スペシャルインタビュー ばんばひろふみ 4/5|スタジオラグ

スペシャルインタビュー
ばんばひろふみ | スタジオラグ
「夢ごろも」はさながら、ばんばさんバージョン「枕草子」ですね!
そうやね。これもベルベッツというバンドでやっていた曲で、京都の自分の生活エリアの歌だよ。あの辺の場所をうろうろしていて自然に歌になったということで。この曲はアルバムができて、聴けば聴くほど最初の印象よりもすごく良くなってきてる。あまり客観視できなかったんだけど不思議な感じがあるね。アレンジもなかなかタイトでいいと思うしね。関西VOJAっていうコーラスグループもすごくいいね。あるイベントで、別のアーティストと一緒に歌っていてすごくいいなと思って。で、もし今度おれがアルバム作る時は協力してくれるか?と言ったら、喜んで!と言ってくれて。とは言うたものの、具体的にアルバムを作ることが決まってた訳ではなくて。でもその時にピピピッとは来てて。で、彼女らは実際に待ってくれてたみたい。今回、こうやっていろんなミュージシャンと一緒にやれて恵まれてるよ。全部自分の賭けがプラスに出てるよ。
「あじさいの街」は1975年に解散したザ・ムッシュの歌とのことですが、それ以降もずっとばんばさんの心に「いつか歌いたい」という思いがあったのでしょうか。
これは、僕がプロとして71年に大阪でヤングジャパンていう事務所を作ったの。その時に一緒に作ったのがアリスと、僕らバンバンと、ザ・ムッシュの3つのグループだったんだよ。それで、お互い切磋琢磨してやってきて、世に出て行ったのがアリスと僕らで、彼らは残念ながら解散したけど、この歌が出たときに俺は抜かれたと思ったよ。これはええ歌やなぁと思ったね。残念ながら解散はしてしまったけどこの曲は大好きやったから僕の心の中にもずっとあったんだね。この曲はオーボエがすごい効いてていいよね。それと、後半の小倉君のギターがすごくサイケデリックで、これなかなかやるねと思ったね。ミキシングの時にもっと上げてくれとか言って(笑)あのギターで急に世界観が変わるね。で、あれもブリティッシュなんよ。日本のフォークがいきなりブリティッシュ入ったわみたいな(笑)よくこの曲にあんなギター思いついたなと。普通、「こんなん弾いたら怒られるんちゃうかな?」とか考えてしまいそうやけど(笑)なかなか、あれはいい仕事しよったね。
「速達」は、私の世代にもぐっとくる歌詞です。理想の父親像のように思いますが、まさにこれから結婚しようという世代の方々にはどのように映るのかな、と思いました。
あそこに出てくる世界っていうのは昔の世界なわけで、今はメール一発やん?(笑)速達なんて若い子は知らないかもしれないしね。郵便物が日曜日は来ないってことなんか知ってるか?みたいな(笑)だけど、そういう時代もあったんだよって、こういう日本もあったんだよって。だからあの曲をボーナストラック以外の最後にした。俺の歴史だから。ああいう時代もあったんだよっていう意味で、最後を締めたかった。このアルバムは、自分の人生でもあるわけだし。自分の歩んできた時代で終わってもいいだろうと。で、そのあとにボーナストラックがあるわけ。そういう時代を経て俺らは今のんびりゆっくり生きてるんやでって。今まで一生懸命やってきたけど、今は立ち止まって自分の周り見てみようやって。時計外して海見ようや、って。あの速達の時代っていうのは俺らはがむしゃらに働いてた時代なんだよね。日本を引っ張ってた団塊の世代の歌で終わって、最後に、ちょっと立ち止まろうよ、っていうこと。だから速達をあの場所に置いて、ボーナストラックに「のんびりとゆっくりと」を持ってきたわけ。
アルバムを通して聴いてみて、世代を超えていいと思える、幅広い楽曲と歌が揃ってるなと思いました。このアルバムをきっかけに初めて知った曲も多く、同じように多くの方にも知ってもらいたいと思います。どのようなリスナーにこのアルバムをお届けしたいとお考えですか?
