スペシャルインタビュー 騒音寺 2/4|スタジオラグ

スペシャルインタビュー
騒音寺 | スタジオラグ
前回ナベさんへのインタビューで、FUJI ROCKへの出演は一つの大きな契機であったとおっしゃられていましたが、お二人にとってはどのような経験でしたか?
タム:それこそ、さっき出た「テレビに出てるような人達」が出るイベントの最高峰やし、決まった時も現実味があまりなかった。
こーへー:国内外の素晴らしいロックバンドが集まってくる中に、自分らの名前が同じように並ぶっていうのはね。
タム:でも自分らのやってきたことが間違いじゃなかったんだなということが、そういうところであらためて感じられた。間違ったことやってるとは思ってないですけど、そういう結果なりがついてくると、間違ってなかったと思えたし、それが一番デカい形で表れたのがFUJI ROCKかも知れんし。逆にそういうとこまで来たから、帰れない気持ちも固まった、そういう意味でもデカいですね。
最初はちらほらだったお客さんが、演奏が始まるとあれよあれよと集まって来たとお伺いしました。
タム:あれは凄かったね。「そんなに来んといて」って思いましたね(笑)
こーへー:最初は、「現実ってやっぱキツいな」と思ったんですけど。
タム:色んなとこで同時にライブをやるから。俺の後輩もFUJI ROCK見に来てたんですけど、騒音寺見んと他のとこ見に行ってましたからね(笑)ちょうどMy Bloody Valentineかなんかと一緒で「そっち見たい」とか言って。それくらい色んなアーティストがあちこちでやってる中でやったからね。
逆にそう言う名だたるバンドが同時にやる中で、どんどん観客が集まって来たのには、やはりそれだけのパワーがあったのでしょうね。
タム:リアルなパワーがダイレクトに飛んでたんかな、と。でかいステージじゃない分、エネルギーが伝わりやすかった。
こーへー:狭いステージで、お客さんとの距離も近くて、本当ライブハウスと変わらないくらいの距離で。
タム:そういう意味では、いつも通りやれたというか。イベント自体はすごい大きいけど、ライブ自体は普段ライブハウスでやってる感じと遜色なく出来たし、それが良かったかなと。
2012年にはサウザーさん、岡さんの脱退という大きな変化がありました。
タム:ドラムのサウザーの場合は、自分の表現を騒音寺以外でしたいという思いがすごく強くなったみたいで。彼は今新しいバンドやってるんですけど、そっちに専念するということで、それなら仕方がないかと。僕は騒音寺以外でも昔バンドをやってて、そこでも彼とは13年くらいずっと一緒にやってて、いい部分も悪い部分もお互い教え合ってやってきた仲やから、寂しいっていうかショックな部分もあったけど、そこは大人なんで。音楽性というよりは、音楽の捉え方というか、さっきのChaiの話とも一緒なんですけど、どっちが良い悪いじゃなくて、見てるベクトルが違うというのはお互い思ってたんで。向こうから「もっと自分のコアな部分で表現したい」と言ってきたんで、それは仕方ないなと。
こーへー:岡さんの場合は、他のメンバーと熱量と言うか、そういうのに差が出来始めて。
タム:大きく言うば、あの人も、バンドっていう表現の仕方が、向き合い方がバンドとずれていった。時代に合わせる訳じゃないですけど、生き残っていかなければならない。それは「やりたいことを我慢して」ということじゃなくて、「やりたいことはあるけど、やらなければならないこともある」と思うんですね。そういうのはバンドがデカくなっていくと、一人一人の比重はもっと大きくなって行く訳で、そこを皆でカバーしてやっていて。「やらなければならないことをやったから、やりたいこともできたりする」っていうのを、岡さんの場合は「やりたいことだけをやってる」っていう感じやったんが、こーへーの言った熱量というのがどんどん開いていって、バンドとしてはちょっとこれは無理かな、みたいな。
こーへー:お互いにとってそういう状態で続けてても良くないだろうという判断で。急な辞め方やったんですけど。
タム:自分らのやってることがおかしくなるというか、「こうやりたい」と思って足りない部分を悩んでるんじゃないというか。解決する方法が、別でやるしかなかった。
ドラムには素之助さんが加入されました。ファンの方にも意外な人選だったのではないかと思いますが、どういうきっかけでの加入でしょうか。
タム:知り合いの方から紹介してもらって。サウザーが辞めるとなって募集もかけつつ、「いいの、若いのいるし、1回試してみいひんか?」って言われて。「じゃ、やってみます」とやってみたら、見事ばっちりな感じで。
23歳と世代も違いますよね?
タム:騒音寺はもともと世代もバラバラなんですよ。そんなに違和感ないというか、麻痺してるというか(笑)全員ちょうど7つずつ離れてるから。学生の時から一緒に組んでいるというバンドではないんで、逆にメンバーチェンジも柔軟に出来ると言ったらおかしいけど、学生同士・同じもんが集まった同士の強さというのもあるけど、そうじゃない強さが騒音寺にはあると思うんですよ。
素之助さんはお二人から見て、どのようなドラマー、キャラクターの方ですか?
こーへー:ツアーバンドとかはやったことなかったんですけど、元々の出身がハコバン、パブとかで毎日同じオールディーズの曲を演奏する畑出身なのもあって、シンプルな基礎的なことがすごくしっかりしてるし、これから4人でドラムが持って行かなあかんダイナミズムをどんどん身に着けて行けば、さらにいいかなと。
タム:貪欲で何百曲と覚えたりも全然厭わずやるから、とにかく吸収力が凄い。
ウィルコ・ジョンソンも絶賛とのことで。
タム:後ろで全員を見る能力にすごい長けてると言うか。周囲が見えなくなってしまうドラマーって多かったりするんですけど、素之助は大前提として歌がまずちゃんとあるっていうことを念頭に置いて、その都度あらゆるところを見れる。歌う人にとってはやりやすいドラマーだと思います。そこプラス、さっきこーへーが言った「ダイナミズム」、演奏でぐっと持って行くとか、そういうところをもっと出来るようになれば、言うことなしかなと。前のドラマー:サウザーはそれがちゃんと出来てた。彼は良くも悪くもドラマー気質やったから、エネルギーをぐっと上げて行く時のドラムのパワーはすごいものがあったんで。真似をしろとは思わないですけど、もっとぐっと来るとこは出来れば今後いいなとは思います。
ギターが一人減ることに対し、代わりのギタリストを加入するという選択肢もあったと思いますが、敢えて4人編成をとられた理由とは?
こーへー:意外とそういう選択肢はなかったですね、当たり前のように。
タム:リーダーはナベさんなんで、ナベさんが決めたことなんですけど、「もう4人でやる」みたいに。誰か入れようという話にもならなかった。「あれ?俺に相談ないの?」とは思いつつ(笑)
こーへー:負担は一番大きいですからね。抜けるって決まった時から、当たり前のように、検討することもなく。
もう4人でのライブもかなりこなされていますか?
タム:去年の9月とかやったから、半年くらいは。この半年が今までの10年に匹敵するくらい濃い(笑)
やはりタムさんとしてはギターの負担は相当増えましたか?
タム:それは多いけど、逆に言えば自分の株を上げる最大のチャンスや思って俺はやってるんで。二人いたし一人になったらできひん曲あんのちゃうかなって思われたりするのはすごい不本意やし、それやったら「やったろ」と思って。二人でやってたもんが一人でも出来たらそれは自分の実力が上がった証拠やから。自分の音楽力を高める上ではまたとないチャンスだと思ってやってますけどね。