スペシャルインタビュー ばんばひろふみ 2/5|スタジオラグ

スペシャルインタビュー
ばんばひろふみ | スタジオラグ

「突き詰めたら『愛』なんだよ。」

選曲に関してですが、「今だからこそ歌いたいラブソング」を厳選されたということですが、具体的にはどういう意味なんでしょうか。
僕は今まで生きてきて、いろんな出会いがあったり、いろんなことがあったけど、結局、突き詰めたら「愛」なんだよ。それはね、甘ったるい言い方かもしれないけど。でも、絶対そうなんだよ。愛がありゃあ、全て解決する。いろんな形の愛があるけど、基本的に愛なんだよ。今、愛がないところにいろんな問題が起こってるんだよ。領土問題でもそうだけど、日本人も中国人もお互いがどこかに愛を感じたらあんな問題にはならないよ。領土問題に限らず、いろんな事件があったりするけど、やっぱり愛なんだよ。だから、ラブソングだよね。いろんな形のラブソングがあの12曲の中に入っていると思う。それは、自分に対する愛もあるわけよ。こうやって生きていこうっていう人生観とか。そういう自己愛も含めて、色んなタイプの愛をあそこに詰め込んだと思うね。
その中でもカバー曲も多いと思いますが、これはやっぱり歌い継いでいきたいという思いからでしょうか?
これはね、歌いたいんだよ、いい歌って(笑)人の歌だけど、自分のにもしたいっていう気持ちが正直あるわけよ。でも歌うとなると、人の歌でも自分の歌にしないと格好悪いからね。だからね、カバーっていうのはすごい難しいよ。難しいけど、歌いこなせて、乗りこなせた時に、自分のものになるね。だから今回、たとえば、「胸が痛い」なんかは、結構ステージで歌ってたから、割とどういう風に歌うかは見える。だけど、「北山杉」とか、「あじさいの街」とかは、今回が初めてで。だから、すごく苦労した。どうやって自分のものにしようかっていう。アルバムを制作していく中で、ようやく自分のものにできたね。
それでは、収録されている各曲についてお伺いしたいと思います。ライナーノーツには載っていないエピソードや感想などお聞かせいただければと思います。「北山杉」は箏の音色が印象的な京都らしい仕上がりですね。今聞いても古く感じませんが、1975年の曲なんですね。
あれはね、「岡本正とうめまつり」というグループがあるんだけど、僕は、岡本正くんと仲が良くて「北山杉」という曲のシングルを出したわけ。で、京都をテーマにしたすごいいい歌やんって思ったわけ。ところが、ジャケットを見たら、あいつら、何を勘違いしたのか、ヘルメットをかぶって、地下足袋を履いて、土建屋みたいな格好しているわけ。何をしとんねんこいつらみたいな(笑)見た目はコミックバンドなんだけど歌は全然コミックと違うわけ。これはあかんと思ってたら、案の定売れへんかったわけ(笑)これは、「京都~大原三千院~♪」の歌に次ぐ歌になると思ったけど、彼らの容姿があまりにも悪かったわけ(笑)今考えたら、当時はそういう時代で、歌詞の素晴らしさと容姿のギャップという部分から何かを生み出そうという試みやったんやと思うけど(笑)でも、ずっと覚えてたわけ。いつか何かの機会があったら歌ってやろうと心の奥底で溜めてたの。で、今回のアルバムのタイトルは「メイド イン 京都」ということをポンと思いついた時に、「北山杉」やろうって。それで、ちょうどアレンジの大村君が琴の真依子さんという人と一緒にバンドをやっていて、須田社長が、琴の音色とか良いんちゃうって言うから、じゃぁ、そういうアレンジでいこうかっていう風になって。それと、久美ちゃんも良いんだよ。彼女は、前からいろいろ紹介してもらって、ライブを聞いたりしてたから、絶対ギターはあの子やろうと思っていたよ。今回は、この曲の他に3曲ぐらい弾いてくれてるんだけど。またこれええギター弾くんだな~おっさんみたいなギターを(笑)あの若さで、オヤジ殺しのギターを(笑)全く違和感がなくて、昔こんなギター弾いとるおっさんおったなみたいな。そういうフレーズを弾いてくるわけよ。すごいなぁと思うわ。
