないですもんね。荒野?砂漠みたいなところに生えている木で、背も小ちゃくて、みたいなんやと思うんですけど。とりあえず「揺れないもの」をやりたくて。でもそこは、音楽聴いて来た人間やから、JOSHUA TREEしか思い浮かばなかったんでしょうね。語感もすごく合ったし。
このタイトルはそんじょそこらの小さい人間にはつけられないですよ。。それだけ、揺らぎなきものがあったのでしょうね。
北小路:これが出来て、東京のレコーディングスタジオで最後終わったんですけど、泣きそうになりましたよ、本当に。「むちゃくちゃいいな!」と思って。メンバー全員で、出来た時は感動的でしたね。
レコーディング時には、たっしーさんも復活されて?
寺田:はい。
梶谷:復帰してすぐやったんじゃない?
寺田:この録音、3年くらい前かな?『ソーダ水の気の抜けた朝に』のワンマンの時に、1回3ピースで「THE JOSHUA TREE」をやったよね?今とアレンジとか全然違ったんですけど。帰って来たら曲が出来てて、「やんの?」みたいな。練習、、あれ?みたいな(笑)。
梶谷:そんな感じでしたね。
北小路:やっちゃえやっちゃえ精神ですね(笑)。
梶谷:病院や、言うてんのに(笑)。
寺田:退院して2日後にライブしてたな、、長岡京ソングライン。あれは僕、見に行こうと思ってたんですよ、MILKBARを。「じゃあ出ろ!」って言われて(笑)。
北小路:見るんだったら出ろよって話ですよね。「退院おめでとう!出ろよ」つって(笑)。
寺田:死にそうでしたけど(笑)。
M8「hello lina」は後半にはストリングスも絡んでくる7分強の大作ですね。どの曲も好きなんですけど、僕個人的に1番好きな曲かもしれません。
北小路:新海誠さんの『秒速5センチメートル』という作品の中の、桜花抄という話がすごい好きで。それを自分の中で解釈して作った曲なんですよ。だから、自分の中でその主人公の年齢設定はすごく低くて。ピュアだったり、抗うことの出来ない現実の残酷さとか、そういうのがふんわりした感じで全体に詰まってるから、すごくメンバー全員好きなんですよ。不思議よね、全然盛り上がらない、演奏的には「ばーん」とはいかないんですけど、全て成り立っちゃうんですよ。
梶谷:ちなみにこの曲は、MILKBARの中で一番コード展開してるんじゃないか、っていう。
北小路:時々、コードをバカみたいに増やすことがあって。でも、全然増やさない時も、そういう波があるんですよ。自分の中で決めてるのは、全然コードを使わないループする音楽なんですけど、「出来ちゃったらもうしゃあねえじゃん?」っていう発想のもと、コードをエラい増やす時があって。これは本当、コードをめちゃくちゃ使ってます。
寺田:今作で、一番古い曲ですね。
梶谷:2008年結成なんですけど、2009年くらいの、まだ持ち曲が5曲くらいの時の曲なんで。
ええ?その時期にこのような大作が?歌詞的には特にカタカナが多いようにも感じました。
北小路:可愛らしい世界観でもあるので、童話みたいなもんでもあるなとは思ってて。そっから来てるのかな?あんまりカタカナということは意識してないですかね?
梶谷:この曲は歌詞が3パターンくらいあったんですよ。
北小路:そうやわ!
梶谷:演奏が形になってきてた頃に、練習でその歌詞を急に「ビリビリ」ってやり出して。「やり直す」みたいな感じが、3回くらいあってようやく落ち着いた感じ。
寺田:そやそや思い出した、歌詞がすっごい難航してた。
北小路:「博士の飛行船」とか、初めそういうタイトルやったね。
linaさんは、市山さんだったりするのですか?
北小路:めっちゃ言われるんですよ、それ。でも俺、「hello lina」を作ったのが市山と出会う前なんですよ。だから、全く知らなかったし、でもめっちゃ言われますた(笑)。「付き合ってるんですか?」みたいな(笑)。
梶谷:その当時僕が聞いたことですけど、サザンの「いとしのエリー」みたいな、ああいう言葉の響きでlinaってつけたって言ってたやん。実際人物としての「lina」が存在するっていうことも、頭になかったので。
M9「Shelly」のPVでは、バンドnurmuttのドラマーにして、スタジオラグ河原町店スタッフ:金倉がこじゃんとフィーチャーされていますね(笑)。彼女の起用にはどういういきさつがありましたか?