聴いてくれる人は誰でも。皆に聴いて欲しいと思うし、あまり意識はしていないよ。ただこの前の日曜日、ゼスト御池での京都文化祭典のプレイベントで歌ったんやけど、「北山杉」をギター一本で歌ったんや。皆もう感動してたな。お客さんは京都の人やから特にね、「ほー、ええ歌ですね」言うてたから、結構知らないみたい。でも聴くとグッとくるというね。
情景がどんどん浮かんで来るんですよね。
だから一つ一つの歌詞を切り取るととっても古いんやな。ダッフルコートなんて今はあらへんやん?言葉すらもうないかも知れへんしな。でも、上に着てるもんはたとえ変わったとしても、背中丸めて冬の京都歩いてるような、なんかあるやん。それって絵になるよね。青春やったんやな、誰にとってもな。そういう時代ってな。
レコーディングについてお伺いしたいと思います。今回京都で制作されて、東京と比べてという訳ではありませんが、いかがでしたか?
東京というのは、色々あると思うんだけど、僕が経験してきたレコーディングというのは、すごく大きなスタジオでシステマチックでやってきた。だからそういう意味では、今回、本当に手作りのレコーディングをしたなと。当然自分のアルバムだから関わるんだけど、ここまで自分が深く時間とかにおいて関わったのは無かった。ある程度どっかまでは任せて、ディレクターがおって、そういうのに任せて。俺はああやこうや言うて、また任せてとかいう、そういう、最後チェックでOKっていう。レコーディングやったけど、今回は最初からずっとやからね。そういう意味ではすごく面白かった。
スタジオラグはレコーディングスタジオとして、改善点などアドバイスはありますか?
そんなん言うたらきりない(笑)でもな、僕はこれはすごいと思うのは、レコーディングエンジニアの阪本君。彼はなかなかすごいわ。ああいう子がラグにいるというのが、まずびっくりした。ミキサーってやっぱり一緒にやってみないと分らへんやん。東京っていうのは自分の知ってるミキサーがおるから、例えばレコード会社やったらレーベルがあって、やってくれるミキサーも決まってるから、僕の癖も知っとるし、俺もその人の癖を知ってるから、安心出来るけど、今回初めて一緒にやったっていう意味も含めてね。阪本君がずっと立ち会ってくれたんだけど、びっくりしたね、あの子の能力の高さ。誰が来てもいけるんちゃう?最後はもうmAruさん(レコーディングエンジニア)もいるし、完璧ちゃう?
ありがとうございます!阪本に対してもダメ出しを頂こうかと思いましたが。。
大変やぞ、あれは!ずっといなあかんし、そら大変な仕事やなと思うけど、よう耐えとるわ(笑)
今回の制作中に、ハプニングや面白いエピソードはありましたか?
歌入れしてる時にね、途中からうちの嫁がね、差し入れ持って来てくれたりスタジオへ顔出してくれたりして。嫁やから遠慮なくて、「あそこあかん」とか「もうちょっとここ、こんな風がええんちゃう?」「ここもうちょっとニュアンス出てへんで」とか言う訳よ。俺もそれ頼りにしてるから、「あ、そうかな?ほんならもう1回歌い直そうかな?」って歌い直したら、「OK!」ってやってたんよ。ある時、歌入れしようと思ったら、阪本君が「今日は奥さんは?」って言うから、「今日は仕事で来えへんで」。そしたら「ええ!?」って言いよるし、「なんでやねん?」言うたら、「いや、何でもないです」とか言うて、結局なんや言うたら、「私らではよう言わんけど、奥さんやったら言うてくれはるし」って(笑)。「お前ら、言うてくれよ!俺は裸の王様やんか(笑)!」来てくれてホッとしたらしいけどな。「お前らええかげんにせえ、アホ(笑)!」とか言うてな(笑)
それはでも、とても言えないですよ。。
言えへん気持ちも分るけどさ(笑)そやけど、それは寂しいもんがある(笑)