スペシャルインタビュー ギタリスト 岡本 博文 2/4|スタジオラグ

スペシャルインタビュー
岡本博文 | スタジオラグ
岡本さんはご出身はどちらですか?
生まれは広島です。大学に入るまで広島でした。同志社大学に入り京都に来ました。
その時はバンドはされていたのですか?
本格的にギターを始めたのは、同志社大学に入ってからですね。
では割と遅めのスタートだったんですね。
高校のときはフォーク少年でした。フォーク少年というか、どちらかと言うと元祖オルタナティブだったかも知れない。僕はクロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤング、ニール・ヤングとかああいう風なのが好きだったんですけど、高校の時に同級生に変な奴が多くて、オリジナルばっか作ってたんですよ。上達とはほぼ無縁な、自分が天才だと思ってたんで。同級生とオリジナルを作ってやってて。ちょうど渡辺香津美さんとかが流行って、高三の夏にジャズフェスを見に行ったのね。帰って来たらその友人が「お前らホンマにアホや。上達もしないし、へたくそで」。「なら、これからは何や?」と聞くと「これからはジャズや」と。僕も高校のときは興味本位でジャズ喫茶に通ったりはしてたけど、本当にやっぱりすごいと思って、大学に入ったら軽音楽部に入ってがんばろうと。同志社大学でサードハードオーケストラというビッグバンドに入って、皆上手いんでショック受けたんだけど、そういう経緯で。
ビッグバンドでもちろんエレキを?
そうですね。”ジャッジャッジャッジャッ”っていう四つ切りの。
ガットギターに出会われたのはいつになるのでしょうか?
ファーストアルバムの「Jawango」というのを作り始めた頃の前後かな?ある学校に僕は教えにいっていてそこに矢野誠さんというアレンジャーの方がいて。僕はその頃オリジナルを作って生きていこうと思っていたところで、「オリジナルのスタイルを作るにはどうしたらいいでしょう」と矢野さんに質問したら、「岡本君、オリジナルを作ってね、それにご奉仕するようなギターを弾けば、オリジナルのスタイルができるんじゃない?」って言われて、それにすごい啓発されたんです。僕はそこまで、ジョン・スコフィールドとかパット・メセニーとかみたいな、新型のオーセンティックなギタリストが好きだったんだけれど、多分セミアコにディストーションをかけて弾いている間は自分のスタイルはできないなと思った。だから敢えて、高校時代からフォークギター弾いてたりしてアコースティックのことは昔から好きだったんで、これを自分のメインの楽器に据えたら面白くなるんじゃないかなと思って。それで、「Jawango」というアルバムではアコースティックを弾いて。それ以降何となくアコースティックが得意なギタリストだと思われてるんだけど、方法論はエレクトリックギタリストなんですよね。
「Jawango」を作られる時にはもうガットギターは入っていたのですね?
そこまでの間インディーズ的な活動の中で、アコースティックギターを使ったちょっとおかしなジャズトリオみたいなのを何年かやってた。アコースティックギタリストというのはどちらかと言うと後付けでね。1stアルバム作ってしまったもんだから、「ボサノヴァお好きでしょう?」とか言われて「全然、、そんな得意じゃなくて、、」(笑)
そこから、なんですね。
毒を食らわば皿までみたいでね。弾かざるを得なかったというか、ミイラ取りがミイラになった、みたいな。今は、得意な部類になってるんだから不思議な縁です。
レッスンの話に戻りますが、独学の方は癖がついていると思うんですけど、例えばピックの持ち方、手の振り方、押さえ方など、それがその人の上達を妨げているのではと感じた時は、今までどのように対応されてきましたか?
実は僕もほどんど独学なんですよ。今となっては効率のいいピッキングというのは方法論としてはあって、「これはとても上達しないな」と思うような弾き方をする時には直しもするんだけど、実を言うとギタリストって100人いたら100通りの方法論があるんですよ。これほど、同じギターを弾いてても一人として同じ音が出ない楽器って無い。だから個人的に色々試行錯誤を重ねた挙げ句に、絶対的な不正解ってない気がするかな。もちろん僕のピッキングスタイルだって、「こういう風にやったらこういう風に弾けるよ」っていうのは話はするし、効率のいい動き方というのは見て直せるなら直すようにもするけども、もしかしたらそれも個性なんじゃないかと。一つのやり方と言うのは欠点でもあるけれども、個性でもあると思うんですよね。
それが板に付いていれば、そのままいってください、という感じですね。よっぽどでない限りは。
ただ、長年の経験で、いっぺんはオルタネイトピッキングを正確にやってほしいと思ってますね。これは長年の経験で、すごい上手だけど全くオルタネイトで弾けない人がいる、時々。そういう人に、まぁいいかと思って直さずにいた挙げ句、やっぱりテクニック的に行き詰まりになるという経験がほとんど100%なんだよね。だからオルタネイトに関しては、「いっぺんは出来るようになった方がいいよ」って言う。
生徒さんによっては、「コードトーンって何?」「ペンタトニックって何?」という方もいらっしゃると思いますが、理論が初心者の方に対し、どういう入り口から教えられますか?
「ギターの上でドレミの位置がどこにあるか」ということですね。どんな理論の話も、どんな風に噛み砕いて言おうと思っても、「『ド』の音がどこか、『レ』の音がどこか」ということが分ってないと卓上の理論にしかならない。例えば「このフォームを押さえたらEmと呼ぶ」って、「何でEmっていう名前が付いてるんやろう」って考えるところから、すべてのことが始まると思うんです。
レッスンというと理論的なものを想像しますが、岡本さんの場合そうではないのですね。
僕は理論が大事というよりも、なにかしら音楽を自分で発展させていく上で目印みたいなものが多ければ多い程、ギタリストは幸せになると思う。その目印を我流で見つける人もいるし、しかし我流で身に着けた故に他人とコミュニケーションがとれないんですよね。だからそういうネゴシエーションをつけるのに必要なのが理論なんで、ギターの上でTAB譜だけで菱形に弾いてみるだとか、ここの上をチョーキングして2フレット上を弾いてみるだとかいうものじゃなくて、何か他にも流用できる目星とか目印みたいなものをつけていくことが、すごく大事だと思うんですよね。それをちゃんと系統立てて親切に話をした上で、最終的に理論という名前が付いているのであって、「まず理論ありき」じゃないと思う。そういう風にしないと、人の真似はして弾けるけれど、自分で音楽を作っていく段階でやっぱり頭打ちになるね。だから、イオニアンがどうとか言う前に、この音は「ド」なんですよ、この音は「レ」なんですよってことが分ればいいと思う。