PVを制作してもらっているチームがいるんですけど、その人達と脚本の話をしている時に、僕らはPVで女の子を使うというのがよくあったので、女の子を一人入れたいなというのがありまして。普遍的な感じの曲で、そういう雰囲気の、普通といったら失礼なんですけど、普通の女の子でいい子いませんか?ってメンバーで話してたら。「あやのちゃんがいいんじゃない?」と(笑)。当時対バンとかで知り合ってたので、全員一致で、「あやのちゃんがいい!」となって。
逆に、起用していただきありがとうございます!
北小路:本当に良かったですよ。度胸あるなって思いましたもん。
梶谷:対バンはしてたんですけど、打合せで初めてメンバーと深く喋ったんですが、ちょっと「大丈夫かな?」という感じはあったんですよ、天然感というか(笑)。でも実際撮影が始まったら、「すごいな。ちゃんとしてる」って思って。
曲自体は3年前にすでに存在しましたが、今回あらためてPVを制作されたのは、やはり推し曲としてPRしていく感じでしょうか?
北小路:時間がたって見てみると、本当に色褪せないめちゃめちゃいい曲だなと思って。録音も奇跡的なテイクでどんどん録れていって。レコーディングした時にメンバー全員が感じた「本当にすごいものが出来たな」っていうのが、未だに消えないんですよ。
梶谷:これは、テイクも皆で一緒に録ったんですよ。クリックも聞かずに「いっせーの、どん」で。上モノのギターとかは後で乗せてますけど。基本のリズムトラックは練習したそのままで録ってみたら奇跡的にがっちりはまったりして。リズムがブレたりとかもするんですけど、それもいい感じに全部ポジティブに動いて、「これはいいなあ!」となって。
北小路:本当に自信持ってる、タカラモノなんで、是非聴いてもらいたいという気持ちはあります。 
PVの反響はどのような感じですか?
北小路:「Shelly」もそうですし、「君に涙、僕に涙」もそうですけど、イメージしていた世界観と違う切り口できてるとか、悪い意味じゃなくてそういう意見も多くて。世界観が広がったっていう意見もすごくあります。逆にそういうところを意識してなかったのもあって、「こういう捉えられ方するんだな」って自分達もワクワク・ドキドキしましたね。
今作の収録曲でPVもあるのが、4曲ですよね?1stフルアルバムで4曲PVって豪華ですね!
北小路:贅沢です(笑)。
寺田:ありがとうございます(笑)。
M10「愛と死」は歌詞もサウンドも、「和」テイストが満載ですね。
北小路:全開です。時代背景も明治とか大正とかイメージしてて。武者小路実篤の『愛と死』という小説作品が昔からすごい好きで。それをオマージュした歌詞の世界観を表現したくて、擬古文というスタイルをとってたりもしてて。間奏で「語り」が実は、入ってたんですよ。
梶谷:皆で、一人ずつ語ってたんですけど。
北小路:音源ではやめちゃったんですけど、2/15のワンマンではそれを披露しようと思って。
「語り」ありバージョンで?
北小路:「語り」がまた、いいんだよね。
梶谷:「語り」は良かったんですけど、リーディングしてる者が良くなかったんでね。我々なんですけど(笑)。
北小路:「語り」を入れなくても、全然成立しちゃったんですよ。「語り」を入れちゃうと、情報量が逆に多過ぎて、お腹いっぱいになっちゃうんですよ、音源だと。「要らねえな?」って「どっか別のタイミングで」ってことをしてたら、ワンマンでと。
この曲はサビで四つ打ちが登場しますが、MILKBARの楽曲ではあまり四つ打ちは登場しないですよね?
梶谷:四つ打ちは、『THE JOSHUA TREE』の頃から実は登場しています。深く理由はないんですけども、今でも流行ってますけど、当時1回取り入れてみようかなっていうので。「君に涙、僕に涙」とかでも四つ打ちはしてるんですけど、ストレートな四つ打ちという形では叩いてないので。1回、そういう「流行」を取り入れてみようかなっていう時期が、『THE JOSHUA TREE』の時期やったんですね。
北小路:好奇心でね、取り入れてみたら。出すタイミングにはブームは去っていた(笑)。
M11「世界を包丁で切り分けろ少女」はまず、タイトルがすご過ぎますね(笑)。
北小路:俺、喧々してた頃ですね(笑)。
梶谷:『ソーダ水』より前、めちゃくちゃ古い曲ですね。
寺田:4年前くらい?