二曲目はサンバ風アレンジが斬新な大ヒット曲「Sachiko」ですが、後半には少年少女合唱団が加わりフェードアウトしていきます。歌詞の内容と子供達の声の組み合わせが面白いなと感じましたが、このアレンジはどういう狙いでしょうか。
まず、ギラ・ジルカっていうのは、僕が見つけたの。彼女とは、不思議な縁があって。ある時、東京から京都に新幹線に乗って帰ってたとき、窓際に美しいハーフの女性が俺の横に座ってたわけ。それでちょっと話をしてたら、実はジャズを歌っててプロになるために東京に行ったんやけど、断られたかなんかで、傷ついて帰るとこやったみたい。で、たまたま俺の横に座っとったわけ。それで、「わかった、じゃあ俺の事務所に1回デモテープ送りなさい」って言うたら後日届いて。聴いてみたら、素晴らしいわけよ。で、最初は自分の事務所に入れて。今は別の事務所に移って。その時からの付き合いよ。で、今度東京で彼女の活動20周年のライブをやるからっていうので、ゲストに来てくれって言われて行ったのよ。その時に、「Sachiko」を、ギターの竹中くんが、サンバ風にアレンジしてくれたわけ。そのアレンジで歌ったら凄く良かったわけ。それで、アルバムも是非そのアレンジでやりたいということで、ギラも全面的に参加してくれと。で、あれができたわけ。あれも面白いのは、すごく明るい歌になったなってみんなが言ってくれた。あの曲を出した当時、Sachikoの主人公は誰ですか?ってよく言われて。俺が若かったときは兄貴かもしれないし、別れた男かもしれない。ある程度歳いってきたら父親、それでもっといったらおじいちゃんかもしれへん(笑)そういうふうに歳とともにとあの曲の中で主人公が変わってきた。今回のアレンジで歌うSachikoっていうのは、年齢的なものとか、社会状況とか、そういうものを全て突き抜けた愛やなって。あのアレンジには、それぐらいの潔さとか明るさがあるよね。そこにあんな小さな五歳の子供の声から、僕の友達のおっさんの声までいっぱい入ってるわけよ。すべてをインクルードしてしまったという感じがあるよね。自分が歌ってきたいろんな主人公のSachikoが、今回の曲の中に全部入ってるね。
次の曲はガラッと雰囲気が変わり、軽快な新曲「A(?)C」です。歌詞も曲もとてもユニークな曲ですね。
これは僕が親父バンドで「ベルベッツ」というバンドを40年やってたんだけど、そこで歌ってた歌で。メンバーの西村っていうのと僕とで一緒に作った歌でね。彼も非常に伊達男というか、おしゃれな男で。いくつになっても男っていうのはガキみたいで、いつもいつも俺が一番やと思っていないと、それを思えんようになったら男として終わるやろうっていう歌なんや。だから、ええかっこしとこうやみたいな。やっぱり、 ええかっこうっていうのは音楽をやるをやる上において美意識なんや。自分がその美意識を保てなかったら人の前で歌えへん。ステージなんか怖くて出れへん。自分が「これええやろ?」って思ってるから人の視線を受けられるけど、「俺、あかんのちゃうか?」って思ったら怖くて出れへん。そういう意味では、これは男に贈る歌やねん。女に贈る歌じゃない。男がこれを聴いて「やっぱりそうやな」って感じてもらって。「ええかっこしなあかんで!」っていうメッセージやねん。
ちなみにばんばさんは、カッコの中には何が入りますか。
俺はやっぱり音楽さ。ステージで音楽をやっていることは自分の意識の塊やから。そこが崩れたらおれは歌ってないし。人前にも出ない。その時は隠居するね。