北小路:3ピースの僕らのサウンドが、凝り固まりに固まってた時期の作品ですね。
ミナミホイールで入場規制かかった頃あたりですね?その頃、喧々されていたのですか?
北小路:大阪のワンマン前じゃなかったかな?
梶谷:ワンマンの時に作ったけど、曲自体は前から。
歌詞の内容が難解に感じますが、構わなければ解説をお願いできますでしょうか。
北小路:解説すか?僕ね、持論があって。歌詞とかって、僕らが喋るの日本語じゃないですか。だから意味分かるじゃないですか。でも、英語とかの楽曲って、何言ってるか全く分からないじゃないですか。で、それを想像するじゃないですか。その想像するのが正解じゃないかと思っていて。「山のことについて歌っている」と思ってて、和訳の歌詞を見たら全然「海」やったとか。でも、俺「山」って思ったし俺が正解、そういうイメージで入ってきたしって。だから、歌詞を説明して、「こういうもんなんです」って、「TICTAC」でもう言っちゃったんですけど、制限しちゃうと何かアレだなって思うのがありますけど。
梶谷:「ありますけど。」って説明すんのかーい!
全員:爆笑
北小路:これは僕、村上春樹の世界観をすごく出したかったんですよ。あの人、凄かったのが、例えば今のこの状況を説明するのに3ページとか使うんですよ。語彙力が高過ぎて、素晴らしいものを作ってて。この曲、歌詞をめちゃめちゃ書き直してたんですよ。この歌詞が出来る前の日?いや、次の日か。大阪かどっかでライブするつって。まさか歌詞が出来へんままその曲ライブでするか、みたいになってて。前日もめっちゃ考えても出来ひんし、「もうええ、寝よ!」って思って寝たら、夢におばあちゃんが出て来て、俺ものすごい泣いて。目が覚めて、「何か書けそう」と思ってぶわーって書いたらすごいのがいっぱい出て来て。
すごいのが出てますよね(笑)。迸っています(笑)。
北小路:その当時の僕の生きること全般の全てやったんですよ。今まで生きて来たものの感じ方・捉え方全てやって。それを村上春樹とか3ページとか使ったりするじゃないですか。それくらいの情報量でぶわーって書けて。「生きる」です、本当に。
「生きる」?
北小路:「生きる」?「生きた」?「生きました」。これ難しいんだよね、本当に。
寺田:この歌詞、難しいよな。
北小路:何て説明したらいいんだろうね?未だに言われるんですよ、説明を。出て来ちゃって出しちゃったから、「説明って?」みたいになっちゃうところはあるんですよ。
分かりました。村上春樹さんを読み直すところから出直してきます!M12「ルーゼとフランと美しい雨の街」は『ソーダ水の気の抜けた朝に』でもラストに収録していましたが、やはり締めくくりはこの曲で、という感じでしょうか?
北小路:そうですね。本当に代表曲になって。
僕自身も、この曲は「THE MILKBAR」という印象で。
北小路:他の方にもそれは本当によく言われますね。もっと始めはスローで、めっちゃバラードやったんですよ。メンバーのフィルターを通したら、自然とこうなったんでしょうね。
寺田:すごく出来るのが遅かった、この曲は。出来るまでがすごく長かった。
前回のインタビューでも、歌入れの直前まで歌詞を書かれていた、というお話しがありましたね。
北小路:譜面台にmacを置いて、歌っていながら書いてた(笑)。
まさにリアルタイム!
北小路:最後の、「遠い昔、君と見てた~」とかっていうのは、もう歌詞をなくして、延長線上で出て来た言葉で勝負しようと思って。今じゃ出来ることじゃないくらいの、すごいパッションです。
「雨」「夕立」「水溜り」等、雨に関する言葉が7曲に登場します。直也さんにとって、「雨」とは特別な存在なのでしょうか?
北小路:僕、「雨」という言葉をすごく使う人で。昔から「雨の日に聴いて欲しい」とかっていう気持ちはずっとあって。生活に密着するために、とかっていう訳でもないんですけど、「雨が似合うバンド」とか「雨の日に聴きたくなるような音」とかっていう風なものに憧れてるんです、ずっと。TUBE的な感じ、じゃないですか(笑)?夏になったら聴く、みたいな(笑)。雨が好きなんですよ。雨が好きというか、部屋の中で雨の音を聴くのがすごく好きで。
また、全体的に「別れ」や「過去の恋」に触れた曲も多いですね?
北小路:別に特別恋愛経験が多い訳じゃないんですよ。ただ、性格的にね、「明るい」というのがなかなか書けない。出会って、楽しいっていうところの感じって、あんまり表現できないんですよ僕。というのも、芸術とかそういうものって負の感情の産物やとずっと思ってて。自分がしたかったこととか、やりたかったこととか、願望だったりっていうものが、自分を動かす原動力になって、作品が出るって思ってるんですよ。というのに僕の性格も合わさって、付き合って楽しかった時期よりも、楽しかって分かれてしまうこの時期の方をいつもピックアップしてしまうんです。そこに対する情熱が多分すごいんやと思います。
ロマンティストですね。
北小路:分かれ方ってすごい大事じゃないですか。別れを言う人って、嫌われる努力しなきゃいけないって思ってるんですよ。そういう美学的なものがすごく好きで、そっちをフィーチャーしてしまうんですね。ありがとうございま~す。
(笑)今の「別れを言う人って、嫌われる努力しなきゃいけない」ってフレーズ、素敵ですね!僕の勝手な印象かも知れませんが、初めてお会いした頃のMILKBARは「攻撃的」な面の印象もあったのですが、今回の『Detritus』を聴いてとても「包み込むような」印象を受けました。
北小路:う~ん、どうなんでしょうね?大分丸くなりました?
梶谷:色々、色々あって、、サウンド的にも大人になったなという感じはします。当時は、リズム隊の話をすると感覚でいっちゃってて、いい意味で「エモーシャル」なところはあったんですけれども。そこはあまり頼らなくなったというのは、事実かな。
北小路:でも、アルバムやからそう思うんじゃないかと思ったりもするんですよ。もともと自分らの王道的なサウンドって、8ビートのストーリー性のある楽曲だったりする、「ルーゼ」とかね。だったと思うんですけど、それがアルバムっていう十数曲っていうキャパで見れるから、すごくイメージが柔らかいものになったのかなと思ったりしますね。
ジャケットデザイン:ミタニ タツヤさんについて、どのような方かお聞かせください。
梶谷:高校の時の同級生で、クラスメイトでもありまして。
北小路:1作目からずっとジャケットは担当してくれてて。
梶谷:初めは、やってくれる人が回りにいなかったので、友達に頼むという感覚からだんだんと癖になっていき、今では僕らの作品では全てやってくれています。意見も言ってくれるし、同じ立ち位置でアートワークを担当してもらってるので。
北小路:ミタニさんじゃないと無理ですね。
梶谷:昔から知っているので、僕らがどうなっていってるのかも全部知ってるし、したいことも大体分かってくれてる。自分の意見も言ってくれるタイプなので、いいパートナーとしてやらせてもらっています。
今回のジャケットもインパクトありますね。人の顔、ですよね?このつぶつぶが、Detritusということでしょうか?
梶谷:今までは北小路とかが色々イメージしたものを具現化してもらってたんですけど、今回は『Detritus』でこういうイメージやというのを伝えた上で、ミタニ的な解釈で全部任せたんですよ。ミタニが作る、今までMILKBARを見て来てくれてた中での、『Detritus』というイメージをジャケットにしてくれって頼んで。ミタニが全部考えてくれて。
メンバーの皆さんが想定していたイメージとは合致しましたか?
北小路:全く、違いましたね。逆にすごいなと思って。まっさらで、何の先入観なく見れたんですよ、写真が来た時に。その衝撃の方が強くて。
梶谷:すごいの出して来たなって。
北小路:全く分かんない、何これ?って。でも本当面白いなと思って。
梶谷:「こうしてくれ」「ああしてくれ」でなくて、ミタニが思うものでいいからって言ってて。それがメンバー的にも畝るものだったので、良かったなという感じで。
まさにコラボレーション、ですね!
北小路:ブックレットの中も、すごいですよ。
梶谷:すごいこだわってくれてて。今回ホンマにミタニさんのベストアクト的な、アートワークとしてすごいものを作ってくれましたね。
中身も楽しみですね!そしてそれを見るには、現物を手にするしかないですよね。リリースが2月18日(水)全国流通ということですが、タワーレコードとビレッジバンガードでは、それぞれ購入者特典がつくのですね?
梶谷:タワーレコードは、「5cmの夕暮れ」と言いまして、僕らの昔の曲があるんですけども、完全未発表曲です。ライブでもやっておりませんので、この音源だけでしか聴けないという未発表曲をつけます。ビレッジバンガードの方は、ライブでたまにやってたんですけど最近はやっていない「恋がしたい」という曲がありまして、それを北小路が弾き語りをしているバージョンで、これも未発表ですね。
ということは、ファンの方はタワーレコードとビレッジバンガード両方でゲットしてコンプリート!ということですね!そして、リリース前2月15日にはワンマンライブ@Vox Hallということで、こちらもまた特典があるのですよね?
梶谷:つきます!僕らがいつもSEでかけている「一掬」っていう北小路直也のソロ作品なんですけども、そちらの音源をこの日限定で配布致します。
ということは、ファンの方はライブにも行かなければならない!これにて真のコンプリートですね!
梶谷:あとインストアライブが決まっておりまして、タワーレコード京都店は2月28日(土)、東京の方ですが3月14日(土)が渋谷のタワーレコード、3月7日(土)は名古屋パッセ店で。これもまた来てもらえると、インストアだけでの特典がまたつきます!
なんとなんと!
梶谷:だから全部来てもらえると、プラスで4曲の音源が手に入ります!インストアのは、CD買ってもらったら引換券がもらえますので、インストアライブ来ていただいたら、そこで僕らが交換するという形なんですけども。
2月15日のワンマンは、ゲストミュージシャンも豪華ですね。総勢10名!これはやはり所縁のミュージシャンが?
北小路:所縁の中でもズバ抜けていいアーティストを集めちゃいました。
相当気合いが入っていると思いますが、この日にかける意気込みをお聞かせください。
北小路:MILKBAR史上、最高峰の演奏と、クオリティと、エンターテイメント性、今あるすべてのものをぶつけた、素晴らしい日、ですよ(笑)。
梶谷:いやほんと、そういう感じです。
北小路:これ以上ないだろうっていうくらいの。
梶谷:それぞれがそれぞれの役割で、一生懸命やってくれてるってところが、こないだのゲネリハで全員揃ってやったんですけど、一人一人が皆プロフェッショナルやなって。僕らが見てたいくらいです(笑)。
寺田:そう!それ思うた!
北小路:絶対、すごいですよ。この界隈でこのライブをするのは俺らしかいない!

3. 今後のMILKBAR

すごい!楽しみにしています!ラッキーセブンの7年目、今後はどのような活動展開をイメージしていますか?
北小路:とりあえず、京都のてっぺんとりたいですね。
梶谷:小さいな、京都って(笑)。でもまずは京一か。
北小路:東京とか行ったりして思ったんですけど、やっぱり地元をちゃんとしないと。愛されたいんだもん、俺(笑)。地元に愛されたいんですよ。やっぱり京都が好きやし京都でずっといさしてもらいたいし、京都から面白いものっていうのを俺らが中心というかなりたいし、逆に外から来る人達からも「京都はMILKBARだね」って言われたいし。大事にしたいという意味でも、一番ちゃんと上にいたいですね。
皆さん京都ですか?
梶谷:皆京都生まれ京都育ちです。
では、ゆくゆくは10-FEETさんのように、大作戦的なフェスも?
北小路:いやーもう、出たい(笑)!出させてください(笑)!
そのステージは僕も見たい(笑)!最後に、2015年はスタジオラグ20周年、一言メッセージをいただければ幸いです!
梶谷:結成当時から、一部除きほぼいつもいい音源を録らせてもらってるので、ほんまに感謝してるというか。次の作品も、その次の作品も、僕ら何か関わらせてもらえたらなと。
寺田:いつもお世話になっております。ラグって、結成当初からずっと関わらせてもらって、すごく雰囲気も好きで。ありがとうございます!!
北小路: 20周年って、僕が9歳の時に出来たってことですよね。僕も音楽を歳をとるにつれてやり始めてきて、自分から生むものもあるし、スタジオラグさんから生まれる音楽とかもあるし、単純に音楽に関わっている先輩として色んなものを見させてもらいたしし、色んな刺激を与えてもらいたいし。かわいい後輩として僕らも面倒みていただけたらと思います。20周年おめでとうございます!
ありがとうございます!!
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